HOME12.その他 |OECD、人類使用の「残留薬品(抗生物質、鎮痛剤、抗うつ剤等)」の環境汚染で、淡水生態系や地球の食物連鎖が危機に。温暖化によってさらに悪化の懸念。報告書で指摘(RIEF) |

OECD、人類使用の「残留薬品(抗生物質、鎮痛剤、抗うつ剤等)」の環境汚染で、淡水生態系や地球の食物連鎖が危機に。温暖化によってさらに悪化の懸念。報告書で指摘(RIEF)

2019-11-17 22:10:40

OECD1キャプチャ

 

  経済協力開発機構(OECD)は、人類が使用する大量の抗生物質、鎮痛薬、抗うつ剤等が環境中に放出された残留物が、淡水生態系や地球の食物連鎖に重大な危険をもたらしているとの報告書を発表した。温暖化によって、熱帯地方のマラリアやデング熱等の感染症が各地に広がることで、抗生物質等の処方が増え、その汚染も深刻化するとしている。

 

 報告書は、「Pharmaceutical Residues in Freshwater(淡水中の残留薬物)」。Hannah Leckiey氏らが主執筆者。世界各地で採取した水サンプルに含まれる医薬品残留物の濃度に関するデータと、世界各国の薬剤処方の傾向や水質規制等を比較分析した。

 

 その結果、医療と農業の両分野では、現状のペースで抗生物質が制限なく使用されると、自然環境と人間の健康に悪影響が及ぶ事態は避けられなくなる。現状、動物や人間が薬剤を摂取すると、有効成分の最大90%が自然環境に排出されているという。

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 人為的に破棄される薬剤も多い。米国だけでも毎年、40億個もの処方薬の3分の1が最終的に使用されずに、廃棄されていると推定されている。

 

 淡水中の「残留薬物」の検出状況は、医薬制度が進む先進国に多い。表面水、地下水、水道水、飲料水などで発見される残留薬物量は、米国、英国、スペイン、ドイツで、最高の101~200の水準。日本はその次のレベルの31~100。フランス、イタリア、オーストラリア、中国、インドと同水準。

 

 アフリカ諸国や南米(ブラジルを除く)は、ほとんど残留していない。逆に言うと、それだけ医薬制度が整備されていないことでもある。ロシアも比較的少ないが、同国の場合、シベリア等の未汚染地域が広いためとみられる。

 

残留薬剤が発生するプロセス
残留薬剤が発生するプロセス

 

 家畜に使われる抗生物質の使用量は、今後10年で67%以上増えると予測される。使用量が増えると、抗生物質耐性(AMR)の増加が懸念される。薬剤耐性の感染症はグローバルベースですでに年間70万人の死者を出している。効果的な対策が取られなければ、2050年までに死者の数は年間1000万人に拡大するとされる。

http://www.oecd.org/environment/pharmaceutical-residues-in-freshwater-c936f42d-en.htm

http://www.oecd.org/environment/resources/pharmaceutical-residues-in-freshwater-policy-highlights.pdf