第11回サステナブルファイナンス大賞インタビュー⑮サステナビリティ・サポート賞:自動車リサイクル促進センター(JARC) 「ESG投資で循環型社会実現に貢献。エンゲージメントも」(RIEF)
2026-03-29 23:51:43
(写真は㊧からJARC資金管理センター企画課長の柏歴氏、同常務理事の小宮健一氏、同企画課の廣瀬悠氏)
第11回サステナブルファイナンス大賞のサステナビリティ・サポート賞に、積極的なESG投資に取り組む自動車リサイクル促進センター(JARC=ジャルク)が選ばれました。廃自動車のリサイクルのために自動車ユーザーから預かった資金を通じてESG運用を心掛け、循環型社会の実現に貢献する姿勢が評価されました。JARC常務理事(CFO)の小宮健一氏に聞きました。
――まず、自動車のリサイクルの仕組みと、JARCが果たしている役割について教えてください。
小宮氏 : 日本の自動車のリサイクルは、自動車ユーザーがリサイクル料金を前払いし、その資金を使って事業者が廃棄物の適正処理を行い、金属などの有用な資源のリサイクルを促進する仕組みになっています。その仕組みの中で、ユーザーが支払ったリサイクル料金と車両の情報が情報システムに登録されるとともに、廃車後はリサイクルのプロセスについてもシステムに登録されます。つまり、資金管理とリサイクルの情報が一元管理され、それを担っているのがJARCです。国や自動車業界によって、精密に制度設計された仕組みといえます。
――自動車リサイクル制度はいつごろ始まったのですか。また、背景にはどのようなことがあったのでしょうか。
小宮氏 : 自動車リサイクル法が施行された2005年1月から、現在の制度が始まりました。施行前には、金属などの素材や部品をリサイクルした後に残るシュレッダーダストを処理するための埋立処分場の逼迫や、約20万台の不法投棄や野積みなどが社会問題化していました。自動車リサイクル制度がスタートしたことで、不法投棄や不適正保管は5000台ほどに減らすことができました。JARCは2000年11月に設立され、その後、自動車リサイクル法に基づく資金管理法人に指定されています。現在、約50人体制で自動車リサイクルの促進のため、リサイクル料金やリサイクル情報の管理などを担っています。
――自動車ユーザーから預かったリサイクル料金の資金を、ESG債に投資するきっかけや現状を教えてください。

小宮氏 : 2017年にグリーンボンドガイドラインを環境省が公表したことをきっかけに、2018年からESG投資を開始しました。ユーザーから預かっている資金はすべて自動車の適正なリサイクルに活用される資金であり、その性質から、預かった資金を環境改善効果のある事業に投資したいとの考えによるものです。本財団には、有識者による外部委員会があり、運用方針についての助言も得ています。政府が掲げている2050年にカーボンニュートラルの達成を目指す国策にも合致するということで、こちらでも認めていただきました。
ESG債の取得実績ですが、2018年10月に東京都が発行したグリーンボンドを皮切りに、2025年12月末時点の投資累計額は500億円となりました。環境改善効果等が見込める債券を中心に取得しており、500億円の内、グリーンボンドとサステナビリティボンドが82%(412億円)を占めています。
――ESG債にどのくらい投資する計画でしょうか。また、金利で不利な点はあるのでしょうか。
小宮氏 : 運用資産は約9300億円(25年12月)で、50%以上をより安全性の高い国債で運用する方針を持っています。その他は、政府保証債や地方債などとなっています。ESG債の投資目標については、資産全体の約10%程度である1000億円を目標としています。現在、年間で130億円程度のESG債を取得する予定としています。ESG債に投資する年金や機関投資家などは増えていますが、国内でESG債を発行する企業が増えていないので、現状では、この「130億円」が購入の上限に近い状態です。
ESG債の金利は、通常の債券に比べてわずかに低くなっています。しかしながら、その差は0.01%~0.02%程度ですので、投資効率や環境改善への貢献のバランスを考慮してESG債への投資目標を定め、財団内や有識者委員会の理解も得られています。
――JARCは、発行体の企業・自治体等との対話を重ねているようですね。どんな目的があるのでしょうか。
小宮氏 : ESG債を発行した効果を、最大限に高めてもらおうと考え、こちらから訪問する形で発行体へのエンゲージメントを実施し、トップ同士での対話を重ねてESGへの理解を深めています。例えば、自治体が発行する開示レポートに対し、「効果をもう少し具体的に記載してもらいたい」等と要望することや、発行体の生の声を聞いて、われわれの方の知見を高めていくことで、お互いに緊張感を高めることにもなります。

われわれの取組みの周知という観点では、自治体トップとの対談を当方のホームぺージに載せるほか、メディアでも報じてもらっています。自動車ユーザーの中には、あまりに気にすることなく、見積書の中にあるリサイクル料金1万数千円を払っている人もいると思います。そういう人たちにも、自分が払っているリサイクル料金が、「ESG運用」という形で有効活用されているということを理解してほしいという思いがあります。
――今回の受賞をどのように受け止めていますか。
小宮氏 : 公益財団として、金融の専門家の方々と共にこのような賞をいただけたことは大変名誉なことであり、これまでやってきたことを評価していただけたと感じています。ただし、課題もあります。自動車は鉄鋼など金属のほとんどをリサイクルすることができますが、プラスチックやガラスなどについては技術的にもコスト的にも難しく、リサイクルが進んでいません。プラスチックやガラスをいかに資源としてリサイクルするかという課題の中で、熱心に取り組む事業者に一定のインセンティブを与える制度が26年4月から始まります。私たちも制度設計の検討やシステムを用いた情報管理の側面から協力しています。また、普及しつつあるEV車等に使用されているリチウムイオンバッテリーのリサイクルについても、自動車業界全体の課題であると認識しています。
(聞き手は 加藤裕則)

































Research Institute for Environmental Finance