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森トラストグループ 福島・白河、被災したゴルフ場を持続可能な太陽光発電所に (TechOn)

2014-01-29 22:19:08

「森トラスト・エネルギーパーク泉崎」の第1期分の2MW
「森トラスト・エネルギーパーク泉崎」の第1期分の2MW
「森トラスト・エネルギーパーク泉崎」の第1期分の2MW


福島県の西白河郡泉崎村の山間部にあるメガソーラー(大規模太陽光発電所)が、「森トラスト・エネルギーパーク泉崎」である。東北自動車道の矢吹ICから約6.1km、JR東北本線の泉崎駅から約6.7km離れた場所にある。元は、森トラストグループがゴルフ場「ラフォーレ白河ゴルフコース」を運営していた場所で、2011年3月に起きた東日本大震災で被災したことから、ここにメガソーラーを建設し、東北電力に売電することにした。

 

森トラストは、今回の旧・ラフォーレ白河ゴルフコースだけでなく、宮城県仙台市のオフィスビル「仙台トラストタワー」、宮城県刈田郡蔵王町のリゾートホテル「ラフォーレ蔵王リゾート&スパ」など、東日本大震災の被災地に多くの土地を持ち、建物の賃貸やホテルの経営といった、さまざまな事業を運営している。地域に密着している事業が多く、それぞれの被災地における事業を継続するとともに、それぞれの被災地の復興に寄与していく方針を掲げている。

 

旧・ラフォーレ白河ゴルフコースについては、東日本大震災の後、休業を余儀なくされた。地震によって、ゴルフコース内に土砂崩れや地割れが発生し、復旧が困難だったからである。このように被災した土地で継続できる事業を模索する中で、ゴルフ場を閉鎖し、メガソーラーによる売電事業に取り組むことにした。

 

まず高圧送電線で対応できる2MW分から


 

森トラスト・エネルギーパーク泉崎の建設計画では、合計出力10MWのメガソーラーを、2期に分けて建設する。第1期は出力2MW、第2期が同8MWである。投資額は合計で約40億円を予定している。

 

第1期の出力2MWの太陽光発電システムは、2013年8月に発電を開始した。ゴルフコースの2ホール分である約6.4ヘクタール(約6万4000m2)の土地に、約1万枚の太陽光パネルを設置した()。年間予想発電量は、一般家庭約700世帯分の年間使用電力量に相当する約230万kWhである。

 

第2期の出力8MWについては、ゴルフコース内の残りの土地のうち、太陽光発電システムの設置が可能なほぼすべての場所に設置することになるという。発電開始時期は未定とする。第2期分の発電開始後の年間予想発電量は、一般家庭約2800世帯分の年間使用電力量に相当する約920万kWhである。

 

第1期分が出力2MWとなったのは、ゴルフ場時代に使っていた高圧送電線を、ほぼそのまま活用できる最大の出力だったからである。第2期の出力8MWについては、東北電力による特別高圧送電線の整備を待つ必要がある。山間部にあるゴルフ場の近くには、特別高圧送電線は整備されておらず、長い距離で引き込むことになる。





設置コストの抑制と積雪への対策


 

第1期の出力2MW分の太陽光発電システムは、設置の効率と発電の効率が最大となる旧・6~7番ホールに設置した。旧・6~7番ホールは、東西に広く広がっているため、太陽光発電に理想的な南向きに、多くの太陽光パネルを並べることができる。また、設置に要する余分なコストが少なく、さらに、高圧送電線に近い場所にある。

 

設置コストを少なくする工夫として、ゴルフ場に植えていた木をできるだけ残して伐採コストを抑えた。また、土地を平らにする造成工事を不要にするために、コンクリート製の基礎を使わずに済む工法を採用したことも、設置コストの低減につながった。

木をなるべく残しながら、発電量を最大にするために、木の影が太陽光パネルの上にできるだけかからないように設置を工夫した。架台は、コンクリート製の支柱を使って固定し、基礎を使わずに済むようにした。架台の高さを調整することで、ゴルフ場ならではの起伏があっても、太陽光パネルが同じように南を向くように工夫している。

 

福島県の西白河郡は豪雪地域ではないが、年間最大積雪量の15cmを想定し、積雪への対策も必要だった。一般的に、発電中の太陽光パネルは、気温が5℃の場合、約25℃に発熱しているために、表面に多少雪が積もっても、その後、晴れれば、溶けて積もることは少ない。それでも溶けきらなかった時の対策である。

 

豪雪地域では、太陽光パネルを設置する角度を30度以上とすることで、雪を滑り落とす設計とする場合がある。福島県西白河郡は、そこまで雪が降らない地域のため、今回は太陽光パネルを設置する角度を20度とした。ゴルフ場内で、造成をせずに太陽光パネルを並べられる限られた場所に、所望の発電量を確保できる枚数の太陽光パネルを設置するためである。

 

20度は、太陽が傾いて影が長くなる朝や夕にも、影が隣の太陽光パネルにかかりづらく、より多くの太陽光パネルを並べられる角度であり、年間発電量をより多く確保できる。太陽光パネルの地面からの高さは60cmを基準とした。

 

次に、隣り合う太陽光パネルの上下方向の間隔を20cm開けて設置することで、太陽光パネルの上に雪が積もった場合でも、この隙間から雪が落ちやすい設計とした。

 

設置した第1期の2MW分の太陽光発電システムの太陽光パネル、パワーコンディショナー(PCS)などについては、非公開としている。太陽光パネルは2社の製品を採用した。第2期分をはじめ、今後の同社の都市ビル事業における再生可能エネルギーの導入などに向けた検討のためという。

 

今回のメガソーラーは、森トラスト・ホテルズ&リゾーツ(東京都品川区)のイノベーション事業部での検討を基に、グループ全体のノウハウや経営資源を活用しながら事業化したという。

 

同社グループでは、既存の都市ビル事業でも、エネルギー利用の効率化とともに、再生可能エネルギーによる発電を重要なテーマとして取り組んでおり、メガソーラーで得た経験やノウハウを生かしていくという。同社の都市ビルとして、被災時に、非常用発電機を備えた仙台トラストタワーに、延べ約3600人の被災者を受け入れたほか、最近では、東京都中央区に建設した「京橋OMビル」では、ビル内の1週間分の消費電力に相当する容量の非常用発電機を備えるほか、太陽光パネルと蓄電池を組み合わせた自立型のシステムを導入している。

 

発電所の概要













































名称 「森トラスト・エネルギーパーク泉崎」
所在地 福島県西白河郡泉崎村太田川大高向1
敷地面積 第1期:約6.4ヘクタール(約6万4000m2)、 第2期:未定
発電事業者 森トラスト
発電容量 第1期:2MW、第2期:8MW
発電開始日 第1期:2013年8月、第2期:未定
EPC(設計・調達・建設)サービス きんでん
太陽光パネル 非公開(2社)
パワーコンディショナー 非公開
O&M(運用・保守) 森トラストグループ



 

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20140123/329428/?bpnet