コカ・コーラが清涼飲料水容器の現状のリサイクル方針を続けると、プラスチック廃棄物はむしろ増え、2030年には年60万2000㌧のプラ廃棄物投棄になると、米環境保全基金が報告書(RIEF)
2025-04-14 22:30:18

世界最大の清涼飲料水メーカーのコカ・コーラが、世界で販売を続けている清涼飲料水用の容器を現行のまま使い続けると、2030年に年間60万2000㌧のプラスチック廃棄物が海洋/淡水域に投棄されることになる、との警鐘を鳴らす調査報告が示された。地球環境/海洋汚染を調べる非営利の米環境保全基金「オーシャナ(Oceana)」が調査した。年間の海洋等への排出量は「1800万頭のシロナガスクジラが食べて満腹になる量に匹敵する」と指摘。コカ・コーラに対して再利用できる容器の使用を強力に推進するように求めている。
同基金が、使用元を確認できる清涼飲料プラスチック容器を調べたところ、11%がコカ・コーラ製で、次にペプシコ5%、ネスレ3%で、報告書は「清涼飲料業界では、コカ・コーラが最大の、プラスチック環境汚染源になっている」としている。
海洋などの水域に投棄されたプラスチックは、自然環境で細分化され、マイクロプラスチック(直径5mm以下の微細なプラスチックごみ)として、魚介類等の体内に蓄積、人間を含む他の生態に移転していくことが知られている。これらのマイクロプラスチックによる人体影響については、明確には断定されていないものの、体内蓄積が増大すると、ガンや心臓病、糖尿病、不妊症、発達生障害などの発症につながる恐れがある、との指摘もある。
コカ・コーラは世界最大の清涼飲料メーカー。オーシャナの調べでは、現行の容器の使い方を継続すると、2030年には年間410万㌧以上のプラスチック容器を使うことになる(コカ・コーラが発表している2018~2023年のデータを基に試算)。2018年比18%増、2023年比40%増になるとしている。
コカ・コーラ自体はプラスチック容器対策(World Without Waste Program)を展開しており、容器のリサイクル(再資源化)化に力を入れていると公表している。たとえば、2022年には、再生プラスチック容器を10億㌦分購入して使用したほか、2035年までに全社のプラ容器の35~40%を、プラスチック、ガラス、アルミの各素材のリサイクル資源を使う(うちプラ容器は30~35%)としている。さらに「使い捨て容器」の回収にも力を入れているとしている。同社によると、消費者向け容器の95%がリサイクルできるように作っているとしている。
これに対して、オーシャナは、「使い捨て容器をリサイクル利用する方法は、環境汚染対策としては限界がある。根本的な問題解決にはならない」とコカ・コーラの対策を批判している。オーシャナによれば、海洋投棄などを防ぐためには、使い捨て容器のリサイクルに比べて、容器の再利用化のほうがはるかに有効だとしている。
再利用可能なプラスチック製ならば25回以上、ガラス容器ならば50回以上繰り返して利用できるという。オーシャナの試算では、「コカ・コーラが再利用可能容器の使用率を2030年までに26.4%に引き上げれば、プラスチックの使用量を現在のレベル以下に抑えこめる」という。
コカ・コーラの場合、再利用できる容器の使用率は2023年に10.2%となっている。同社は、再利用可能容器の使用についてはリサイクルほど熱心ではない。2022年には「2030年までに再利用可能容器の比率を25%に引き上げる」としていたが、2024年末に同プログラムを変更し、「容器の再利用にも投資している」とする一方、むしろ使い捨て容器のリサイクルを重視する方針に転換した形となっている。
海洋のプラスチック汚染は深刻度を増している。世界経済フォーラム(ダボス会議)が約10年前に、「このままプラスチックごみが増え続ければ、2050年にはプラスチックごみの量が魚の量を超える」と警告していたが、その後も大きな改善は見られていない。
(矢作弘)