HOME |福島第1原発:改定工程表 冷温停止の判断あいまいなまま(毎日) |

福島第1原発:改定工程表 冷温停止の判断あいまいなまま(毎日)

2011-10-18 11:16:21

東京電力福島第1原発の左から、4号機、3号機、2号機、1号機=福島県沖で2011年3月29日、本社ヘリから(30キロ以上離れて撮影
東京電力福島第1原発の左から、4号機、3号機、2号機、1号機=福島県沖で2011年3月29日、本社ヘリから(30キロ以上離れて撮影


東京電力福島第1原発事故について、政府と東電は17日に発表した改定工程表で、原子炉の「冷温停止状態」の達成時期を年内に前倒しする方針を盛り込んだ。しかし、原子炉の圧力容器底部の温度だけで「冷温停止」を判断できるかはあいまいなまま。放射性物質の放出量評価についても「暫定値」だけで、「達成」を明言するにはより精度の高いデータが求められる。さらに、収束の最終目標である避難区域解除についても方向性を示せず、「冷温停止」後の展望も示せなかった。

 政府の国会答弁によると、第1原発の「冷温停止状態」の定義は主に(1)圧力容器底部温度が100度未満(2)原子炉からの放射性物質の管理・抑制(3)放射性汚染水を原子炉の冷却水に再利用する「循環注水冷却システム」の安定運転の維持--の3点だ。

 圧力容器底部の温度は今月1日以降、炉心溶融した1~3号機のすべてで100度未満を維持し、これが「年内前倒し」の根拠となった。ただ、溶融燃料が圧力容器から格納容器へ落ちているとみられ、圧力容器底部の温度だけで炉心内の状況を判断するのは困難だ。

 東電が17日に発表した原子炉安定化の実施計画によると、格納容器に落ちた溶融燃料は最高で150度程度と推定している。東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「上部からの注水で十分冷却できており問題ない」と説明したが、経済産業省原子力安全・保安院の山形浩史統括管理官は「これからその妥当性を検討する」と述べるにとどめた。

 改定工程表で示された各号機の放射性物質の放出量は、1号機毎時約0.4億ベクレル▽2号機同約0.1億ベクレル▽3号機同約0.4億ベクレル--で、事故直後(3月15日時点)の約800万分の1に相当する同約1億ベクレルになったとしている。しかし、測定が遅れている3号機の放出量について、保安院は「暫定値に過ぎない」としており、年内までに再測定したうえで、敷地境界の年間被ばく線量が法令基準(年1ミリシーベルト未満)を達成しているか判断する方針だ。

 冷温停止達成後の避難区域の解除について、内閣府の園田康博政務官は会見で「工程表の進捗(しんちょく)状況次第で、徐々に検討が始まるのではないか」と述べた。しかし「検討」の具体的時期などについては明言を避けた。【比嘉洋、中西拓司】

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111018k0000m040074000c.html