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都知事選 経済か環境か 葛西臨海公園の五輪会場問題(東京)

2014-02-07 15:43:58

東京五輪カヌー会場の建設予定地に選ばれた葛西臨海公園で、貴重な緑が失われることを危惧する佐藤栄記さん=5日、東京都江戸川区で
東京五輪カヌー会場の建設予定地に選ばれた葛西臨海公園で、貴重な緑が失われることを危惧する佐藤栄記さん=5日、東京都江戸川区で
東京五輪カヌー会場の建設予定地に選ばれた葛西臨海公園で、貴重な緑が失われることを危惧する佐藤栄記さん=5日、東京都江戸川区で


東京が二〇二〇年の夏季五輪開催都市に決まった昨年九月。動物ジャーナリストの佐藤栄記さん(51)=東京都中野区=は、ブログに長い文章を載せた。葛西臨海公園(江戸川区)にカヌースラローム競技施設の建設が予定され、広大な緑と豊かな生態系が壊されようとしているが、それでいいのか。驚異的なアクセス数を記録し、情報は一気に拡散。都知事選の争点の一つに浮上させる力になった。 (柏崎智子)


 晴れた空にトンビが舞う公園では、切り株で渡り鳥のジョウビタキが日なたぼっこしていた。「リラックスしていますね」。佐藤さんはビデオカメラ越しに観察し、目を細めた。




 子どものころから生き物が大好きだった。造成が始まったばかりの多摩ニュータウン周辺の野山でゲンゴロウやヤゴを捕まえ、豊島区の自宅で飼った。多摩川や荒川で釣りも楽しんだ。




 番組制作会社へ就職し、TBSテレビのバラエティー「どうぶつ奇想天外!」を担当。高視聴率を獲得した企画の一つに、多摩川の特集がある。一時は生活排水による汚染で「死の川」と呼ばれたが、官民で浄化に取り組んだ。潜ると、目の前でアユが群れを成していた。「人間の意志次第でここまで自然は回復するのか」と感動した。




 制作会社を辞めた後も、葛西臨海公園には自然観察で頻繁に通った。昨年三月、散歩中の男性から「ここ、オリンピックでつぶされるらしい」と聞いた。調べると、公園の西側四分の一、約二十ヘクタールがカヌー会場予定地にされていた。




 また壊すのか-。公園は、高度経済成長時代に東京湾を埋め立て、自然を破壊してきた反省に立って開かれた場所。二十五年かけて木々が生い茂り、二十三区ではほかに見られないほどのたくさんの野鳥や昆虫がすみついた。




 佐藤さんはブログで、公園の素晴らしさと計画のおかしさを、撮りためた写真とともにつづった。しかし、この時はほとんど関心を呼ばなかった。




 大きな反響を巻き起こしたのは、同じ文章を、五輪開催が決定した日に再掲載した時だった。アクセス数は一日で四十一万回、十日後には百三十万回に達した。共感した横浜市の女性は計画見直しを求める署名活動を始めた。十月に佐藤さんも同行し、一万五千人分を都庁へ提出した。




 都知事選では、この問題に取り組んできた日本野鳥の会東京が公開質問状を候補者に送付。ネット公開討論会でも、争点の一つとして取り上げられた。




 「経済最優先か、地球環境を第一にするか」。この問題は各候補者の根本的な考え方を表す争点であると考える佐藤さんは、木を一本切る重みを知る人に知事になってほしいと願う。「祈るような気持ちで投票します」

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014020702000131.html