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ロシアで気候対策を求める「学校ストライキ」を「一人」で実践したマキシャンさん。ロシアで反戦運動に行動を広げ、当局から市民権はく奪の圧力。妻は逮捕。だが「圧力に屈しない」と(RIEF)

2022-06-10 23:49:00

Machinchanキャプチャ

 

 スウェーデンのグレタ・ツゥーンベリさんが始めた気候対策を求める「学校ストライキ」運動に共鳴して、ロシアでたった一人でストライキを敢行した若者が、ロシアのウクライナ侵攻にも反対したことで、結婚したばかりの妻は逮捕され、自身は「市民権はく奪」のリスクに直面している。

 

 プーチン政権から目を付けられていたのは、アルシャク・マキシャン(Arshak Makichyan)さん。マキシャンさんは、2018年10月にグレタさんの温暖化行動を知り、翌年3月から、自らもロシアの人々に、気候対策の重要性をアピールしたいと、モスクワのプーシキン公園で気候対策を求める抗議行動を始めた。https://rief-jp.org/ct8/90178

 

 ロシアでは許可されたデモ以外は、2人以上が連れ立って抗議の意思表示をすることは禁じられている。したがって、マキシャンさんは、「一人であれば禁止の対象にならない」との理屈で、ソロ・デモを実施した。しかし、40週以上の「一人抗議行動」を展開した後、同年12月に公園でプラカードを掲げようとした際、無許可のデモとして警察に逮捕された。6日間の拘留となった。https://rief-jp.org/ct12/97429

 

花束を抱えた妻のさんと、「戦争批判の文字を書いたシャツを着た後ろ姿がマキシャンさん㊨
㊧は花束を抱えた妻のオレイニコバさん、「戦争批判の文字を書いたシャツを着た後ろ姿がマキシャンさん㊨

 

 マキシャンさんは、ロシアがウクライナ侵攻に踏み切った2月24日。戦争反対の反戦活動家に転じた。同日、彼はロシアでの環境活動仲間でもあるポリーナ・オレイニコバ(Polina Oleinikova)さんと結婚した。「政治的理由で」とマキシャンさんはメディアに説明している。夫婦の場合、どちらかが当局に逮捕され刑務所に送られても、面会が可能なためだという。

 

 マキシャンさんは「もし、ロシアで活動家になるならば、刑務所に入る覚悟が必要だ。われわれは結婚を祝う間もなかった。なぜなら、直ちに反戦のデモに向かったからだ」と明かす。その後、彼らは身の危険を感じて、ドイツに移動したりしていたが、当局はマキシャンさんが不法にロシア国民になったとして、市民権はく奪を通告してきたという。

 

 マキシャンさんの生まれは旧ソ連を構成した国の一つのアルメニア。1990年半ば、1歳の時に家族とともにロシアに移住した。その当時は、旧ソ連圏からロシアに移住した人は、居住権を与えられ、その後、彼は2004年にロシアの市民権を得た。

 

 マキシャンさんがメディアに示したロシア当局の命令書によると、モスクワ東部のShatura市の捜査当局によるもので、移民管理局は彼のファイルを喪失したため、彼の市民権を証明するものがない、と記されている。加えて、2004年に市民権を得た際に提出した書類が虚偽のもので、申請書に記された住所に住んでいなかったと指摘している。

 

移動先の独ベルリンで、仲間とともに反戦抗議活動を展開するマキシャンさん(中)
移動先の独ベルリンで、仲間とともに反戦抗議活動を展開するマキシャンさん(中)

 

 マキシャンさんの代理人として法廷に出席した弁護士のOlga Podoplelovaさんは「これらの指摘は全くおかしい。非常識なものだ。マキシャンさんへの批判は根拠のないものだ。政治的な意図によるものと思われる」と指摘している。Podoplelovaさんはロシアの人権プロジェクト「The First Department」に所属している。

 

 マキシャンさんが市民権はく奪の通知を受け取った次の日、妻のオレイニコバさんが逮捕され、拘留された。反戦活動の準備をしていたとの容疑だ。マキシャンさんの次の裁判の日程は今月27日。ドイツでのビザは今月末まで。ロシアに戻ると、逮捕されるリスクが高い。

 

 そうした困難な環境下だが、マキシャンさんは戦争反対のキャンペーンと、気候対策のキャンペーンを継続している。マキシャンさんは特にEUに対して、ロシアからのすべての化石燃料輸入を即座に停止するよう強く求める。EUが発動した経済制裁によるロシアンさん石炭、石油等の輸入停止は、天然ガスを十分に含んでおらず、「制裁措置としては極めて不十分」だからだ。

 

 「ウクライナ侵攻が始まって以来、EUはロシアに対して化石燃料の輸入代金として約600億ユーロ(約8兆4000億円)を払っている。ロシアの市民社会が反対しているのに、そうやって何年もロシアの現在の恐るべき体制を支え、支え続けている」とEUの手ぬるい対応を批判している。

 

 28歳になった音楽家でもあるマキシャンさんは、自分にかけられた嫌疑は、他の活動家や、反戦、気候対策を求める人々への「見せしめ」であり、「脅し」であると見抜いている。「この困難な日々に、(プーチン政権に対して)黙らない多くのロシア人がいることを嬉しく思う」と、今は、たった一人の抗議行動ではないことを実感している。

 

https://twitter.com/MakichyanA/status/1533711428930224130

https://www.climatechangenews.com/2022/06/09/politically-motivated-russian-authorities-seek-to-remove-climate-activists-citizenship/