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南極で「緑化」が急スピードで進展。過去35年で南極半島の植生被覆は14倍に増加。近年の増加ピッチは30%増と加速傾向。英研究チームが衛星画像から分析(RIEF)

2024-10-05 22:40:40

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写真は、牧草地かゴルフ場のように「緑化」された南極半島の一部=研究論文「Sustained greening of the Antarctic Peninsula observed from satellites」から転載)

 

  世界中で平均気温が過去最高を記録し続ける中、地球全体の平均気温を上回る勢いで温暖化が進む南極では、これまでの「氷の世界」のイメージを覆す「緑化」が、急スピードで進んでいる。英大学等の研究チームが、衛星を使った観測の結果、南極大陸西部にある南極半島の植生被覆が過去35年間で14倍近くに増えていることが判明、4日の学術誌で発表した。研究者は「植物が生育しているのはまだ、ごく一部。 しかし、そのごく一部が劇的に増加している。この広大で隔絶された『荒野』でさえも、人為的な気候変動の影響を受けていることを示すものだ」として、地球温暖化対策が急務であるとしている。

 

 研究チームは英エクセター大学、同ハートフォードシャー大学、英国南極観測所(BAS)の研究者が中心になり、Google Earth Engineのクラウド処理ワークフローを使用して、1986年~2021年の間の南極半島全体での植生被覆の変化を観測した。「Sustained greening of the Antarctic Peninsula observed from satellites」と題した研究論文は、4日付の「nature geoscience」に掲載された。https://www.nature.com/articles/s41561-024-01564-5.pdf

 

 観測結果によると、同地域全体で植生被覆が広がっている可能性が高い面積は、1986年の0.863k㎡から、2021年には13.8倍の11.947k㎡に増えていることがわかった。さらに、その変化のスピードは、調査期間全体で「0.317 k㎡/年」だったのが、近年の201 6~2021年に絞ると「0.424 k㎡/年」と、全体の期間より30%も増加速度が高まっていることもわかった。この間の増加面積の年間40万㎡以上は、東京ドームの8.5個分に相当する。

 

35年間で明確に「緑化」が進む南極半島の推移=論文より
35年間で明確に「緑化」が進む南極半島の推移=論文より

 

 研究者らは、近年になって変化の速度が増大していることについて「この傾向は、最近の温暖化に対応する寒冷気候の生態系における緑化のより広範なパターンを反映している。南極半島の陸上生態系が将来的により広範囲に変化をする可能性と、そうした影響が長期的に続く可能性を示唆している」と分析している。

 

 南極半島でみられる主な植生は、コケ類が中心。エクセター大学の環境科学者のトーマス・ローランド(Thomas Roland)博士は「南極半島に生育する植物は、ほとんどがコケ類で、地球上で最も過酷な環境で生育している。 その景観は、依然としてほとんどが、雪、氷、岩で占められ、植物の生育地域はごく一部。 しかし、そのごく一部が劇的に増加している」と、近年の南極の変化に驚きを示している。

 

 同ハートフォードシャー大学のオリー・バートレット(Olly Barlett)博士は「南極の土壌はほとんどが貧弱か、あるいは存在しないが、このままだと、植物の増加により有機物が加わり、土壌の形成が促進される。これにより、(コケ類以外の)他の植物の成長の道筋ができる可能性がある。これは、観光客や科学者、あるいは大陸を訪れる他の訪問者によって運ばれてくる外来種や侵略種が広がるリスクを高めることになる」と懸念を示している。

 

陸上の岩などに、コケ類がびっしりと繁殖している=BSAより
陸上の岩などに、コケ類がびっしりと繁殖している=BASより

 

 ローランド氏はさらに「われわれの研究結果は、南極半島、ひいては南極大陸全体の環境の未来について、深刻な懸念を提起している。南極大陸を守るためには、これらの変化を理解し、その原因を正確に特定しなければならない」と指摘している。

 

 南極大陸では、過去60年間にわたって著しい気温上昇がみられている。特に、西南極および南極半島地域において、最も高い温暖化率が記録されており、地域ごとの気温上昇では世界平均を大幅に上回っている。今回の研究では、気温上昇とともに、降水量の増加と植生の生育期の延長を伴っていることが、植生被覆の拡大という形で占めされたことになる。

 

 南極半島地域全体では、1999年から2014年にかけて、一時的に温暖化の進行が停止したことが観測されている。だが、その影響は短期的な自然気候変動によるとみられている。長期的にみると、同地域全体の温暖化の傾向と影響の規模は明白であり、この傾向は2100年まで10年当たりで気温上昇率が0.34℃の割合で継続すると予想されている。

 

 氷河の溶融も進んでおり、今世紀末までに南極半島地域での氷のない海域は3倍に増加する可能性も指摘されている。気温の上昇だけでなく、氷河の溶融や海氷の減少などが、この地域での陸上生物の変化に影響を及ぼす要因ともされる。南極半島地域は、南極大陸の陸上植生の大部分が存在している。

                                                                                                                             (藤井良広)

https://www.nature.com/articles/s41561-024-01564-5

https://www.bas.ac.uk/media-post/satellite-observations-show-accelerating-greening-of-antarctic-peninsula/

https://www.nature.com/articles/s41561-024-01564-5.pdf