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米原子力規制委、小型モジュール原発(SMR)に初の設計段階での安全認証を付与。SMR実用化に大きな一歩。小型原子炉納入は韓国・斗山重工業(RIEF)

2020-09-29 00:04:09

New scale001キャプチャ

 

  米原子力規制委員会(NRC)はこのほど、ユタ州でニュースケールパワー社(NuScale Power)が開発中の小型モジュール原発(SMR)に対し、設計段階の安全認証を付与した。米NRCがSMRに設計認証を出すのは今回が初めて。同SMRは韓国の斗山重工業が中核部分の小型原子炉やタービンなどの主要機材を12基分納入する。斗山は経営危機が続いてきたが、SMRで一息つく可能性も出てきた。

 

 (写真は、ユタ州で計画されている小型モジュール原発の完成予想図)

 

 今回の設計段階の安全認証を得たSMRは、ユタ州の公営電力システム(UAMPS)の発注で進めている。先進型軽水炉小型原発で、発電量は1基5MWで12基合計60MW。通常の原発の3分の1程度の規模。ニュースケールパワー社は、今回の認証取得に続いて、2021年8月までに、フル・デザイン認証の取得を目指すとしている。順調に進むと、2023年に着工し29年に稼働する計画だ。SMRの開発はエネルギー省(DOE)が4億㌦以上を投じて、2014年から進めている。

 

 米国内では大型の原発は安全対策等で建設・維持費がコストアップしているほか、海外市場ではコストの安いロシアや中国勢による原発に太刀打ちできない状況になっている。そこでDOEは安全性を高め、かつコストも低く抑えられるSMRの開発に力を入れており、米原発産業界もSMRを内外市場での切り札として積極的に推進している。DOEはアイダホ州でも同様のSMRの事業推進を支持している。同州の場合、2029年稼働を見込んでいる。

 

 斗山のSMRは地下に設けた水槽に原子炉全体を沈める構造。その結果、地震などの外部要因で原子炉の冷却機能が失われるリスクが小さいという。また主要部分は工場で事前に製造して現場で組み立てる工法をとる。このため、工期が短く初期費用も引き下げられる利点もある。

 

 ニュースケールパワーは2017年3月にデザイン認証の申請をしていた。これまでに同社は1万2000ページに及ぶ申請書を提出、さらに200万ページ強に達する追加文書をNRCの監査のために作成、提出してきた。NRCの審査は約42カ月で完了したことになる。トランプ政権のSMR推進方針がNRCの「早期許可」につながったとみられている。

 

 斗山重工業の受注金額は13億㌦(約1400億円)規模とされる。同社は気候変動対策の進展で、石炭火力発電事業がグローバルに低迷していることと、新型コロナウイルス感染の拡大の影響も受けて、経営不振に陥っている。http://rief-jp.org/ct5/102444

 

 今月初めには、再建策として、グループ会長の朴廷原(パク・チョンウォン)らの株主が、5800億ウォン規模のグループの斗山フューエルセル株を無償で斗山重工業に贈与したほか、株主割り当ての有償増資等で得た資金を、借金の返済等に充当するなどを進めている。今回の米市場でのSMR事業の進行可能性は、同社にとっても再建への追い風になる期待がある。

 

 斗山は原発事業で40年の歴史を持つ。これまで韓国内で5カ所の発電所で24基の原発建設に関わってきた。2009年にはアラブ首長国連邦(UAE)の原発新設計画を巡り、日米連合などを制して韓国官民共同での受注に成功している。韓国はSMR開発では官民共同で「SMART」輸出プロジェクトを進行中だ。

 

https://www.energy.gov/ne/articles/nrc-approves-first-us-small-modular-reactor-design