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米アップル、2030年までのサプライチェーンでのカーボンニュートラル実現の「波及」宣言。サプライヤーに「ビヨンド・アップル(アップルを超え、他社向けも脱炭素化)」求める(RIEF)

2022-10-26 17:36:54

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  米アップルは25日、同社のグローバル・サプライヤーに対して、2030年までにカーボンニュートラルの達成を目指す同社の目標に沿って、サプライチェーンでのScope1、同2の削減取り組みを加速し、さらにアップル以外の他社向け事業でも脱炭素化を進める「ビヨンド・アップル」の要請をしたと発表した。サプライチェーンでのScope1+2の削減促進により、アップル自体のScope3排出量の削減を確実にし、さらに社会全体への波及(リップル効果)を目指す。30年の削減量の75%を自前の取り組みで確保すると同時に、残りの25%をブラジル等での森林保全プロジェクトからのCO2吸収源で補完するため、ゴールドマンサックス等と連携することも発表した。

 

 アップルは、日本を含むグローバルベースでのサプライチェーンの脱炭素化を促進している。アップル製品の製造に伴うCO2排出量をゼロ化するだけでなく、今回強調した「ビヨンド・アップル」では、サプライヤーが請け負うアップル以外の製品の脱炭素化も後押しする。

 

 サプライヤー企業が、アップル向けの事業だけでなく、各社全体の脱炭素化を推進するため、アップルは自社開発の「クリーンエネルギープログラム」を通じて、無料の学習トレーニング資源を供給するほか、サプライヤーや各地域パートナーと協働で、最適な再エネ、省エネソリューションの展開を支援する。すでに同プログラムはスタートしており、今年だけで、150以上のサプライヤーがトレーニングプログラムに参加している。

 

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 アップルは2015年以来、サプライチェーンを含む同社製品の生産工程で発生するCO2を40%削減してきた。製造工程での再エネ電力への切り替え、製品デザインの省エネ化、製造工程全体のカーボンニュートラル化等の推進による。アップルの製造の70%以上を担当するサプライチェーン企業は200社以上。その中には、液晶ディスプレイを供給する米コーニング社、日東電工、台湾のTSMCなどを含む。

 

 アップルは、これらのサプライヤー企業に対し、再エネ100%化を含め、アップル向けの操業事業の脱炭素化の促進を、さらに求めていく。脱炭素取り組みの確かさを確保するため、各社の進捗状況を毎年報告するよう求める。同社が求めるカーボンニュートラルの達成は、製造工程だけでなく、すべてのアップル製品のライフサイクルでの排出ゼロも含む。

 

 気候変動の影響が増大していることを踏まえ、欧州を中心に再エネ投資を拡大する。2018年以来、これまで世界44カ国で同社のオフィスや小売店、データセンター等の再エネ転換のために、サプライヤーを含め10GW以上の再エネ発電を導入してきた。これらに加え、欧州での大規模太陽光発電や風力発電事業の建設を30~300MW増設する。さらに、今後数年以内に、3000GWhの再エネ発電量を確保するとしている。

 

 CEOのティム・クック氏は「気候変動との闘いはアップルの最も重要な優先事項の一つだ。サプライヤーとの協働を続け、アップルのサプライチェーンを2030年までにカーボンニュートラルとすることを期待している。アップルの気候行動はわれわれの中だけにとどまらない。より多くの変化を作り出す。池の中のさざ波の波紋のように(他の企業や社会にも)影響を与え続ける決意だ」と述べている。

 

 アップル製品使用者のカーボンフットプリント削減への対応も進める。米国のアップル製品使用者向け取り組みでは、iPhoneの電源チャージに再エネ電力を使える「クリーンエネルギーチャージ」の提供が始まっている。また今月から、通常の電力網でも再エネ電源を使う時間帯に最適チャージができるiOS16の利用が始まっている。利用面、あるいは従業員、パートナー等の気候スマート判断を高めるために、カリフォルニア大バークレイ校が開発した、個人や組織が低炭素製品等を選択する動機を高めるシステム「CoolClimate Network」にも参加している。

 

 再エネ導入や省エネ促進だけではカバーしきれない部分を補う炭素吸収源事業として、ブラジル、パラグアイでの3件の新たな森林プロジェクトを立ち上げた。同事業は、環境NGOのConservation International、投資銀行のGoldman Sachsとの連携によるもので、15万エーカーの認証付き森林の回復事業のほか、10万エーカーの自然林、草原、湿地保全事業にも取り組む。これらの再生・保全事業全体で、2025年には100万㌧のCO2を大気中から吸収・削減できるとしている。

https://www.apple.com/newsroom/2022/10/apple-calls-on-global-supply-chain-to-decarbonize-by-2030/