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広島県尾道市、人工干潟を利用してCO2吸収源「ブルーカーボン事業」。年間128㌧の吸収源を見込み、認可申請中(RIEF)

2022-10-26 18:27:54

造成された人工干潟

 

 各紙の報道によると、広島県尾道市と同市の浦島漁業協同組合は連携し、市内で造成した人工干潟を利用してCO2吸収を事業化する「ブルーカーボン事業」を展開する。事業から創出されるCO2吸収源のクレジットについては、「Jブルークレジット」として販売するという。Jブルークレジットは、東京湾のアマモ場再 ⽣事業等、現在、全国で5つのプロジェクトが認定されており、尾道の事業も12月にも認可を受ける予定。

 

 日本経済新聞等が報道した。尾道市らが「ブルークレジット」創出の場とするのは、国土交通省中国地方整備局が尾道糸崎港で実施している整備事業から大量に出る土砂を有効活用し、干潟・藻場を再生している事業だ。これまで1984~2020年度中に、4カ所で合計約75ヘクタールの人工干潟を造成した。干潟の創出で、その沖合には藻場が形成されるようになっている。

 

 2002年までの調査結果では、造成した人工干潟のうち、海老地区の干潟(16ヘクタール)で出現した海洋生物の数は118、貴重種は17が確認された。近隣の自然干潟に比べても遜色のないレベルという。干潟の生態系を再生し、生物たちを維持するために、地元の浦島漁協が干潟に鶏ふん等をまいて栄養分を補給するなどして維持管理してきた。

 

 干潟にアマモ、海藻や植物プランクトンが生息すれば、これらの生物の活動によって大気中のCO2が吸収されることになる。どの程度のCO2吸収力があるかは、国の認可法人のジャパンブルーエコノミー技術研究組合(神奈川県横須賀市)が認定する「Jブルークレジット」に申請し、認定を受ける必要があるが、すでに申請済みで、年間128㌧の吸収を見込んでいる。

 

 同技術組合はこれまで、東京湾の神奈川県金沢八景で横浜市漁業協同組合とNPO法⼈「海辺つくり研究会」によるアマモ場再生事業で22.8㌧の吸収力を認めたほか、山口県周南市、神戸市の兵庫運河等5件を認可している。尾道市等が今回の事業で見込む吸収量の128㌧は、これまでのJクレジット中、最大量となる見通しだ。

 

 想定通りの吸収力が認められると、同クレジットとしては過去最大規模になる。これまでの国内ブルークレジットの創出・売却事例では、1㌧当たり約7万円の価格がついているため、市では申請通りの吸収量が認められると、900万円前後の「自然由来の収入」になると見積もっている。

 

 同市では、クレジット収入を手にした場合、環境啓発事業などに充当するほか、浦島漁協が行う干潟保全の活動にも補助金として出すという。

https://www.city.onomichi.hiroshima.jp/

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC252DJ0V21C22A0000000/