HOME10.電力・エネルギー |仏トタルエナジーも、ロシアのウクライナ侵攻に抗議し、ロシアでの新規開発事業停止を表明。ただ、既存の北極圏でのLNG開発事業の見直しには言及せず。「脱ロシア・ウォッシュ」か(RIEF) |

仏トタルエナジーも、ロシアのウクライナ侵攻に抗議し、ロシアでの新規開発事業停止を表明。ただ、既存の北極圏でのLNG開発事業の見直しには言及せず。「脱ロシア・ウォッシュ」か(RIEF)

2022-03-02 20:53:58

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 仏トタルエナジーは1日、ロシアのウクライナ侵攻に抗議する形で、ロシアでの新規開発事業を実施しないと発表した。ただ、英BPやシェル、米エクソン。モービル等が、現在、取り組んでいるロシアでの共同事業等の停止を宣言したことと比べると、トタルは自らが力を入れているロシアでの巨大プロジェクトのヤマル開発等への関与に一切触れないなど、「脱ロシア・ウォッシュ」の可能性も指摘されている。

 

 同社の発表では、「ロシアのウクライナへの軍事侵攻は、同国の人々と欧州を悲劇的な結果に導く。その侵攻の結果を被るウクライナの人々とともに、同様に影響を被るだろうロシアの人々に対して連帯を表明する」と指摘、ロシアを非難した。その上で、ウクライナ当局に対して燃料を供給するとともに、ウクライナからの難民に対する支援を表明した。

 

トタルのCEO、パトリック・プイヤネ氏
トタルのCEO、パトリック・プイヤネ氏

 

 さらに「欧州各国がロシアに対して実施する経済制裁を支援するとともに、ロシアでの同社の活動への影響を問わず、制裁を実施する」とした。そのうえで、トタルとしてロシアでの新規のプロジェクトは供給しないと言明した。

 

 だが、トタルの今回の発表では、同社が現在、ロシアで展開している天然ガス事業については、どうするかは何も触れていない。同社は、ロシアのガス大手ノバテクに19.4%出資しており、2019年5月には北極圏のギダン半島でノバテクが主導する巨大天然ガス開発事業「Arctic LNG 2」に10%の出資をしている。

 

 それに先立つ2013年後半には、ギダン半島に近接する同じ北極圏のヤマル半島で、ノバテクが、中国石油天然気集団公司(CNPC)やシルクロードファンド等と共同開発する北極圏のヤマル半島のLNGプロジェクトにも参画している。トタルとノボテクは、両半島のガス田でのトタルの将来の権益の拡大でも合意しているとされる。

 

 2020年時点でトタルグループ全体の石油・天然ガス生産の17%はこれらのロシア事業からのもので、同グループの売上高に占めるロシア事業の割合は3~5%となっている。トタルが「ウクライナの人々への連帯」を実践するならば、こうしたロシアの「国家事業」に関与し続けるのかの姿勢を明瞭にするべきだろう。

 

 あるいは、ロシアのウクライナ侵攻は短期で終了すると見込んで、戦略的なロシアへの投資は温存する方針なのかもしれない。マクロン仏大統領はロシアの侵攻前に、プーチン・ロシア大統領と首脳会談を持っており、「ウクライナ侵攻後」についてもやり取りをした可能性もある。

https://totalenergies.com/media/news/press-releases/totalenergies-statement-concerning-war-ukraine

https://totalenergies.com/media/news/press-releases/russia-total-signs-definitive-agreements-entry-arctic-lng-2

https://totalenergies.com/energy-expertise/projects/oil-gas/lng/yamal-lng-cold-environment-gas