岸田政権の「原発新増設」論議キャンペーンの中で、福島原発事故でテレビCM等から遠ざかっていた東京電力のマスコット「でんこちゃん」が復帰。消費者に省エネ・節電を呼び掛ける(RIEF)
2022-12-05 20:35:22

岸田政権下で原発の新増設等の議論が高まる中、「でんこちゃん」が3日から東京電力に帰ってきた。でんこちゃんは、2011年の東日本大震災以降、テレビCM等から遠ざかっていた東電のマスコットキャラクターだ。東電福島第一原発事故の翌年3月末、東電が事故の賠償や廃炉の費用等の増大に直面する中で、リストラ策の一環の経費節減対策の一つとして、でんこちゃんもCMから消えた。それが今、「原発新増設」の声の高まりを受けたような形で、再登場したのだ。
でんこちゃんは、人気漫画家の内田春菊さんが描いた女性キャラクター。若い主婦という設定だ。1988年、東電のパンフレットに初登場して以来、テレビCMにも登場、省エネや安全マナーをアピールする役割を示してきた。その人気は高く、グッズ専門店「でんこちゃんショップ」ができるほどだった。
今回の再登場は、原発新増設をアピールするためではない。エネルギー市場での逼迫と高騰が続き、今冬場の電力需給見通しが厳しくなっていることから、消費者に節電等を呼びかけるため、人気者のでんこちゃんに、効果的な省エネ・節電方法などを紹介する役割を委ねた形で再登場しているのだ。
11年前の原発事故に伴って、当時の東電は、巨額の賠償や廃炉の費用等の増大で経営危機に陥った。全社員の年収2割カットや大幅な人員削減の実施を余儀なくされ、「東電社員」のでんこちゃんも、2012年3月末に、原作者の内田さんとの契約満了時に契約更新されず、東電のキャラクターの座を降りざるを得なかった。
ただ、実際は、その後、2014年に一度、省エネ啓発ページに、ちょっと遠慮気味に登場していたこともあるという。今回の再登場の直前にも、東電のHPには8月末ころから、少しずつ顔出しをしていたというが、今回、政府の原発新増設キャンペーンに合わせる形(?)で、正式に再登場したわけだ。
メディア等によると、東電は、今回のでんこちゃんの再起用について、政府の原発キャンペーンと歩調を合わせたわけではないと否定している。「でんこちゃんが不在の間、その好感度の高さを改めて認識し、消費者に節電をお願いするうえでのコミュニケーションツールとして彼女に頼るしかないと判断した」等との説明だ。
再登場したでんこちゃんは、エアコンや冷蔵庫の省エネ・節電方法等を伝えるユーチューブを4本を作成して公開するなど、全面的なキャラクター復帰を宣言している。しかし、くれぐれも、「安全な原発の利用法」なんかのユーチューブには登場しないでもらいたい。