三井住友海上火災保険。国内でのCCS事業者専用保険を販売開始。対象は「CCS法」の対象になる国内4事業計画の見通し。ただ、いずれも事業建設等の計画の具体化は未定(RIEF)
2024-11-20 23:27:38
三井住友海上火災保険は19日、化石燃料の使用を前提にしながら、排出されたCO2を回収・貯留することで実質ネットゼロを実現できるとするCCS事業の事業者を対象として、同事業から生じるリスクを包括的に補償する「CCS事業者専用保険」を販売すると発表した。CCSについては今年5月に「二酸化炭素の貯留事業に関する法律(CCS法)」が成立しており、同社では、今後、CCSの事業化に向けた動きが活発化してくると判断、専用保険の開発・販売に乗り出したとしている。
CCS事業については、CCS法の実施対象として、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が2030年までの事業開始を目指すCCS事業9案件をリストアップしている。同リストでは国内5事業、海外4事業としている。三井住友海上火災の新商品は、「海底下へのCO2の圧入・貯留にかかるリスク」を補償の対象にするとしており、国内5事業のうち、陸地の地下の帯水層への貯留を目指す北海道・苫小牧事業を除く4事業が対象になるとみられる。
それらは▼東北地方の青森、秋田、山形の3県の日本海側沖合を対象とする「日本海側東北地方CCS事業」(伊藤忠商事、日本製鉄、太平洋セメント、三菱重工業、伊藤忠石油開発、INPEX、大成建設)▼新潟県沖合の「東新潟地域CCS事業」(石油資源開発、東北電力、三菱ガス化学、北越コーポレーション、野村総合研究所)▼茨城・千葉県沖合「首都圏CCS事業」(INPEX、日本製鉄、関東天然瓦斯開発)▼九州の福岡・長崎・熊本・鹿児島各県の沖合の「九州北部沖~西部沖CCS事業」(ENEOS、JX石油開発、電源開発)。
いずれの事業とも、火力発電所や製鉄所、化学品などの製造工程などから排出されるCO2を回収し、船舶やパイプラインを使って海域に搬送、海面下の帯水層に貯留する計画としている。ただ、現状はこれらの事業がいつ開始されるのかや完了時期等は示されおらず、保険契約に結び付くかはまだ定かでない。
同社によるCCS事業者保険の補償対象は、海底下へのCO2の圧入・貯留や貯留用井戸の掘削にかかるリスクのうち、CCS設備の建設段階と操業段階で生じる可能性のある①事業者が所有または管理する設備で生じた物的損傷および事業停止に伴う利益損害②事業者が所有または管理する設備に起因して生じた第三者の物的損害または身体障害に対する賠償責任③CO2貯留用の井戸の制御費用、再掘削費用、井戸の改修にかかる費用――としている。
貯留層からCO2が漏出した場合の環境価値喪失に対する補償等は含めず、別途、これらのリスクに対応した専用保険の拡充を検討していくとしている。同社は「CCS事業にかかるリスクを包括的に補償することで、CCSの事業化や水素・アンモニア等の 次世代エネルギーの社会実装を支援することを目指して本商品を開発した」とコメントしている。
同社は2022年11月に、商用化に向け実証実験の進むCCS事業の損害賠償リスクを対象とした「CCS事業者向け環境汚染賠償責任保険」も先行的に販売している。
https://www.ms-ins.com/news/fy2024/pdf/1119_1.pdf
https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230613003/20230613003.html