インドネシアの野生生物保護区で、東京ドーム140個分の「違法アブラヤシ農園」。環境NGOが衛星で確認。製造された違法パーム油は日清食品、花王等の主要企業が調達の可能性(RIEF)
2024-11-25 13:10:45
インドネシアの国指定の野生生物保護区内で、東京ドーム約140個分の違法アブラヤシ農園が開発されていることが、環境NGOの衛星を使った調査で判明した。同違法農園から製造されたパーム油を食料品等に使用している可能性のある企業として、日清食品、花王、プロクター&ギャンブル、ネスレなど8社を名指した。さらにこれらの企業に融資している金融機関として、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、ラボバンク(オランダ)、HSBC(英国)などをあげた。EUが法制化した「森林伐採規則(EUDR)」では、違法農園から製造された商品は輸入が禁止されるほか、消費財企業や金融機関が自社で制定するESG方針にも反する可能性がある。
調査を実施したのは、日本にも拠点を置く米環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)。同団体は、今年7月、インドネシアのラワ・シンキル野生生物保護区(スマトラ島)を最新の衛星を使った画像撮影で調べた。その結果、保護区内で大規模な違法農園が拡大中であることが判明した。RANはこれまでも2019年、2022年にそれぞれ調査を行い、パーム油の原料となるアブラヤシ農園の拡大による森林破壊を発見、公表している。
同保護区一体は、生物多様性資源の豊かなホットスポットで、「世界のオランウータンの首都」とも呼ばれる「ルーセル・エコシステム」の南部に位置する。同団体は、同保護区の泥炭林地域に造成されたアブラヤシ農園の開発状況を把握するため、エアバス社のプレアデス・ネオ衛星による画像撮影を実施した。同衛星画像は30cmという高い解像度をも持ち、これほどの高解像度画像による同地域での調査結果が公開されのは初めてとしている。
衛星画像の分析から、同保護区には652ヘクタール(東京ドーム約140個分)に及ぶ違法アブラヤシ農園が存在し、そのうち453ヘクタール(同97個分)がアブラヤシ果実の生産が可能になっていることを特定したとしている。衛星画像調査に加えて、現地調査、同地で栽培されたアブラヤシから生産されたパーム油を原料とする消費財企業と製油企業のサプライチェーン分析も行った。
インドネシアでは違法パーム油の調達が発覚したロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ(子会社のアピカル)、ムシムマス・グループ、Permata Hijau Group等がすでに告発されている。これらの製油企業からのパーム油を購入した可能性のある主要消費財企業として、日本の日清食品、花王のほか、プロクター&ギャンブル(P&G)、ネスレ、モンデリーズ、ペプシコ、ユニリーバ、コルゲート・パーモリーブを名指ししている。
これらの企業に資金を供給する金融機関も間接的に、違法パーム油使用に関与していることになる。対象金融機関としてMUFG、ラボバンク、HSBCのほか、CIMB、メイバンク、BNPパリバ、UOB、DBS、OCBCをあげている。
同地域は法律で自然資源の保護を定めている保護区だが、地域内での森林伐採は2021年から2023年にかけて4倍に増加していると指摘。このうち、2016年以降の総伐採量の74%は、EUが年内に施行予定のEUDRが森林破壊禁止の基準日とする2020年12月31日以降に伐採されているという。つまり、保護区の法的保護や規制要件が組織的に無視される形になっているわけだ。
また今回の調査では、裕福な土地投機家が小規模農家を装うことで、違法森林伐採への責任を回避する「パーム油ロンダリング」という新たな「抜け穴」の存在も立証されたとしている。
RANの森林政策ディレクター、ジェマ・ティラック(Gemma Tillack)氏は「世界で最も重要な生態系のひとつが破壊され続けていることは、消費財企業や銀行、そしてわれわれ消費者への警鐘だ。今回の調査で得られた証拠は、違法に皆伐された土地で生産されたパーム油がグローバルサプライチェーンに混入し、スマトラオランウータン等が深刻な危機にさらされていることを示す。われわれが日常的に購入する製品、例えば化粧品のOLAY、ミロ、オレオ、ポテトチップスのLay’s、カップヌードルなどのサプライチェーンには、これらの違法パーム油が混入するリスクがある。その証拠も揃っている」として、対象企業に緊急の対応をとるよう求めている。
https://www.ran.org/wp-content/uploads/2024/11/RAN_Orangutan_Captal_Under_Siege_2024-1.pdf