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東北電力、熱効率世界最高水準のガスコンバインドサイクル発電の営業開始。新潟県・上越市の上越第一火力発電。ライフサイクルCO2排出量は再エネの太陽光発電の約12倍(RIEF)

2022-12-01 21:32:13

tohoku003キャプチャ

 

 東北電力は1日、従来の石炭火力発電より効率がいいとされるガスコンバインドサイクル発電システムの火力発電所(新潟県上越市の上越火力発電所1号機)の営業運転を始めたと発表した。熱効率は天然ガス火力より高く、世界最高水準という。燃料消費量とCO2排出削減につなげる。ただ、CO2排出削減の効率化は、あくまでも化石燃料を燃料とする発電所同士の比較で、再生エネルギーの太陽光発電に比べると、ライフサイクルCO2排出量は約12倍、陸上風力の約18倍も排出することになる。

 

 東北電力は、自社が抱える既存の火力発電所の経年化が進んでいる状況や、再エネ発電等との競争環境の進展を踏まえ、計画的に経年火力の代替を進めている。ただ、火力発電の代替としては、再エネの選択肢よりも、コスト競争力のある最新鋭の火力電源を開発するとして、2019年5月より上越火力発電の建設工事を進めてきた。

 

 稼働を始めた上越1号機は、燃料にLNG気化ガスを活用し、発電方式は最新鋭のガスコンバインドサイクル発電システムを採用、発電出力57.2万kW、熱効 率63%以上としている。さらに最先端技術を反映した「強制空冷燃焼器システム採用次世代ガスタービン」を導入したことも特徴としている。

 

 同ガスタービンは、タービン内部で高温の燃焼ガスにさらされる燃焼器に、新たに開発した「強制空冷燃焼器システム」を採用するとともに、タービン翼の冷却を最適化するなどで、蒸気冷却燃焼器による従来型ガスタービンに比べ2%の熱効率向上を実現できるという。また起動時間の短縮が可能になることで、運用性が向上し、ガスコンバインドサイクル発電設備として世界最高水準の63%以上の熱効率を達成した。

 

化石燃料火力発電の熱効率比較(環境省資料より)
化石燃料火力発電の熱効率比較(環境省資料より。HATCHレポート)

 

 確かに熱効率の向上によって、CO2の排出量(排出係数)は、同じ発電量の石炭火力の0.733~0.867kgに比べ、ガスコンバインサイクル発電は半分以下の0.320~0.360kgに削減される。経産省が内外で推進してきた超々臨界圧石炭火力発電(USC)に比べても半分以下になる。ただ、これらの削減効率化はあくまでも、化石燃料内での比較だ。

 

 電気事業連合会が公表する1kW時当たりのライフサイクルCO2排出量の比較では、ガスコンバインドサイクル発電のCO2排出量は474gで、既存の石炭火力発電(943g)の半分だが、太陽光発電(住宅用、38g)、陸上風力発電(26g)、原子力(19g)、地熱(13g)、中小水力(11g)等に比べるとケタ違いに多いことがわかる。

 

電源別のライフサイクルCO2排出量の比較(電気事業連合会データより)
電源別のライフサイクルCO2排出量の比較(電気事業連合会データより : HATCHレポート)

 

 既存の化石燃料発電システムを温存して、発電部分での熱効率や排出削減を「ミリ単位」の技術努力を積み重ね続ける日本の電力会社の典型例といえる。排出削減効果がケタ違いに大きい再エネへ転換すると、既存の発電所の設備だけでなく、保守・管理技術、人員のノウハウ・対応等も抜本的に改革が必要になる。このため既存技術の範囲内での漸進主義の改革にこだわる事例といえる。

 

 同社が同発電所で自慢するもう一つの点は、発電所のシンボルとして立ち上げた高さ約136mの煙突だ。煙突上部の色(桜色・紺色)は、夜桜で有名な上越市の桜と上杉謙信公の天賜の御旗をイメージしたという。しかしその煙突から排出されるのは、CO2ほかの温室効果ガス+大気汚染物質である点は、これまでの産業公害の時代と変わりはない。謙信公も天を仰ぎ、顔をしかめるのではないか。

 

https://www.tohoku-epco.co.jp/news/normal/1230291_2558.html

https://www.tohoku-epco.co.jp/news/normal/__icsFiles/afieldfile/2022/11/30/b_1230291.pdf

https://www.tohoku-epco.co.jp/pastnews/normal/1199928_1049.html