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フランス国鉄(SNCF)、パリと南仏ニースを結ぶ夜間列車を復活。列車で2時間半以内の国内航空便禁止法案成立を間近に控え、鉄道ダイヤ整備進む。ドイツ等でも鉄道シフト明確に(RIEF)

2021-05-21 22:45:35

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  フランスがパリと南仏の観光都市、ニースを結ぶ夜間列車を再登場させた。仏政府は気候変動対策として、鉄道で2時間半で移動する区間の近距離国内航空便の廃止を決め、現在法案を審議している。夜間列車の復活は、航空便に代わる移動手段整備の一環。仏政府は寝台列車を含む夜間列車の整備のため1億ユーロ(約133億円)を投資するとしている。わが国も、気候変動対策と環境負荷削減のため国内航空便の削減と、夜間列車の復活を検討してもらいたい。

 

 パリ―ニースの距離は約690km。最も速い列車だと2時間11分 で到着する。平均所要時間は6時間20分という。 議会で審議中の「気候変動対策・レジリエンス強化法案」が成立すると、同区間の国内航空便も最速の鉄道時間を適用すると廃止対象になるとみられる。法案はすでに下院で可決、上院での修正審議に入っているが、成立は確実視されている。

 

 現在、仏国内でのパリ発の夜間列車は南アルプスのブリアンソン行きと、南西部のロデズ行きの2便だけ。欧州では、フランスだけでなく、ドイツやオーストリア、スイス等が今年末に寝台列車を再登場させて、「欧州夜間鉄道網」を整備する方針を明らかにしている。

 

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 一足早く、復活したパリーニース間の夜間列車の料金は片道19ユーロ(約2500円)と29ユーロ(約3800円)。同じ区間の国内航空便に比べて安いうえに、温室効果ガスの排出量は6分の1にとどまる。たとえば、パリとスイスのチューリッヒ間の往復航空便の場合、一人当たりの温室効果ガス排出量は300kg。鉄道だと48kgで済む。

 

 フランスの運輸相のJean-Baptiste Djebbari氏は、パリと640km離れた南仏のタルブとの間で、2030年までに一日12本の夜間列車を復活させる計画を明らかにしている。今年末にその第一号が走行する予定だ。夜間鉄道網の整備は、気候変動対策とともに、環境負荷を減少させたエコフレンドリーな移動手段を国民に提供することとなる。

 

 政府が夜間列車整備で投じる1億ユーロの資金は、インフラ網の再整備のほか、鉄道設備のメインテナンスの環境的な配慮、騒音対策、駅へのアクセス便の確保、道路との交差部分での安全性確保等に充当するとしている。市民団体等は夜間鉄道便の増発を歓迎している。夜間鉄道は既存の鉄道網を利用できることから、土地の人工化は限定的である点も評価されている。

 

 フランス以外の国でも夜間列車の復活整備が進み、深夜に到着した後の接続列車の接続強化も進められている。昨年12月には、オーストリア(ÖBB)とドイツ(Deutsche Bahn)、スイスの(CFF)とフランスのSNCFは、パリーウィーン、チューリッヒ―ローマ、パリ―ベルリン、ベルリン―ブラッセルの各路線での夜間鉄道と、接続網の整備を進めるとしている。

 

 夜間列車の運行で先行するオーストリアの鉄道会社ÖBBによると、同社の場合、2019年に年間150万人の乗客が夜間列車を利用した。2020年は新型コロナウイルス感染の影響で減少したが、19年までの利用者数は毎年10%増で推移している。特に若者の利用が増えているという。

 

 温室効果ガス排出量の多い航空便より鉄道を利用する動きは、スウェーデンの環境活動家のグレタ・ツゥンベリーさんが実践しており、若者たちを中心に広がっている。

 

https://www.france24.com/en/france/20210504-france-to-vote-through-new-law-aimed-at-tackling-climate-change