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WWF『私たちの責任でプラスチック問題を解決する』報告書公表。高所得国と低所得国でプラ消費格差。低所得国は大半未処理で廃棄。国際協力で消費・廃棄の格差是正を要請(RIEF)

2019-03-05 22:34:09

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 環境NGOのWWFは、プラスチック汚染問題解決を目指す報告書を発表した。報告書では、世界のプラスチック消費の約5割を、米国、日本、韓国、EUなどの先進国を中心とする高所得国を占め、低位の中所得国や低所得国の消費割合は2割弱との所得格差が明瞭。ただ低所得国では廃プラの7~8割以上が不適切に処理されているという問題を抱えている。

 

 報告書は「SOLVING PLASTC POLLUTION THROUGH ACCOUNTABILITY(私たちの責任でプラスチック汚染問題を解決する)」と題している。それによると、2000年以降に生産されたプラスチックは、それまでに地球上で生産された、全てのプラスチックを合わせた分と同量で、プラ消費の急拡大が進んでいると指摘。プラスチック生産に使われる石油や天然ガスが、これらの消費全体の4%を占めている。

 

 生産されたプラスチックの75%が、最終的には廃棄される「廃プラ」となる。その総量は世界全体で、年間数百万㌧規模。廃プラの全体の3分の1が、自然界に入り込み、海洋、川や湖などの淡水域、そして陸域の環境を汚染している。

 

 
 生態系への汚染はこれまでに確認されているだけで、野生動物の240種が、体内にプラスチックを取り込んでいるほか、少なくとも270種の生物が、廃棄された漁網などのプラスチックごみに絡まり、その生存にも関わる影響を受けている。

 

 プラスチックの消費と廃棄の責任は、国によって異なる。米、日本、韓国、EUなどの先進国中心の高所得国が、世界のプラスチック消費の約5割を占め、次いで、中所得国のうち、中国やロシア、ブラジル、タイなど上位国が約3分の1を占めている。

 

 これに対して、低位の中所得国(インド、インドネシア等)や低所得国(サブ・サハラアフリカ地域のタンザニア、エチオピア等)の消費の割合は全体の2割弱でしかない。所得格差がプラスチック消費量に明瞭に反映している。ただ、低所得国の場合、排出される廃棄プラスチックの7~8割以上が適切に処理されていない、という課題も同時に抱えている。

 

 WWFは、こうした課題の解決のために、プラスチックの削減や処理で、早急に法的拘束力のある国際合意を実現し、同時に各国が対策の目標と計画を策定する必要がある、としている。廃プラ処理体制を十分に構築できない低所得国に対して、財政的、技術的支援を進めて、使い捨てプラスチックの回収率100%を実現する取り組み強化のほか、プラスチックの価格に人や環境への悪影響を回避するためのコストを反映させる経済手法の採用などを求めている。

 

 WWFは、国際社会、各国政府、産業界、そして個人が、強く責任感を持ち、直ちに変革を起すことが必要として、政府・産業界・市民社会団体・市民のステークホルダーごとの「責任ある行動」を求めている。

 

<各国政府に求めること>

  • 法的拘束力のある国際合意を交わす
  • 各国でのプラスチック削減等の目標を策定する
  • リサイクル推進や持続可能な代替品開発における適切な政策を導入する
  • 産業界や市民社会団体と協働する
  • 環境保全を徹底するごみ処理システム構築へ投資する
  • 関連するすべての業界に対し、効率的な拡大生産者責任(EPR)を導入する
  • 監視と法令遵守をしっかり行うために十分な方策を実施する
  • 各国地域レベルでの活動推進とごみ流出防止へ投資する

 

<プラスチックを取り扱う産業界や企業に求めること>

  • 過剰/不必要なプラスチックを削減する
  • 容器包装にリサイクルされたプラスチックや持続可能な代替プラスチックを使うことを約束する
  • 持続可能なプラスチックへの代替品を開発する
  • 持続可能ではない経済モデルからの脱却に向けて、力を結集する
  • 環境への負荷を抑えたごみ管理システム構築へ投資する
  • 適切な法規制の導入をサポートする

 

<市民社会団体に求めること>

  • 業界や政府と協力する
  • 市民の声を活かすための仕組みを作っていく
  • 国際機関、各国政府、企業に問題解決への取組の責任を課していく

 

<市民に求めること>

  • 政府が透明性と責任を持って対策を進めるよう、協力していく
  • 消費者の立場から、産業界にしっかりとした対策をとるよう働きかける
  • 自身が不必要なプラスチック使用を削減し、リサイクルを推進する

https://www.wwf.or.jp/activities/data/20190305_0cean01.pdf

https://www.wwf.or.jp/activities/data/SOLVING%20PLASTIC%20POLLUTION%20THROUGH%20ACCOUNTABILITY%20ENG%20SINGLES.pdf