HOME12.その他 |国連生物多様性条約締約国会議「COP15」、「30by30」目標確保等の「グローバル生物多様性フレームワーク(GBF)」で合意。年2000億㌦の資金負担で先進国と途上国に「溝」(RIEF) |

国連生物多様性条約締約国会議「COP15」、「30by30」目標確保等の「グローバル生物多様性フレームワーク(GBF)」で合意。年2000億㌦の資金負担で先進国と途上国に「溝」(RIEF)

2022-12-19 20:33:35

COP15001キャプチャ

  カナダ・モントリオールで開いていた国連生物多様性条約締約国会議「COP15」は19日、2030年までに各国は自らの国土と海洋の少なくとも30%を自然保全の対象とする「30-by-30」目標や、生物の遺伝子情報利用による利益を先進国と途上国で公平に配分することなどを盛り込んだ23の目標で合意した。新たな目標は、生物多様性の保全と自然との共生を目指す「ポスト2020生物多様性枠組み(GBF)」となる。目標合意は一歩前進だが、その目標達成に向けた行動の確保が大きな課題だ。

 生物多様性のCOP15は、今月7日から開かれていた。世界中から190を超える国と地域が参加、生物多様性の保護に向けて各国が取り組む2030年までの新たな目標の採択を目指して議論が続けられてきた。

 

 合意した目標は、2010年に日本の名古屋で開いたCOP10で採択した2010~20年の「愛知目標」の後継フレームワークとなる。当初の開催予定地の中国・昆明と、今回のモントリオールの両方の名をとって「昆明・モントリオール目標」と名付けられた。目標とする項目数は愛知目標を上回る23項目とし、愛知目標に比べて数値などの具体的な内容が増えた。

 

 焦点となっていた「30by30」は当初案通りに「30%」の数値目標の設定で合意した。陸域・海域に加え、生物多様性の損失が特に大きい、河川や湖沼などの内水域でも、少なくとも30%を保全する。外来種の侵入を少なくとも50%削減することも盛り込んだ。

 

 先進国と途上国の間での最大の対立事項だった生物・自然の保全のための資金支援のあり方では、官民で少なくとも年間2000億㌦(約27兆円)を確保するで合意した。国際基金「地球環境ファシリティー(GEF)」の中に生物多様性に関する新たな仕組みをつくることを盛り込んだ。

 

議長案を「強行採決」した形で、握手を交わす(左から3人目が黄氏)
議長案を「強行採決」した形で、握手を交わす(左から3人目が黄氏=朝日新聞より)

 

 ただ、こうした資金負担は「すべての国」が自主的に負う形とした。アフリカ等の途上国は、先進国に対して、そのうちの半分に相当する1000億㌦を途上国向けに供与する約束を求めたが合意に盛り込まれなかった。資金の拠出自体も、自主的で、先進国は2025年までは200億㌦、その後2030年から300億㌦と、全体の10分の1の水準にとどめる内容だ。

 

 同案に対して、議長国中国の生態環境相、黄潤秋(Huang Runqiu)氏が取りまとめを行った。議長案に対して、コンゴ共和国の代表が「先進国は途上国に対する資金供給をすべき.現在の文書は指示できない」と異論を唱える発言をした。これに対してメキシコ代表が賛成の意向を示した。議長団は両氏の発言の取り扱いを協議し、コンゴ代表の発言は「正式の異議ではない」として却下する形をとり、議長案採択の合意を宣言した。他の途上国関係者からはこの裁定に疑問を示す声が相次いだ。

 

 自然資源を先端医療等に利用することで生じる利益配分のあり方では、DNA配列等のデジタル化された遺伝子情報(DSI)の扱いをめぐって関係国間で争点となっていた問題では、配分をめぐる国際枠組みを設ける方向で調整を進めた。また大企業や金融機関に対して、生物多様性への依存度や影響に関する評価を定期的に情報開示することも求めるとした。

 

 2010年の「愛知目標」では2020年までに、世界の陸域の17%、海域の10%を保護地域にするなど、2020年までの10年間に達成すべき20項目の目標設定を掲げた。だが、達成期限の20年までに実際に達成された項目は一つもない、ことが国連の条約事務局が報告書で総括されるなど、目標達成の行動の必要性が示されている。https://rief-jp.org/ct12/106604

 

 今回の「昆明・モントリオール目標」も義務ではないことから、目標達成の行動が伴うかどうかが危ぶまれる。そこで、会議では目標の達成や強化を促すため、各国の国家戦略を評価・検証する新たな仕組みも導入することも盛り込んだ。2024年にトルコで開く次のCOP16までに、各国に国家戦略の提出を求め、その進み具合を、その次のCOP17と同19で点検する方針としている。

 

 会議中、世界中から参加した120以上の資産運用機関や大手金融機関等が、金融機関の役割として、自然環境・生物多様性等に影響を及ぼしている企業に対して、影響削減のエンゲージメント活動を共同で行う投資家イニシアティブ「The Nature Action 100(NA100)」の設立を宣言した。賛同金融機関は、自然環境、生物多様性に影響を及ぼす事業を展開する世界100の企業に対し、共同でインパクト低減を進めるエンゲージメント活動を展開する予定。https://rief-jp.org/ct12/130870?ctid=65

https://www.unep.org/un-biodiversity-conference-cop-15#:~:text=7%2D19%20December%202022%20in,global%20warming%20to%201.5%20degrees.