一般社団法人環境金融研究機構 | Research Institute for Environmental Finance: RIEF

　日本風力発電協会（JWPA）は29日、2050年までに国内の風力発電について、陸上、洋上を含めた全体で140GWの導入が必要との試算を公表した。政府がエネルギー基本計画で想定する2030年目標の約6倍の規模となる。このうち浮体式洋上風力発電導入の規模を60GWと、もっとも多く見込んでいる。風力発電の導入加速によって、2050年時点での想定電力需要の約3分の1を風力発電で占めることが可能としている。

　JWPAは、内外でカーボンニュートラルへの中長期戦略が打ち出され、政府も「グリーン・トランスフォーメーション（GX）」基本方針で、化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心に展開する方針を打ち出していることを踏まえ、2050年までを視野に入れた国内風力発電事業のビジョンとして「JWPA Wind Vision 2023」をまとめた。

　新ビジョンでの試算によると、2050年時点で、風力発電全体で140GW、内訳として、陸上風力発電40GW、着床式洋上風力発電40GW、浮体式洋上風力発電60GWの導入が必要とした。これらの導入により、風力発電による発電電力量は約4,500億 kWh となり、2050年の想定電力需要（約 1.35 兆 kWh）の1/3に相当する主電源の一つになる。電力需要の1/3を風力発電でまかなうことは、国際エネルギー機関（IEA）の2050年目標（32%）にも合致する。

　こうした風力発電事業の拡大による経済波及効果は50年時点で年6兆円、雇用創出効果は35.5 万人、化石燃料調達費削減効果は年2.5兆円になるとしている。風力発電事業の拡大は、脱炭素化、産業・エネルギーレジリエンスの強化に加え、新たな国内産業と雇用の創出によるグリー ン成長・GX実現につながる、社会的意義の大きい電源として位置づけられるとしている。

　現状の日本の風力発電の発電量（2021年）は4.8GWで、国内の発電電力量に占める比率は1%でしかない。政府のエネルギー基本計画でも、2030年に陸上風力5.7GW、洋上風力17.9GWで、合計23.6GWを目標としている。JWPAの50年試算は、この政府目標を30年以降の20年間で6倍に拡大する野心的な内容といえる。

　各国の風力発電への取り組みでは、ドイツが2030年時点で陸上、洋上合わせて145GW、2040～45年には230GW、英国は洋上だけで30年に日本のGX目標を倍以上も上回る50GW、フランスも2028年目標で38.2～40.9GW、米国は洋上だけで30年に30GW、浮体式だけで35年に15GW、2050年の洋上全体で110GWと設定している。これら各国と比べると、JWPAの目標は決して高くはなく、日本政府のエネルギー計画の再エネ目標が、国際的にも低いことがわかる。

　JWPAは50年の導入量を140GWとしているが、わが国全体での導入ポテンシャルは陸上風力が159GW,着床式洋上風力128GW、浮体式洋上風力424GWで、合計711GWと推計しており、140GWは大きな無理をしなくても達成可能な水準としている。

　また政府がGXで、化石燃料エネルギーの火力発電所を水素やアンモニア等の燃料による混焼によって延命させる場合でも、浮体式洋上風力のグリーン電力を使ってグリーン水素を活用する場合、水素製造効率64%、水素発電効率57%の想定で、浮体式洋上風力の追加必要導入量は約90GWになると推計した。この導入量を、一般的な浮体式導入量の60GW と合計した150GWは、浮体式洋上風力の導入ポテンシャル（424GW）の約35%であり、 導入可能としている。

　太陽光発電について、エネルギー基本計画では、現状（62GW）を30年に103.5～117.6GWに拡大する目標を立てている。太陽光発電協会（JPEA）のビジョンによると、50年には、その2倍～3倍に相当する300GWの導入が可能としている。その発電電力量は4215億kWhで、風力発電とほぼ同規模の想定電力消費量をまかなえることになる。

https://jwpa.jp/information/7513/

https://jwpa.jp/cms/wp-content/uploads/JWPA-Wind-Vision-2023_20230529_Full.pdf

https://www.jpea.gr.jp/wp-content/themes/jpea/pdf/pvoutlook2050_2020.pdf