HOME11.CSR |EU「森林破壊防止規制(EUDR)」実施で、1年後の2026年12月末に再延期を正式決定。小規模事業者は追加で半年延期。「環境対策後退」明確化で、来年には再々延期論の可能性も(RIEF) |

EU「森林破壊防止規制(EUDR)」実施で、1年後の2026年12月末に再延期を正式決定。小規模事業者は追加で半年延期。「環境対策後退」明確化で、来年には再々延期論の可能性も(RIEF)

2025-12-23 23:47:14

EP0011キャプチャ

 

  EU加盟国で構成するEU理事会は、森林破壊防止規制(EUDR)の実施を今年末から1年延長することを正式に発表した。同規則の実施日再延期についてはすでに、欧州議会の間で暫定的な政治的合意に達していた。理事会は同合意を受け、今回決定した。零細・小規模事業者には追加で6カ月の猶予期間を設ける。同時に同規則のデューデリジェンスプロセスの対象を絞るなどの簡素化措置を導入する。理事会は今回の改正は同規則の実施を簡素化し、事業者、取引業者、当局がその適用に十分備えられることを目的とするもの、と説明している。

 

 EUDRはすでに昨年末の施行を、今年末に延期しており、今回の改定は再延期の決定になる。規制の適用は全事業者に対して2026年12月30日まで延期とし、零細・小規模事業者にはさらに6カ月の猶予期間を追加する。https://rief-jp.org/ct12/162861?ctid=

 

 理事会は、今回の再延期措置は、EUDRの効果的な運用に必要なITシステムの整備状況や行政負担に関する加盟国・関係者の懸念に対応するもので、EU市場に流通する製品に関連する森林破壊・森林劣化を防止するという規制の目的は完全に維持される、としている。ただ、1年後に再び「再々延期論」が出ないとは限らない。

 

  また今回の改正内容には、行政負担をさらに軽減するため、特定の印刷製品(書籍、新聞、印刷写真など)は、これらの物品に関連する森林破壊リスクが限定的であるとの理由から、規制の適用範囲から除外される。紙メディアのマスコミへの配慮(あるいはマスコミからの「圧力」)という側面もあるようだ。

 

 今回の規則改正を受け、欧州委員会は今規制の簡素化レビューを実施し、年明けの4月30日までに報告書を提出する義務を導入された。報告書は、特に追加で半年の延長措置を講じる小規模事業者に対するEUDRの影響と行政負担の評価を中心とする予定。さらに「必要に応じて立法提案を伴うべきである」としており、小規模事業者の適用除外措置を恒久化する可能性がある。

 

 EUDRは、EU市場に、途上国等から流通または輸出される、牛、カカオ、コーヒー、アブラヤシ、ゴム、大豆、木材及びその派生製品が、原産地の森林破壊や森林劣化を引き起こしていないことを確保する目的で、2023年6月に発効した。消費国であるEU市場での規制により、原産地・途上国等での森林の乱開発や生態系破壊などを防ぐことを目指した法制度だ。

 

 ただ、対象となるEUへの輸出国は途上国だけでなく、米国などからの農作物なども含まれることから、トランプ米政権なども反発を強めた。またチョコレート(カカオ原料)やコーヒーなどのEU市場での価格が高騰し、その余波が日本等他の消費国にも広がるといった事態も引き起こした。

 

 しかし、農業利用などによる森林開発で失われる森林などの生態系損失は急ピッチで進んでいる。国連食糧農業機関(FAO)のデータでは、1990年から2020年の間にEUの面積を上回る4億2000万haの森林が、これらの農作物の開発等による森林破壊活動で失われた。EU全体でのこれら農作物の世界の森林破壊の約10%を占めるとされ、このうちパーム油と大豆が3分の2以上という。

 

 EUDRの再度の実施延期については、欧州の大手飲食料企業等からは、反対の声があがった。これらの企業は原料を輸入する途上国での農場等において、同法への対応策を講じてきたためだ。自然資本維持や生態系保全について積極的に対応することが、新たな企業価値を構成するとの判断からだ。ただ、こうしたESG、あるいはCSR重視企業の声は、EU全体の対応を重視する政治的判断を覆すまでには至らなかった。

 

 CSR活動の先進企業の行動が報われなかった顛末は、EUの自動車からのCO2排出抑制策として設定された2035年の新車販売でのネットゼロ車(ZEV)規制の修正とも共通する。EUはこれまで掲げていた電気自動車(EV)限定策を、EU自動車メーカーの反対等を受け、ガソリン車などの内燃機関自動車(ICE)の場合でも「E-fuel(合成燃料)」使用や、自動車の製造過程で「グリーン鉄鋼」や「バイオ燃料」を使うこと等を条件として、2035年以降も、販売継続を容認するという提案に切り替えている。https://rief-jp.org/ct4/163090?ctid=71

 

 EUDRの再延期については、欧州議会の社会民主進歩同盟(S&D)の交渉担当者のデララ・ブルクハルト(Delara Burkhardt)氏も、「EUは矛盾した行動を取っている。一方で気候会議では森林保護に取り組むと約束しながら、他方でそのための貢献を徐々に減らしている」と指摘している。EU市民の多くも同様の疑問を抱えていると思われる。

                          (藤井良広)

https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2025/12/18/deforestation-council-signs-off-targeted-revision-to-simplify-and-postpone-the-regulation/

https://data.consilium.europa.eu/doc/document/PE-60-2025-INIT/en/pdf