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福島原発廃炉、最難関は2020年以降 (WSJ)  溶融核燃料の除去に踏み出せるか 手法いまだ定まらず

2014-03-10 14:31:21

立ち入り禁止区域から望む福島第1原発
立ち入り禁止区域から望む福島第1原発
立ち入り禁止区域から望む福島第1原発


【東京】福島第1原子力発電所の事故から3年たった今、運営会社の東京電力は溶融した核燃料の除去という最大の問題に取り組めるまでにはまだ6年かかると見ている。

大地震と津波が同原発を襲い、6基の原子炉のうち3基でメルトダウンと爆発が起き、コンクリートと金属のがれきの山となり、チェルノブイリ原発事故以来最悪の原発事故になってから今月11日で3年が経過する。

しかし、東電の最新の評価によると、三つの原子炉からの溶融燃料とがれきの除去を開始できるのは20年ごろと見られている。現時点で同社は、この取り組みをどのように始めるかもはっきりしていない。

これらの原子炉の格納容器は漏れを起こしており、このことは格納容器を水で満たせないことを意味している。放射性物質の拡散を防ぐための水がなければ、現在の方法では燃料の除去は不可能だ。

東電は遠隔操作のロボットを使ってこの漏れをふさぎたいと考えている。第1原発プロジェクトチーム燃料除去戦略担当の村野兼司ゼネラルマネジャーは、これがうまくいかなければ、同社は水なしの状況で燃料を取り出すための新しい方法を考えなければならないと述べた。

しかし、メルトダウンした原子炉のコア部分に達する前に、東電は汚染水の増加に対処しなければならない。

東電と政府は、まだ効果のほどは明らかでない凍土隔壁を使って地下水が原発敷地地下に入り込むのを防ごうとしている。同社はまた、原子炉近くに置かれている放射能汚染水の量が増大するリスクを低減させようと、廃炉システムの完了を急いでいる。

事故からの3年間は、数十年の期間と少なくとも500億ドル(5兆2000億円)の費用がかかると見られる廃炉計画の第1段階であるがれきの除去に焦点が当てられた。最近は計画の第2段階―溶融した核燃料を含む最も危険な物質の除去―に移ってきた。最終段階では、原子炉が取り壊され、土壌の除染が行われる。

原子力規制委員会の田中俊一委員長は3月5日の記者会見で、「非常に深刻な事故が起こらないとは言えないが、そういう状況は脱したと思う」と述べたが、他にももっと問題があることを理解してい欲しいと指摘した。 同原発では通常、毎日3000人以上が作業に当たっている。燃料棒が溶融し、1時間で放射能の許容限度量の5年分を浴びる恐れのある原子炉には誰も近づけない。

発電所の敷地内を埋め尽くしていたコンクリートや金属のがれきは、極めて危険な個所を除いて除去された。東電は無傷の燃料の取り出しを始めたが、これが完了するまでには4、5年かかる。

事故発生当時運転停止状態にあり、メルトダウンも起こしていない4号機のプールからの使用済み燃料の除去が行われている。3月3日限現在で4号機プールから1533本の燃料棒を取り出し、敷地内の安定した大規模プールに移動させた。

一部の専門家は、東電は現在のロードマップを放棄して、1986年のチェルノブイリ原発事故の時のように、最大の打撃を受けた三つの原子炉をコンクリートの壁と屋根で覆うべきだとしている。東京大学の井野博満名誉教授は、東電の計画について非現実的だとし、漏れをふさぐことを考えていおらず、漏れをふさぐのにどのくらい時間がかかるかはっきりしない、と指摘。井野氏は、溶融した燃料は空気で冷却でき、コンクリートで覆うことが可能だと提案している。

ただ、東電の村野氏はこの考えに懐疑的だ。溶融燃料とがれきの状況は誰も分かず、これを放置して安全なのかどうか分からないので、除去しなければならない、と述べている。

日本は既に、汚染水対策で実験的な技術を試している。汚染水はこの3年間で最も好ましくないサプライズだ。

メルトダウンを起こした原子炉の下を地下水が通ることで、高い濃度の汚染水が毎日約400トン生じている。オリンピック競泳用のプールが6日ごとに一つずつできている勘定だ。今のところ東電はこの水から放射性セシウムを取り除き、その他の放射性物質はそのままに、原子炉近くのタンクにためている。今では約1000本のタンクに約34万トンの水がためられている。

これをいつまでも続けることはできず、東電は多核種除去設備(ALPS)を使っている。これはトリチウム以外のほとんど全ての放射性物質を除去できる。しかし、福島でこれが完全稼働しているわけではない。同社は最終的には全ての汚染水をALPSで浄化し、トリチウムの値が十分に低ければ、国際基準に従って、浄化水を太平洋に放出したい考えだ。同社はまた、凍土隔壁も地下水の流入を止められると期待している。

 

http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702303565804579429942037148848.html?mod=djem_Japandaily_t