一般社団法人環境金融研究機構 | Research Institute for Environmental Finance: RIEF

　機関投資家はこうしたICAPの段階的な期待値を、いくつかの形で活用できるとしている。たとえば、設定したICAPに基づき、投資家の現状の気候リスクとオポチュニティを管理するためのアプローチを評価できる。ICAP計画を公表することで、ステークホルダー等の理解を得る。ICAPの要素を、投資家自体の気候変動戦略や情報開示に盛り込む。ステークホルダーに対して、投資家の現状の活動と、将来の計画とを説明する、等だ。

　投資家は、ICAPを設定し、公表することで、現在、自分たちが期待値のどの段階にいるかを自己評価して、自らのアプローチを強化するとともに、取り組みをさらに進展させるための気候関連行動を見出すこと等にも活用できる、としている。

　投資家がICAPを踏まえて取り組むイニシアティブには、 ネット・ゼロ・アセット・マネジャーズ・イニシアティブ、パリ協定と整合する投資イニシアティブ、Science Based Targetsイニシアティブ、ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス等が含まれる。

　フレームワークを提供するThe Investor Agendaは、最低でも全主要機関投資家の50%がICAPを採択することを目指している。採択した投資家は、期待値の各段階の要素を翌年の自らの計画、報告、および戦略に盛り込む行動が期待される。全主要機関投資家が今後5年間以内にネットゼロ目標のICAPを掲げることを目指すとしている。

　AIGCCのエグゼクティブディレクターでThe Investor Agendaのグローバル運営委メンバーのレベッカ・ミクラ・ライト氏は「ICAPの期待値の各段階とガイダンスのフレームワークは、機関投資家が期待値のどの段階でも、達成すべきネットゼロの最終目的につながる明確な経路を示している。アジアの投資家はICAPのフレームワークを活用することで、ネットゼロへの移行によって創出される膨大な投資機会をとらえる上で、優位に立てるだろう」と指摘している。

　CDPのCEOでThe Investor Agendaグローバル運営委メンバーのポール・シンプソン氏は「ICAPの期待値の各段階とガイダンスのフレームワークは将来を見据えたもの。2050年までのネットゼロ目標を備えた投資ポートフォリオに整合する明確な情報を資本市場に与える。この新たなツールが世界中の投資家に利用可能となったことを評価している」と述べている。