世界遺産の知床岬に「サッカー場」大の携帯基地局用の太陽光発電計画。環境省はアセスメント無しで許可。環境団体がユネスコに「通報」。知床観光船の沈没事故後の観光対策を優先(RIEF)
2024-06-18 18:21:07
世界遺産の知床岬に、サッカー場一面とほぼ同じ大きさの携帯基地局用の太陽光発電施設の建設計画を、環境省が環境アセスメントもなく許可したとして、環境団体が世界遺産条約事務局のユネスコ世界遺産センターへ「通報」した。2022年4月に起きた観光船の沈没事故の事後対策として、携帯電話の通信環境の整備を優先する策だが、環境団体は「沈没事故は事業者の過失によるもので、太陽光発電建設地周辺はオジロワシの営巣地がある」などと指摘している。
世界遺産条約では、条約履行のための作業指針において、「世界資産の『顕著な普遍的価値(OUV)』に影響を及ぼす可能性がある場合は緊急の通知提出を求める」との規定がある。これに基づき、公益財団法人日本自然保護協会と北海道自然保護協会の2団体が、知床岬での携帯電話基地局の整備事業に問題ありとして、6月12日にユネスコの世界遺産センターとIUCNへ緊急通知書をメールで送った。
問題の携帯基地局と太陽光発電施設の建設計画は、2022年4月に起きた知床岬遊覧の観光船が沈没事故がきっかけだ。同事故ででは20人の死者と、6名が行方不明者を出した。事故後、観光客が激減した地元の要望を受け、総務省や環境省は知床半島での携帯電話通信可能域を強化するための整備計画を進めている。

このうち、焦点となっている「サッカー場規模」の太陽光発電施設は、世界自然遺産A地区(将来にわたり厳正な保全管理を図る地域)、国立公園特別保護地区(特別地域内で特に厳重に景観の維持を図る必要のある地区)に設置する計画だ。両省は、すでに携帯電話通信事業者への財政支援として総事業費約9億円のうち約4億4000万円の補助金を支出し、国立公園内での事業許認可も出しているという。
許可された計画では、建設される太陽光発電施設(蓄電設備含む)はパネル数264枚で広さ約7000㎡。加えて電力の送電のために延長2kmのケーブルを埋設し、アンテナは知床岬灯台の壁面にアンテナを設置するという。しかし環境団体によると、近隣にオジロワシの営巣地があり、工事は一時中断している。
環境団体の指摘を受けて、環境省はオジロワシの状況をみるため現地視察をしたが、視察期間は1日間だけ。環境団体は、計画される太陽光発電施設は繁殖つがいの高利用域にあると考えられ、建設工事が採餌行動を妨げる懸念がある、と指摘する。だが、環境省は工事による周辺環境への影響を調べる環境アセスメントも実施していないという。
一方で、同施設建設地とは別の半島東部でも別の基地局建設を年内にも行う計画で、同設備によって、観光船・漁船からの通信や現地の動画ライブ配信もできるようになるとされる。沈没船事故で、観光収入減に直面した地元事業者らの意向を受ける形で、「環境よりも観光」を優先する役所の安易な姿勢が浮き上がる。
環境2団体はこのままでは、世界遺産の域内で希少野生生物の生育が阻害されるリスクが高いとして、諮問機関の国際自然保護連合(IUCN)を通じて世界遺産条約事務局のユネスコ世界遺産センターに緊急通知を行ったわけだ。
同通知の内容は、①環境省は計画段階で希少野生生物に関する調査を事業者へ指示をせず、許認可したことは大きな問題②国立公園特別保護地区や森林生態系保護地域での土地改変は、今後の保護地域制度の運用を歪める最悪のケース③太陽光パネルは火災や延焼の危険性があるため、知床の普遍的価値への影響が懸念される――等を指摘している。
両団体は、「われわれは、通知書をもとに、環境省が『世界遺産条約履行のために作業指針』に基づき、世界遺産センターおよびIUCNとの協議を進め、携帯基地局整備の再検討に向けて、地元自治体と調整していくことを期待している」としている。環境省は「観光省」に名前を変えたほうがよさそうだ。
(和訳)知床世界自然遺産における携帯電話基地整備局問題に関する緊急通知書

































Research Institute for Environmental Finance