HOME |ブラジル・アマゾンの森林植生、1985年からの37年間で10%の純減。全体の損失割合は19%と回復不可能水準に迫る。今11月はボルサナロ現大統領の「置土産」で前年比90%増と急増(RIEF) |

ブラジル・アマゾンの森林植生、1985年からの37年間で10%の純減。全体の損失割合は19%と回復不可能水準に迫る。今11月はボルサナロ現大統領の「置土産」で前年比90%増と急増(RIEF)

2022-12-20 14:15:27

Mapbio001キャプチャ

 

  「地球の肺」と呼ばれるブラジル・アマゾン流域の自然植生が、1985年以来の37年間で、全体に占める自然植生の損失割合は19%に達していることが環境NGOらの衛星データ解析で判明した。自然植生の損失が20~25%に達すると、その地域は科学的に元の自然に回復することが不可能になるとされており、アマゾンの森林消失は深刻な状況に陥っていることがわかる。すでに同地域全体での森林のネットでの損失率は10%に達している。

 

 アマゾン地域の自然資源の動向については、同地域の破壊を追跡しているNGOの共同プラットフォーム「マップバイオマス(Mapbiomas)」が調査・分析した。それによると、1985年時点ではアマゾン地域の6%に相当する約5000haが森林から牧畜用の草原や農場、鉱業、都市建設等に転換されていたが、2021年には2.5倍の全体の15%、約1億2500万haに達している。

 

 この37年間に、自然植生のほぼ10%がネット損失したという。しかし、歯止めは全くかかっていない。今年末でブラジルの大統領を退任するジャイル・ボルソナロ氏の「置き土産」の形で、11月中にはアマゾンを中心とする森林地帯の火災被害の総面積は約8100㎢で前年同月比約90%増と、倍増に近いほど増えている。農業用の開墾、焼き畑、違法伐採等による「駆け込み開発」が進んだとみられる。

 

1985年から2021年にかけてのアマゾンの自然植生の変化
1985年から2021年にかけてのアマゾンの自然植生の変化
1985年から2021年にかけての森林喪失部分(ピンク部分)
1985年から2021年にかけての森林喪失部分(ピンク部分)

 

 森林開発のテンポはアマゾン地域を取り囲む国々によって異なる。スリナム、ギニア、仏領ガイアナ等での損失率は1.6%。これに対して、ブラジルでは19%と2割近い。各国の開発・保護政策の違いが明確に反映している。11月のデータは、ボルサナロ政権によって、同国の開発テンポが急拡大してきたことを象徴する。

 

 マップバイオマス等によると、植生の損失が20~25%に達すると、「ポイントオブノーリターン(復帰不能点)」あるいは「インフェクション・ポイント(変曲点)」に達し、回復が困難になると、科学的文献で指摘されているという。このため同団体は、現状のブラジルでの森林損失ペースが続くと、地球の大気清浄化に重要な役割を果たしているアマゾンのCO2吸収力は、間もなく「ポイントオブノーリターン」に達し、気候変動の激化につながる可能性があると警告している。

 

 ブラジルのアマゾン地域での人為要因による森林開発の増大に加えて、地球温暖化の進行も影響している。アマゾン源流部のアンデス山脈の氷河は同じ期間中に、46%が消失、ほぼ半分に減っている。アンデスの氷河の溶融水はアマゾンの水脈を形成し、多くの人々の生活を支え、地域一帯の自然資源を潤しているが、その水量が細ることもアマゾンの植生に影響を与えているとされる。

 

 自然条件の変貌に加えて、人間活動による開発等が拡大する影響は加速度的に広がっている。マップバイオマスによると、同流域全体での鉱業活動の総面積は、1985年の4万7000haから2021年には12倍以上の57万haに拡大している。

 

 マップバイオマスでは、衛星技術を使ったRAISG (Amazon Network of Georeferenced Socio-Environmental Information) とマップバイオマスのネットワークの活用で、地上30m間隔で、アマゾン地域の土地利用状況を30年以上にわたって、18種類の土地用途にデータを分類したマップを作成している。

 

 それらのデータからはアマゾン地域の土地利用の改変が加速していることがわかるという。マップ調査によれば、森林損失は膨大で、復旧は不可能、かつこの傾向を反転させることは予測不可能としている。マップ上のデータは「黄色信号」を示しており、包括的で、決断力を伴った強制的な国際行動の必要性を緊急に求めている。

 

 RAISGのジェネラルコーディネーターのBeto Ricardo氏は「マップバイオマスによって集積された情報は、アマゾンの重要性を改めて科学データで示すものだ。しかし、1985年から2021年にかけての人類の活動によって生じた変化は、アマゾンが持っているカーボン貯蔵機能が変化し、エコシステムの自然のバランスがリスクに直面していることを警告するものだ」と指摘している。

https://mapbiomas.org/amazonia-perdeu-97-de-sua-vegetacao-natural-em-37-anos

https://mapbiomas-br-site.s3.amazonaws.com/FactSheet_Regional_M.pdf