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中部電力、関西電力等4大手電力会社が「不当な取引制限」でカルテル。公正取引委員会から総額1000億円超の課徴金。このうち関電は事前に自ら違反行為を認めたため課徴金免除扱い(RIEF)

2022-12-01 23:54:29

denryokuキャプチャ

 

  中部電力、中国電力、九州電力の各社は1日、公正取引委員会から営業区域等での事業者向け特別高圧電力および高圧電力の供給で、独占禁止法違反(不当な取引制限)があるとして課徴金納付命令に関する通知書を受け取ったと発表した。公取委は、3電力および関西電力の4社が事業者向け電力販売でカルテルを結んでいたとして、総額1000億円強の課徴金を命じる方針。関電は違反行為を最初に自主申告したため、「課徴金減免制度(リニエンシー)」で課徴金を免除される。各社は2016年に実施された小売電力自由化での競争激化を避けるため、相互に顧客獲得競争を行わない申し合わせをしていたという。

 

 電力各社への課徴金額はこれまでの公取の調査では、過去最高額になる見通し。ただ、各社の年間電力販売額は合わせて3兆500億円に上り、課徴金額は売り上げの3%程度でしかない。電力各社にとっては自らの市場を守る「経費」という位置づけなのかもしれない。

 

 「電力カルテル」の内容は、大規模な工場やオフィスビル向けの「特別高圧」契約とか、中小規模の工場や事業所向けの「高圧」契約について、互いの営業エリアで顧客を獲得しないよう申し合わせていたとされる。公取委は昨年4月から7月にかけて立ち入り検査に入っていた。


 報道によると、各社の「取引制限」の申し合わせは会社間で協議のうえ、2018年ごろから行われていたとみられる。このため公取委は立ち入り検査を踏まえ1年以上かけて調べていた。その結果、このほど各社の行動は、競争を不当に制限する独占禁止法違反にあたると判断した。減免制度の適用を受ける関電を除いて、中国電力、九州電力、中部電力とその販売子会社の4社に課徴金の納付を命じる方針としている。
4社の西日本全域での市場を対象にカルテルを結んでいた疑い
4社の西日本全域での市場を対象にカルテルを結んでいた疑い

 電力小売り市場は、2016年に全面自由化された。それまで地域独占だった各地の大手電力会社は、自らの営業地域に異業種からの新規参入のほか、他の大手電力の進出も受け、競争が激化する状況となった。経産省の自由化政策は、電力市場での各社の競争を認めることで、電力価格の引き下げのほか、電力サービスの多様化等を進める政策方針で実施に移されたもので、市場機能を生かす政策として評価されていた。

 同省の「電力・ガス取引監視等委員会」のデータによると、小売市場の自由化によって、国内での販売電力量のうち、新規の事業者(新電力が占める割合は、全面自由化時点(2016年4月)の5.2%が、今年8月時点で20.6%にまで広がっている。その内訳では、大規模事業所向けの「特別高圧」が当初の5.3%が、今年8月時点で7.9%、中小規模事業所向け「高圧」は10.5%が22.4%となっている。
 特別高圧での新電力の比率があまり伸びていないのは、電力カルテルによって、新電力各社の進出が実質的に阻まれてきた可能性がある。中小企業市場の高圧契約では、顧客企業の価格感度が高く、より安い価格を求める行動をとるので、市場では価格競争が常態化しており、カルテルを結んでいないと、さらに既存電力のシェアは低下していた可能性がある。

 摘発された電力会社のうち中部電力は課徴金額について、子会社の中部電力ミライズと合わせ275億5500万円分を、2023年3月期第3四半期連結会計で、独占禁止法関連損失引当金繰入額として計上すると発表した。ただ同社は「今回の特別損失の計上はあくまで会計上の処理で、実際に課徴金を納付するかどうかを含め、今後の対応は通知書の内容を精査し、公取委の説明を受けたうえで慎重に検討していく」と説明しているという。

 

 関西電力は同じようにカルテル行為に加わっていたが、リニエンシー制度を率先利用して「自白(カルテルを認めた)」したことから、公取委から排除措置命令書案や課徴金納付命令書案等の通知は受けていないとし、各社のようにプレスリリースは出していない。しかしカルテルに加わっていたことは自ら認めている。関電は過去にも送電線設備工事をめぐり、受注業者と社員を含めた会社ぐるみでの談合の摘発を受けている。https://rief-jp.org/ct10/40674
 この点で同社はメディアに対して「立ち入り検査を受けたことを厳粛に受け止め、当局の調査に対し、全面的に協力している。それ以上の回答は差し控える」とコメントしている。だが、株主や電力利用の消費者に対する説明義務までは「免除」されていないはずで、カルテルに加わった経営判断とともに、リニエンシー制度を利用した理由等について明確にする責務はあるはずだ。