一般社団法人環境金融研究機構 | Research Institute for Environmental Finance: RIEF

 　ベルギーの中央部にあるティアンジュ原発2号機が1日未明に40年の操業期限を守って稼働を終了した。同国では昨年9月にも1基の稼働を終えており、残る原発は5基。ティアンジュ原発については、ベルギー政府が今冬場のエネルギー確保のため、運営会社に延長を要請したが、会社側は原発の管理上の理由で、予定通りの稼働終了を選択した。同国以内では日本と同様に、稼働期間の20年延長を求める声もあるが、老朽原発は損傷個所等が増えるため、操業延長よりも、新規の第四世代原発の開発・導入を目指す声が高まっている。

　（写真は、2月1日未明に閉鎖されたベルギーのティアンジュ原発2号機）

　ティアンジュ原発は、ベルギーに2つある原発サイトの一つ。中部のリエージュ州ユイに立地する。加圧水型の1～3号機の3基の原発がある。このうち1号機は1975年の稼働で設計寿命は30年だったが、10年延長後、さらに2025年までの延長が決められている。

　2号機は1982年10月の稼働で、途中の一時停止期間を除いて、ちょうど31日が40年稼働の最終日となった。2号機の操業終了については、ロシアのウクライナ侵攻で冬場のエネルギー供給が危うくなっていることから、ベルギー政府が操業会社のエレクトラベル（仏エネルギー大手Engieの子会社）に対して、今冬の暖房需要期が終わる3月まで操業を延長するよう要請していた。

　これに対してエレクトラベルは、「同基の稼働終了は、『2003年ベルギー原子力段階的停止法』に基づき決められているもので、延長のための準備作業はできない」として政府の要請を断った。同国ではこの「2003年法」で2025年までに脱原発を実現する目標が定められている。ただ、昨年3月、現政権はティアンジュ原発3号機と、ドイル原発4号機を脱炭素エネルギー源確保のため、2035年まで延長することを決めている。

　ベルギーは脱原発の長期目標を設定する一方で、脱炭素目標の実現のため、原発利用の延長論が政治を中心に高まっている。そうした影響を受けて、昨年の2基の稼働延長決定につながった。その一方で、「2003年法」は依然、有効なことから、2025年脱原発目標も残っているという矛盾する政策に陥っている。

　今回のティアンジュ原発2号機の場合、政府の短期的延長要請の一方で、2012年9月に同原発で外部コンクリートの劣化が見つかり、追加調査の結果、無数のひび割れが生じていたことも発覚した経緯も大きい。見つかったひび割れは、最大6cmのものもあった。修理のため2号機は2年にわたり停止した経緯がある。同原発はドイツ国境に近いことから、ドイツの住民からも閉鎖要請が高まっていた。https://rief-jp.org/ct13/57132

　原発運営企業のエレクトラベルが同2号機に対する政府の稼働延長要請を拒否したのは、老朽原発の設備や部品等の劣化を隠し切れない、との判断もあったとみられる。同国では、昨年9月にドイル3号機が閉鎖されており、ティアンジュ2号機は2基目の原発閉鎖となる。https://rief-jp.org/ct10/15202

　現政権等には、引き続き、原発稼働期間の延長論者もいるが、社会自由政党 DéFIのように、原発の近代化として第四世代原発の開発促進と再エネ重視を求める政党も出てきている。同党のFrançois De Smet氏は「残る原発のうちドイル4号機とティアンジュ3号機の操業期間は延長すべきだが、結局のところ、安全性が高く、使用済み核廃棄物の排出量が少ない第四世代原発への投資を増やし、開発を実現しないと、やがて原発はなくなる」と指摘している。

　同国の残る5基の原発のうち、2025年にドイル1と2、それにティアンジュ1号機の3基が操業を終了する予定で、同国の原発は35年までの延長を決めた2基だけになる。ベルギーの原発選別の試みからの教訓は、一律の操業期間の延長ではなく、老朽化で損傷の激しい原発は、当初の40年操業で停止するものの、運転効率のいい原発は操業延長する「見極め」を重視している点だ。さらに、新規原発については「第四世代」に照準を合わせている。

https://www.euractiv.com/section/politics/news/belgium-to-shut-down-second-nuclear-reactor/

https://www.world-nuclear-news.org/Articles/First-Belgian-power-reactor-shut-down