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YouTube。「気候関連の偽情報ビデオ」200点の掲載で7380万ビュー。広告収入増につなげる。「偽情報で収益稼ぎ」と環境NGOが批判。親会社グーグルも広告基準に違反と抗議(RIEF)

2023-05-06 01:31:50

Youtube001キャプチャ

 

 ネットの映像サイトのYouTubeが、気候変動に関する「偽情報」を自ら設定した広告基準に反して掲載し、多額の広告収益をあげている、として環境NGOが抗議の声をあげている。YouTubeが掲載する気候変動否定論を内容とするビデオ200点を分析したところ、You Tubeはこれらのビデオの掲載で、7380万以上の読者ビューを獲得。それにより広告収入をあげていると指摘。こうした広告収益は、親会社のグーグルとYouTube自身が定める広告基準に違反するとして厳正な対処を求めている。

 

 YouTubeの「偽情報」ビデオ問題を調査したのは、50の米欧の環境NGOで組織する非営利団体「偽情報に反対する気候行動連合(Climate Action Against Disinformation coalition  : CAAD)」。同連合体に参加している米英NGOの「Center for Countering Digital Hate(CCDH)」がYouTubeのサイトを子細に検証した。

 

 CCDHは、気候関連の情報を「ウソ」と強調するYouTubeのビデオ200点のビデオをピックアップし、その内容とビデオに付随する広告を調査した。ビデオの内容は「気候変動は人間活動が原因ではない」「IPCCのすべての気候モデルは間違っている」「結局のところ、CO2と気候変動は何の関係もない」「気候ヒステリーは、反白人主義、反西側共産主義の圧政に対する『トロイの木馬』の別称」等の気候ヘイト情報を流していることを確認。

 

IPCCの気候モデルを批判するYouTubeビデオ。右側に「気候ヘイト」サイトの広告が並ぶ
IPCCの気候モデルを批判するYouTubeビデオ。右側に「気候ヘイト」関連のサイト広告が並ぶ

 

 このうち100点は、気候変動についてIPCC等で科学的にコンセンサスが得られている原因論と矛盾するような広告の掲載は禁止するとするグーグルやYouTubeの広告ガイドラインに矛盾すると評価した。さらに残りの100点についてもCAADが定める「気候偽情報」の定義に合致するフェイク情報を含むと認定。前者のビデオは1880万の読者ビューを、後者が5500万ビューを得て、合計7380万ビューを得ていることを確認した。

 

 YouTubeの広告収入は掲載したビデオに付随する広告から読者ビューに応じて、課金収入を得る仕組みだ。前者のビデオでは、 Costcoをはじめ、Politico、Tommy Hilfiger等が、また後者のビデオでは、 Nike、Hyundai、Emirates等が主要広告主となっている。YouTubeは、これらの広告主から「気候偽情報」を掲載することで広告収入を稼いでいることになる。

 

環境活動家のグレタ・ツゥンベリーさんのビデオの右側に添付された多くの偽情報サイト
環境活動家のグレタ・ツゥンベリーさんのビデオの右側に添付された多くの偽情報サイト

 

 親会社のグーグルは、2021年10月に、気候偽情報の掲載禁止と同情報からの広告収入を得ないことを宣言している。しかし、CCDHの調査では、実際は現在も、気候否定論者のポピュラーな記事の63%にグーグルの広告が掲載されているという。また米国の保守的サイト「The Daily Wire」がグーグルの検索で「気候変動はウソ」等のサーチ用語への広告を行い、検索した人を自らのサイトに誘導していることもメディアで指摘されている。グーグルはそうした「偽情報」に誘導する検索ビジネスでも広告収入を得ている、と指摘されている。https://www.theguardian.com/environment/2023/jan/27/daily-wire-google-ads-climate-crisis-deniers

 

 CCDHはこうしたグーグルとYouTubeの「有言不実行」を指摘したうえで、「グーグルは、YouTubeやその他の広告プラットフォームにおいて、気候否定論者(の広告を許すことで)から収益をあげないとする自らの約束を実行することから始めるべきだ」と指摘している。

 

 グーグルやYouTubeの収益は、流す情報に付随する広告料収入が大半。読者のアクセス数、ビュー件数の高い情報ほど、広告料収入も増える仕組みだ。このため奇をてらった「気候ヘイト情報」等でもアクセス数が増えるならば、サイト上でできるだけ温存させたいとの意向が働くとの見方もある。ただ、広告を出す企業にすれば、ニセ情報と連動して広告が流されると、偽情報を支持していると読者から受け取られ、広告が逆効果になる懸念もある。メディア側が明確な広告基準の設定だけではなく、それを迅速、厳正に実施する機動的な運営を心がける必要がある。

YouTubes-Climate-Denial-Dollars.pdf (caad.info)

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