2024年の世界の海面上昇。予想より3割多い「平均0.59cm」。記録的な気温上昇による海水の「熱膨張」が増大。科学者の予想を上回る。過去約30年で10cmの上昇。NASA調査(RIEF)
2025-03-15 00:46:31

(写真は、衛星で観測した米国フロリダ州付近。低地が多く、海面上昇によって水没リスクの高い地域が広がる=NASA)
世界の平均気温が2024年は過去最高を記録したが、海面の上昇も当初の予想より3割以上も上昇し、観測史上もっとも高くなった。米航空宇宙局(NASA)が13日、公表した。昨年1年間の世界の平均海面上昇は0.59cm。観測している科学者の予想(0.43cm)を上回った。予想以上の上昇になったのは、気温上昇の影響で海温も上昇する「海洋温暖化」の影響という。海水が温められて膨張する「熱膨張」が従来以上に大きかったためだ。衛星による海面高度の観測が始まった1993年以来の合計の海面上昇は10cmとなっている。
2024年の世界の平均気温は15.10℃で、1991年から2020年の平均気温を0.72℃上回り、これまでで記録上最も気温が高かった2023年を0.12℃上回った。産業革命以前の気温とされる1850年から1900年の気温の推定値を1.60℃上回った。産業革命以前の気温を年間で「1.5℃以上」上回った最初の年だった。https://rief-jp.org/ct8/152827?ctid=70
年間を通して、世界全体の地表の平均気温が高かったことから、海洋の海水も温められ、24年年間では、極域外の海洋における年平均海面水温(SST)は20.87℃という記録的な高さに達したほか、1991~2020年の平均値を0.51℃上回った。24年前半の1月から6月までの期間における極域外の海面水温の平均値は、記録的な高水準となり、23年下半期の高温月から連続的に海面水温の上昇がみられた。24年後半の7月から12月までの海面水温も、同時期としては23年に次いで2番目に高い値だった。

NASAは公式サイトで、2024年の海面上昇について「異常な海洋温暖化と、氷河など陸上の氷の融解が組み合わさった結果」と説明している。通常、海面上昇の要因の約3分の2は、両極域の氷床やグリーンランド等の氷河の融解によって、陸地から海へ水が追加的に供給されることが主要な要因となる。残りの約3分の1は海水が温められて膨張する「熱膨張」が要因とされてきた。
しかし、2024年にはその割合が逆転し、海面上昇要因の3分の2が熱膨張によるものだった。科学者の予測より約3割分、海面上昇が高くなったのは、氷河等の融解による水の供給と、熱膨張の比率が逆転したためとされる。ワシントンのNASA本部で物理海洋学プログラムおよび統合地球システム観測所の責任者を務めるナディア・ビノグラドヴァ・シファー(Nadya Vinogradova Shiffer)氏は「2024年が観測史上最も気温が高かったことで、地球の海もこれに追随し、過去30年間で最も高いレベルに達した」と指摘している。
南カリフォルニアのNASAジェット推進研究所の海面水位研究者ジョシュ・ウィリス(Josh Willis)氏は、「2024年に観測された海面上昇は、われわれの予想を上回った。毎年、多少の変動はあるが、明らかなのは海面が上昇し続けていることであり、上昇の速度はますます速くなっているということだ」と、温暖化の影響が確実に加速していることに警鐘を鳴らしている。
24年の年間を通じた海面上昇は0.59cmなので1cmにも満たないともいえる。だが、衛星からの海面高度観測が始まった1993年からの31年間では、合計で平均10cmの上昇となる。この間の海面上昇率は2倍以上になっている。地球の海は確実に膨張しているわけだ。
国連は、30年間で10cmの海面上昇は、太平洋やインド洋などに点在する島嶼部諸国にとっては、すでに国土が水没する「脅威」になっていると警告している。島嶼部だけではなく、オランダの低地沿岸地域やバングラデシュ、中国の河口地域等でも、水没懸念地域が広がっている。海面上昇の影響を受ける島嶼部や沿岸部地域に暮らす多くの住民は、生活基盤が崩壊する可能性がある。