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日本製鉄。米エクソン、三菱商事と連携し、国内の高炉で発生したCO2を海外のCCSサイトに輸送・貯留する事業に取り組みへ。国内にCCS適格サイトの「不在」を認める形に(RIEF)

2023-01-25 12:19:32

nittetsuキャプチャ

 

 日本製鉄は26日、国内の製鉄所から発生するCO2を回収したうえで液化し、海外に輸送して地下貯留するCCS事業に乗り出すと発表した。回収したCO2は米エクソンモービルが参画するオーストラリアやマレーシア等でのCCS施設に貯留する。三菱商事は液化CO2を専用運搬船で運搬する役割を担う。鉄鋼業からのCO2排出量は国内全体の1割強を占め、脱炭素化の課題になっている。CCSの活用は脱炭素策の一つだが、日鉄が国内での貯留ではなく、コストのかかる海外貯留を選択することは、国内にCCS適地がないことを示す形でもある。

 

 同事業は日鉄と、エクソンのシンガポール子会社、三菱商事が連携し、25日に覚書(MOU)を結んだ。事業の開始時期等は伝えられていない。

 

 鉄鋼業の最大手の日鉄等が採用している高炉方式は、酸素と結びついた酸化鉄として自然界に存在する鉄鉱石と、石炭からの生成したコークスを高温下で化学反応させ、鉄鉱石の酸素を取り除いて鉄を取り出す仕組みだ。石炭を鉄鋼石の還元に使うことから、その過程でCO2が大量に排出される。

 

 高炉のCO2削減策としては、石炭の投入量を減らすため、バイオマス燃料等を混焼させる方法や、高炉に比べて排出量が4分の1程度の電炉への転換、さらには、鉄鉱石の還元にコークスに代えて水素を使う方式等の開発が進められている。日鉄も、水素による直接還元製鉄の実証試験を25年度から始めるほか、昨年10月には瀬戸内製鉄所広畑地区(兵庫県姫路市)に電炉を新設した。

 

 今回の海外CCS活用は、電炉化とは別に、既存の高炉の脱炭素化対策として取り組むものだ。CCSについては経済産業省が北海道・苫小牧で実証実験を実施した経緯があるほか、INPEXが新潟での事業化を目指している。しかし、国内の地盤は火山帯の存在等で、安定的に貯留できるところが少なく、大量にCO2を排出する鉄鋼業の利用に適したサイトの確保が課題とされている。https://rief-jp.org/ct8/24869    https://rief-jp.org/ct10/130109

 

 日鉄がエクソン等と連携して、コストが高くなる海外のCCSサイトへの貯留方式を採用することは、国内に採算のとれるCCS適地が見つからなかったことを意味しているともいえる。エクソンがアジア等で保有するCCSの持ち分容量は年900万㌧程度とされ、現状では世界全体の保有量の約5分の1を占める。日本に近いアジア太平洋地域でも、オーストラリア南東部で新たな設備を25年にも稼働させる予定で、最大年200万㌧の貯留量を見込んでいるという。マレーシアやインドネシアでも現地エネルギー大手と組んでCCS事業の検討を進めているとされる。

 

 海外CCSを活用する費用は、既存の製鉄コストに加算され、最終的には鉄鋼価格に上乗せされることになる。公益財団法人地球環境産業技術研究機構の試算では、国内で発生したCO2を、船舶で1100kmの距離を輸送すると想定した場合、CO2で1㌧当たり2万円前後のコストがかかるとしているという。日鉄はCCSの今後のコスト削減の見通しも含めて、事業の妥当性を検討していくと報じられている。

 

 日鉄は現行のCO2排出量を、2030年には、2013年比で3割減、50年に実質ゼロにする目標を掲げる。排出量削減に向け、電炉の採用や、水素還元法の実用化、さらに今回の海外CCS採用等の対策を組み合わせていく方針だ。環境省によると、国内のCO2排出量は2020年度で10億4400万㌧。このうち鉄鋼業は産業分野で最多の1億3100万㌧を排出している。

https://www.nipponsteel.com/news/20230126_100.html

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