医療・医薬品機器等のニプロ、初のソーシャル転換社債(ソーシャルCB)発行へ。発行額300億円。人工透析用の人工腎臓機器製造投資に充当。欧州等海外投資家向けに販売(RIEF)
2021-09-12 22:16:43
人工透析機器や注射剤等の医療・医薬品機器等を製造販売するニプロ(大阪市)は、株式に転換できるソーシャル転換社債(CB)型新株予約権付社債を発行する。「ソーシャルCB」の発行はわが国では初めてとなる。発行額は300億円。調達資金は全額、人工透析に活用する同社の人工腎臓製品「ダイアライザ」の生産拡大の設備投資資金に充当する。欧州、アジア等海外投資家向けに販売する。
ソーシャルCBは満期2026年9月25日。CBなので投資家は、株式市場の動向をみながら株式転換を選択できるメリットがある。ただCBの金利はゼロクーポンで、投資家は満期まで保有すると、額面金額の100%で償還を受ける。
一方、発行体のニプロは、金利ゼロなので金利コストを最小化できるほか、株式への転換の可能性はあるが、転換価額はあらかじめ固定した水準に設定し、発行価格(募集価格)は発行時の投資家の需要等を踏まえて決定するため、払込金額の最大化が見込めるという。
転換価格は時価を上回る設定とすることで、1株当たり利益等の希薄化を極力抑制して、既存株主にも配慮する仕組みとしている。さらに同CBには120%コールオプション条項が付与されており、株価が一定期間にわたり転換価額の一定割合を超えて上昇した場合は、ニプロの選択で額面金額での繰上償還ができる。これにより、CBの株式への転換を促進し、将来の自己資本増強に資する期待もあるとしている。
主な資金使途先となるダイアライザ製造ラインの増設については、内外工場で投資する。また、再生医療等製品製造施設の培養設備更新等も使途最小とする。資金使途のレポーティングに加えて、ダイアライザの製造・販売状況の情報を開示するインパクトレポーティングも発行する。
主幹事はみずほフィナンシャル・グループのMizuho International plc が単独でブックランナー兼務で引き受ける。CBとしてのソーシャル性については、格付投資情報センター(RI&I)が国際資本市場協会(ICMA)のソーシャルボンド原則(SBP)への適合を付与した。グリーン性についてはCBのボンドに対してで、転換した場合の株には適用されない。
ニプロは昨年9月に、劣後特約付きのソーシャル・ハイブリッドボンドを500億円発行したほか、今年7月には、仏クレディ・アグリコルCIB(CACIB)との間で150億円のサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)契約を結んでいる。いずれも、主要な資金調達使途としてダイアライザの製造・販売等が組み込まれている。