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丸紅、「バイオ炭」によるカーボンクレジット販売事業に進出。農地改良効果も。日本クルベジ協会が創出したJクレジット認証分の独占販売権取得(各紙)

2022-08-09 08:45:35

kurubegi001キャプチャ

 

 各紙の報道によると、丸紅は、農地にCO2を固定するカーボンクレジットの販売事業に進出する。「バイオ炭」と呼ぶCO2の吸収源を農地にまくことで、農地のCO2吸収力を高める一方で、農地の土壌改良効果も高めることができ、農家の収益向上の支援と農地保全にもつながるとしている。「バイオ炭」の開発は海外で進んでおり、日本でも2050年までに1.5兆円の経済効果の創出が見込まれている。

 

 (写真は、バイオ炭を農地にまく実証作業=日本クルベジ協会サイトから)

 

 日本経済新聞が報じた。バイオ炭は、木やもみ殻などのバイオマス(生物由来資源)から作る炭をいう。バイオ炭は分解されにくく、植物が吸収したCO2を炭の中に閉じ込めることで、大気中のCO2を吸収する。同時に、農地などの土壌改良材としても機能する。

 

 丸紅は、同事業を日本で推進する日本クルベジ協会(大阪・茨木市)とバイオ炭で創出したカーボンクレジットの独占販売代理権を取得した。同協会は6月末に農地での炭素貯留で初めて、国の認証制度「Jクレジット」で認証され約250㌧を創出した。同協会はこれまで、創出したクレジットを協会独自に販売してきたが、今後は、丸紅が総代理店として企業等に販売していく。

 

梨の伐採枝からバイオ炭を作成する様子(日本クルベジ協会サイトより)
梨の伐採枝からバイオ炭を作成する様子(日本クルベジ協会サイトより)

 

 クレジット1㌧当たり5万円以上で販売し、協力農家の経営収益の向上にも資することを目指す。クルベジ協会が創出する22年度の削減量は1000㌧を超える見通しで、2030年までに年間10万㌧のクレジット販売を目指す。同クレジットの販売単価は、現在主流の森林クレジット等に比べ3~5倍ほど割高になるが、農業支援という付加価値もあることから、企業などの需要が見込めるとみている。

 

 丸紅は今後、クレジットの販売だけでなく、バイオ炭を活用した農地で育った作物の販売や海外企業への仲介なども手掛ける方針と伝えている。

 

 バイオ炭はこれまで、バイオマスを加熱して作る固形物で土壌改良資材としても使われてきた。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の19年改良版で、土壌への炭素貯留効果が認められた。森林クレジットの場合、森林火災等で燃えるとCO2を放出してしまうことになるが、バイオ炭の場合は、農地中に長期的に貯留できる利点がある。

 

 農林水産省は、わが国でのバイオマス資源を活用した農地炭素貯留のCO2固定の潜在性は年間1400万㌧トンと推計している。これは、農業分野での温室効果ガス総排出量の約4割に相当するという。農地改良効果による農業生産性の向上やクレジット創出による経済効果は2050年までに年間1.5兆円に拡大する可能性があるとしている。

 

 バイオ炭を利用した農地でのCO2の貯留事業は、海外では「カーボンファーミング」として活用が広がっている。排出量取引市場を運営するフィンランドのピューロ・アースによると、バイオ炭による削減量1㌧当たりの取引額は約140ユーロ(約1万9000円)。直近ではカナダのショッピファイが1㌧当たり約560㌦(約7万5000円)で購入しているとしている。

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220809&ng=DGKKZO63289600Y2A800C2TB0000