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総合商社のロシア・エネルギー関連事業の損失、6社で総額2700億円。三井物産がサハリンⅡ事業中心に最多の806億円の純資産減額計上。損失は23年度にさらに拡大の可能性も(各紙)

2022-05-11 01:46:34

mitsuibussanキャプチャ

 

 各紙の報道によると、総合商社の2022年3月期連結決算でロシア関連事業の損失処理で、商社7社のうち6社で総額2700億円を損失を計上したことがわかった。このうち天然ガス開発のサハリンⅡ事業等で三井物産が純資産の減額で最多の806億円を計上したほか、三菱商事も同事業で減額500億円を計上した。ただ、純利益については各社ともロシアのウクライナ侵攻の影響による資源高の影響で最高益を計上した。

 

 (写真は、三井物産の決算説明会の模様=㊧から2人目が堀健一社長)

 

 日本経済新聞、朝日新聞等が報じた。商社の多くは国際会計基準に基づいて、連結子会社や持ち分法適用会社以外の投資先については、簿価の変動を損益計算書か、その他の包括利益(OCI)かのどちらに計上するかを選べる。商社は資源権益の扱いでは、OCIでの計上をとる場合が多く、投資価値の目減りで資本が減額となっても、損益には影響しない形となる。

 

 このため、ロシア関連の資源権益の扱いも損益の計上には影響しない処理となっている。このうち、石油メジャーのシェルが撤退を表明し、先行きが不透明状態の天然ガス開発のサハリンⅡ事業には三井物産が12.5%、三菱商事が10%をそれぞれ出資している。三井はロシア北極圏のLNG開発事業「アークティックLNG2」も手掛け、債務保証の引き当て等で209億円の損失を計上した。

 

 米メジャーのエクソン・モービルが撤退を決めた石油開発のサハリンⅠについては、日本の官民合同会社の「サハリン石油ガス開発」が30%を出資している。政府が50%、残りを伊藤忠商事と丸紅等が共同出資の形だ。ロシアとの資源取引については先進国首脳会議(G7)で石油の禁輸を含むエネルギー分野での制裁強化を打ち出した。

 

 ただ、岸田首相は日本のロシア石油禁輸の時期には明言せず、「時間をかけてフェーズアウト(段階的廃止)のステップをとっていく」との姿勢を強調している。このため、サハリンⅠに出資する商社は「できれば撤退したいという気持ちはあるが、政府は撤退しない方針を出し続けているので、それに従っていかざるを得ない」(丸紅の柿木真澄社長)、「今後も日本政府の対応に沿っていく。禁輸対象原油なら禁輸するし、禁輸対象外なら輸入も可能だと思っている」(伊藤忠商事の石井敬太社長)として、政府の権益意識次第との姿勢だ。

 

 三菱商事の中西勝也社長もサハリンⅡ事業で「日本経済や社会への影響を勘案して適切に対応する。パートナーや政府関係者と連携していく」とし、現時点では政府の判断を優先して撤退しない考えを示した。三菱商事はサハリンⅡでの減額500億円のほか、自動車の販売金融などで損失130億円を出した。丸紅は米航空機リース事業での接収可能性などを踏まえ、130億円強の損失を計上した。住友商事も航空機リース事業を中心に580億円の減損などを計上した。

 

 ロシア関連のエネルギー事業の損失表面化はむしろこれからとの見方もある。ロシアのウクライナ侵攻が終了するめどが見えないことから、2023年3月期には、より深刻な影響が出る可能性があるためだ。23年3月期の連結業績は7社中6社が減益を予想している。ウクライナ侵攻が長期化すると、三井物産の場合、「アークティックLNG2」事業が中断するリスクが高まる。

 

 同事業は、北極海に面するロシア北部のギダン半島の在来型陸上ガス田を開発し、年間1980万㌧の生産能力を持つ天然ガス液化設備を建設する事業で、生産開始は23年頃からの予定。三井物産の堀健一社長は「計画そのものは継続しているとの前提を維持している」とする一方で「状況が変わる可能性は十分あり、生産開発計画が大幅に修正される場合は(追加損失を)手当てすることになる」可能性にも触れている。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC104280Q2A510C2000000/?type=my#AAAUAgAAMA

https://digital.asahi.com/articles/ASQ595TPHQ59ULFA00N.html?iref=pc_rellink_02