英ロンドン大学で最大クラスのカレッジが、化石燃料関連企業を、学生への就職斡旋活動の対象から除外すると決定。石油・ガス、化石燃料鉱業企業。「気候正義に反する」と（RIEF）
2022-09-30 08:29:32
化石燃料関連企業への就職斡旋を禁じる大学が現れた。と言っても、日本の大学ではなく、英国の名門ロンドン大学のバークベックカレッジ。新たに改定された同校の学生向け就職ガイダンスである「エシカル・キャリア・ポリシー」では、就職斡旋の対象外となるクライテリアに、「石油・ガス・化石燃料鉱業に関連する企業、あるいは、これらの企業による仕事のポスト」が付け加えられた。おそらく、化石燃料産業への就職斡旋を禁じた大学は世界でも初めてではないか。
同カレッジは1823年の創立という歴史を持つ由緒ある公的研究大学。キャンパスは、ロンドンの中心部にあり、経済学部や法学部、政治学部、哲学部等、19の学部で構成される。卒業生にはノーベル賞受賞者を5人も出している名門だ。ロンドン大学に属するカレッジの中でも最大級の規模で知られる。
同大学では学部生、院生をリクルートする企業に、学内で学生への説明会等の開催を認めるキャリアポリシーを設けている。今回、その企業選別のスクリーニングクライテリアに、化石燃料関連企業のチェック項目が加えられた。「サステナビリティに対するわれわれ（バークベック）のコミットメントや気候危機への対応に沿い、石油・石炭、鉱業企業を代表するか、あるいは、それらの企業による職業ポスト」を除外項目とした。
大学の方針改定は、気候変動対策を求める学生団体の「People & Planet」が、大学当局に対して、化石燃料企業の学生リクルートに大学が協力するべきではないと要求したことが発端。学生たちとの交渉の結果、大学側が同意して実現した。学生団体は、バークベック以外にも英国の数十の大学で同様のキャンペーン活動を展開しており、今後、バークベックに追随する大学が出てきそうだ。
もっとも、禁じられるのは大学による公式な就職斡旋活動だけで、学生が個別に企業と就職交渉を行うことは妨げられない。しかし、就職を目指す学生たちの多くは、これからの人生の大半において気候変動の影響を受けることは必至なので、学生をリクルートしようとする企業の担当者以上に、学生の方が真剣に企業選別を行っているという。
学生の就職活動から化石燃料企業を締め出すキャンペーンは、英国の全国学生組合や大学・カレッジ組合等の教授や職員らによっても支持されている。これらの教職員団体は「大学は化石燃料産業とのすべての関係を断ち切るべき」と主張している。
英国の大学では、通例、学内で企業が主催する新卒予定者向けの就職説明会が開催される。最近では、オックスフォード大学でグローバルな鉱業企業グループのGlencoreが開催しようとした説明会が、化石燃料企業の就職斡旋の禁止を主張する学生によって阻止されたり、シェフィールド大学で計画されたBPやエクソン・モービルの説明会でも、学生たちの座り込み活動が展開された。
バークベックはこうした学生と企業の対立がキャンパス内で起きる前に、化石燃料関連企業の就職斡旋活動を禁じる方針を明文化したわけだ。同カレッジのキャリアコンサルタントのJulius Cassebaum氏は「気候危機が続いている中で、それらに関連する産業に学生が就職する機会を最小化することに寄与できることを誇りに思う。わが校の対応は、他の大学が追随する試金石になる」と強調している。
キャンペーンを展開する学生の一人、Chris Davis氏は「『気候正義』は、創業以来、3世紀目に入ったバークベック・カレッジの基本ビジョンの中心軸であるべきだ」と主張する。英大学の約20%はすでに特定の産業を就職斡旋の対象外としている。たばこ産業、ポルノ関係、ギャンブル産業等だ。今後は化石燃料産業が加わえられることは間違いなさそうだ。
https://www.bbk.ac.uk/student-services/careers-service/ethical-careers-policy
Research Institute for Environmental Finance