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熱帯林地域での森林破壊リスクの高い消費財企業と銀行の森林、人権分野の取り組み評価。合格点はユニリーバだけ。日本の日清食品、MUFGは最低ランク。環境NGOのRANが公表(RIEF)

2022-06-15 22:54:55

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 環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は15日、熱帯林地域での森林破壊リスクの高い産品に関連しているグローバルな消費財企業と、それらの企業にファイナンスを提供する銀行を対象として、森林と人権の二分野で各社の取り組みを評価・分析した結果を公表した。それによると、対象企業中、ユニリーバが「C」評価で最も高く、日清食品ホールディングスと三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は最低ランクの「不可」だったとしている。

 

 調査は、RANがまとめた報告書「キープ・フォレスト・スタンディング:森林&人権方針ランキング2022」として発表した。同調査とキャンペーンは2020年4月以来、今年で3回目の実施。対象企業・銀行は17社。これらの企業で、自社のサプライチェーンおよび投融資がもたらす森林破壊と土地収奪、地域住民、先住民族への暴力問題で適切な措置を講じている企業と銀行は一社もなく、森林破壊と人権侵害を阻止できていないと指摘している。

 

 企業評価は、森林破壊のリスクが高いサプライチェーンに関与している消費財企業10社と銀行7社を対象に、各社の取り組み方針について森林と人権分野の10項目を20点満点で評価した。評価対象とする「森林リスク産品」はパーム油、紙パルプ、牛肉、大豆、カカオ、木材製品など。各企業の取り組み状況の評価スコアに応じて、A(18〜20点)、B(15〜17点)、C(12〜14点)、D(5〜11点)、不可(0〜4点)と評価した。

 

 17社には日清食品、花王、MUFGの日本企業3社が含まれている。その結果、最も取り組みが遅れている「不可」と評価された銀行は、NI(インドネシア)、CIMB(マレーシア)、ICBC(中国)、JPモルガン・チェース(米国)、MUFG(日本)の5社。消費財企業では、日清食品(日本)、モンデリーズ、プロクター&ギャンブル(P&G)の3社。

 

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 全体で「合格点」に入る「C」評価は、ユニリーバ1社だけ。コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、花王の各社の方針では改善が見られたが、「依然として遅れを取っていル」と評価している。ユニリーバは森林リスク産品のサプライチェーン全体がもたらす影響に対処するために、信頼できる方針を採用している唯一の消費財企業で、森林フットプリント(インドネシア・スマトラ島北部に限定)も公表している。しかし、グローバルサプライチェーン全体の森林フットプリントの開示を約束する企業は、キャンペーン対象外のネスレだけとしている。

 

 銀行は対象の7行全てが「D」または「不可」。「不可」のMUFGとJPモルガン・チェースは、この一年で「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(No Deforestation, No Peat, No Exploitation : NDPE)」方針を採用した。だが、両社とも適用範囲が限定的で「方針に抜け穴が残っている」と指摘された。

 

 日本企業の評価では、総合点では日清食品とMUFGが不可(ともに4点)で、花王はD(6点)。3社ともNDPE方針を採用したが、適用の範囲については評価が分かれた。花王は全分野の供給業者について企業グループ全体で適用対象としたことから1点の評価を得た。しかし日清食品とMUFGは取引先および融資先のグループ全体を対象とせず、パーム油事業のみに適用するなど限定的だとしてゼロ点。


 「森林フットプリントの開示」では、日清食品と花王が実施を表明したのみで、開示そのものは遅れており、得点は1点。
昨年に続き、国際人権法で定められている「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(free, prior and informed consent:FPIC)原則」の実施や、「NDPE方針遵守の証明」についての各社の評価はいずれもゼロ。

 

 RAN日本代表の川上豊幸氏は「花王は方針を強化し、昨年の『不可』から『D』評価にランクを上げた。改善点は、取引先に企業グループ全体でのNDPEの方針採用を義務付け点がある。日清食品とMUFGが『不可』評価のままだったのは、両社ともNDPEの適用範囲が限定的なため。MUFGは企業グループとしての評価と方針遵守の確認、パルプ産業を含めた他セクターへのNDPE方針の拡大が課題だ」と指摘している。

 

 今回の調査対象企業は次の通り。▼消費財企業(10社):日清食品、花王、ネスレ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ユニリーバ、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、モンデリーズ、マース▼銀行(7社):MUFG、JPモルガン・チェース、中国工商銀行(ICBC)、DBS、バンクネガラインドネシア(BNI)、CIMB、ABNアムロ

https://japan.ran.org/?p=2011

http://japan.ran.org/wp-content/uploads/2022/06/RAN_KFS_Scorecard_JPN_2022.pdf