日立とGEの原子力合弁企業の「GE日立ユークリア・エナジー(GEH)」、初のSMRをカナダ電力会社に供給。2028年にも操業見込む(RIEF)
2021-12-03 17:25:22
日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の原子力合弁会社、GE日立ニュークリア・エナジー(GEH)は2日、カナダの電力会社、カナダ・オンタリオ・パワー・ジェネレーション社(OPG)が進める「小型モジュール炉(SMR)」の技術パートナーに選ばれた、と発表した。OPGがオンタリオ州で進めるSMR建設事業にGEHの原子炉を供給する。日本関連企業のSMR参画は初めて。
GEHが開発するSMRは、BWRX-300と呼ばれる。発電出力300MWeで、一般家庭30万世帯分の消費電力を供給できる。原子炉自体は従来型の軽水炉で、燃料もBWR燃料を投じる。
特徴は、原発の安全性に欠かせない原子炉の冷却システムでの工夫だ。自然循環による崩壊熱除去システムを取り入れ、電源や人的操作なしでも7日間の冷却が可能という。また冷却材喪失事故を防ぐ隔離弁一体型原子炉で、安全性を高めているという。
既存の原発では原子炉に異常が起きた場合、外部から取り入れる冷却水で冷やす方式だ。だが、東京電力福島第一原発事故時に起きたように、外部電源や外部からの冷却水が途絶えるリスクがある。
GEHの受注額は公表されていない。早ければ、2022年内に建設許可を申請し、最大4基を建設し、2028年に第1号機の完成を見込んでいる。
発注元となるOPGは、既存原発のあるダーリントン地区に新たにSMRを建設する許可をカナダ原子力当局から得ている。現在、同国内でSMRの建設許可が出されているのは同社だけ。OPGはGEHと協働し、SMRのエンジニアリング、デザイン、計画、準備、許認可等の一連のプロセスを推進する。
SMRは既存の原発が100万kW超と大型なのに比べ、3分のあるいは4分の1と小さい。サイズだけでなく、原子炉を冷却する方式として、BWRX-300のように自然換気や、原子炉全体をプールに沈める等の方式等によって、リスクを軽減できるほか、建設コストも安い。
既存の原発は、事故リスクだけでなく、建設費の高騰で経済性を低下させている。SMRは、建設から操業、解体と続くライフサイクルのコストが安くて済む。このため、各国で開発競争が進んでいる。GEHは米国でも米原子力規制委員会(NRC)に対してBWRX-300の設計承認の手続きをとっている。
https://rief-jp.org/ct10/98871
GEHは2017年6月にGEが6、日立が4の割合で共同出資して設立された。原子炉および原子炉関連のサービスを提供する世界有数の企業。ノースカロライナ州ウィルミントンに拠点を置く。日本法人の日立GEニュークリア・エナジー社は日立が8、GEが2の割合。
https://www.hitachi-hgne.co.jp/news/2021/2021news09.html
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/pdf/023_09_00.pdf