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自民党総裁選候補の一人、高市早苗氏。東京電力福島第一原発の汚染処理水放出に反対を表明する背景(RIEF)

2021-09-09 17:40:57

takaichiキャプチャ

 

 自民党総裁選に出馬表明した高市早苗前総務相は、原発問題に絡み、東京電力福島第一原発からの汚染処理水の海洋放出問題で、「風評被害を広げる可能性がある。そのリスクがある限り放出の決断はしない」と発言した。同氏は原発自体については、小型モジュール原子炉(SMR)や核融合炉の開発を視野に入れており、「脱原発派」とは一線を画すが、汚染処理水放出反対では断固とした姿勢のようだ。

 

 菅政権では、汚染処理水の保管タンクが22年夏には満杯になる見通しとして、4月に汚染水の海洋放出を決定している。これに対し、高市氏は決定の直後に、自らのブログで「福島第一原子力発電所『処理水』の海洋放出決定の手順に疑問」と題した発言をしている。https://www.sanae.gr.jp/column_detail1307.html

 

 それによると、同氏は「政府や東京電力が『処理水の海洋放出によって新たに発生する風評被害』への対応を約束したとしても、『現在も残っている風評被害』を皆無にしてからでなくては、水産業や農業や食品加工業などに携わっておられる方々の信頼は得られないと思います」と指摘。

 

 さらに、政府が2015年8月に福島県魚連宛てに出した文書で、汚染処理水のリスク低減を国内外に積極的に広報・情報発信することを約束したうえで、トリチウム水については「検証結果は、まず、漁業関係者を含む関係者への丁寧な説明等必要な取組を行うこととしており、こうしたプロセスや関係者の理解なしには、いかなる処分も行いません」と約束している点を紹介。

 

 その文書の差出人が、「経済産業大臣臨時代理 国務大臣 高市早苗」になっていることを明らかにした。これは、当時の経産相の宮澤洋一氏が海外出張中だったため、総務相だった高市氏が臨時代理として名義になったものだった。

 

 その事実をテレビの報道番組で初めて知った高市氏が、文書を取り寄せ、確認したうえで、国が約束した内外への情報発信は「現在でも日本産食品の輸入規制を続けている国と地域が15も残っており、政府が十分な対応を済ませたとは言えない」と指摘。

 

 またトリチウム汚染処理水の放出については「『関係者の理解』という約束を果たす前に、政府は海洋放出を決定した。仮に『実際に放出を開始する2年後までに、関係者の理解を得られれば良いだろう』と考えているのならば、あまりにも不誠実だ」と批判している。

 

 高市氏は経産相が出張中に、臨時代理の閣僚が代行して署名することや、大臣が内容を知らない案件でも大臣名で発出されることについては、「総務省でも、最終決裁者が局長であり大臣への説明も為されない書類が大臣名で発出されていることは少なからずあるので、業務上の事情は理解できる」とした。

 

 そのうえで、「少なくとも官庁が閣僚の氏名を使って文書で約束した内容は、絶対に守っていただかなくては困る」と経産省の対応に苦言を呈している。さらに、当該の文書が総務相名で発出されたのは、経産相が海外出張から帰国した日だったことも指摘。経産省が意図的に、臨時代理の総務相名を「そっと」活用した可能性に言及した形だ。

 

https://www.sanae.gr.jp/column_detail1307.html