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JERAのバイオマス混焼の常陸那珂火力発電で、ベトナムの偽装FSC認証とみられるバイオマス燃料から火災事故。9月に発生し鎮火に7時間以上要する。燃料輸入は三井物産(RIEF)

2022-11-16 22:46:19

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 ベトナムの大手バイオマス燃料会社が、国際的な森林認証のFSC認証を偽装した問題で、同社からの輸入燃料を発電に使ってきたとされるJERAの常陸那珂火力発電所(茨城県東海村)で、輸入燃料による火災事故が起きていたことがわかった。偽装業者は認証材以外で燃料を水増しして輸出していた。水増し分で品質劣化が生じた可能性がある。JERAはその偽装燃料を三井物産を通して調達していたとされるが、JERAも三井物産も、自社が関わった輸入燃料にどの程度、偽装分が含まれるのか、固定価格買取制度(FIT)での国による買い取り価格をいくら水増ししているのか等についての方針は明らかにしていない。

 

 (写真は、輸入バイオマス燃料による火災事故が起きたJERAの常陸那珂火力発電所)

 

 火災が起きたのは、9月10日。JERAの報道資料によると、同日朝、常陸那珂火力発電構内のバイオマス受入施設(ホッパー建屋)から煙が発生。消防による消火活動によって、火は約7時間半後に鎮火確認されたという。

 

 JERAは「煙が発生した」とだけ説明しており、火が立ち上ったかどうかは不明だが、鎮火までに7時間以上も要したことから、保管していた燃料が燃えた可能性がある。「この煙発生によるけが人はない」としている。新聞報道によると、「異常アラームが鳴ったため職員が防犯カメラを確認したところ、煙を確認した」としている。https://www.sankei.com/article/20220910-AZJJWMKYTJOJZD5ILKIY75R26E/

 

 常陸那珂火力は1号機が2003年に、2号機が2013年に稼働した。いずれも石炭火力ではCO2排出量が少ないとされる超々臨界圧火力(USC:CO2排出量はガス火力より多い)で、出力100万kWの大型火力発電。CO2排出量削減対策として、2017年6月からバイオマス混焼を実施、1号機は石炭の発熱量に対して3%、2号機は同4.5%の混焼率にしている。これにより年間約8万㌧の石炭消費量を削減するとともに、CO2排出量を22万㌧削減できていると公表してきた。

 

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 JERAの説明によると、今回の事故は、木質バイオマスを受け入れ、木質バイオマスサイロ(貯蔵場所)に送り出すための設備(ホッパー)建屋で起きたとしている。輸入したバイオマス燃料を貯蔵所に移管するための処理施設で、事故は輸入燃料のよる不具合が原因と想定される。業界関係者は、金属等が混在していた可能性があるとしている。

 

 JERAは混焼用の木質ペレットを三井物産を通じて、ベトナムで最大の同ペレット製造業者のAn Viet Phat Energy(AVP)及びタイの業者等から調達していたとされる。ベトナムからの調達量は2021年だけで10万㌧近くに上ったという。FSCがAVPの認証偽装を摘発したのは、調査が完了した2020年分だけだが、AVPの偽装は同年だけでなく、それ以前も、それ以降も直近まで(あるいは現在も)続いているとされ、業界関係者は、JERAの火災事故はAVP社の燃料によるものと指摘している。https://rief-jp.org/ct10/129368

 

 JERAはバイオマス燃料混焼による発電貢献分をFITで売電しているかどうかは明らかにしていないが、通常のバイオマス発電の場合は、FITでの買い上げを前提としている。JERAの場合も混焼率に基づき木質ペレット発電によるFIT買い上げをしているとすると、混焼分は過剰に国に買い上げさせた形となるので、国の「過払い分」を返済する必要が出てくる。https://rief-jp.org/ct5/129862

 

 JERAの木質ペレット等のバイオマス燃料の調達はベトナム以外ではタイからも調達しているとされる。だが、業界関係者は、ベトナムのAVP社以外の事業者の燃料にも認証偽装の燃料が混在していると指摘している。

 

 日本のバイオマス発電事業の燃料に認証偽装バイオマス燃料が混在する背景には、日本のFIT制度で認証バイオマスが通常の廃棄物等に比べて、高値で買い取られる仕組みになっているにもかかわらず、当該認証の適否や、燃料の妥当性についてのチェック機能が十分ではない点が大きい。

 

 実態は、販売業者が燃料に添付する第三者認証(今回の場合、FSC)に、輸入業者も、発電業者も、制度を運営する経産省もに頼っていることが大きい。しかも、今回のように認証偽装が明らかになっても、行政責任を負う経産省には、それをチェックする体制はとっておらず、業者任せのままと指摘されている。

 

 一方で、バイオマス発電事業者も、燃料認証の確認は調達燃料先の商社任せであり、その商社は輸出業者が示す認証を信じるだけという構図に変わりはない。化石燃料も再エネ燃料も発電原料なら何でも輸入に頼ろうとする日本の安易なエネルギー行政のツケがここでも露呈している。経産省はこうした事故や不祥事が露呈していても、現地調査にも乗り出していないようだ。「無責任な役所」と言わざるを得ない。

https://www.jera.co.jp/notice/20220910_974

https://www.jera.co.jp/static/files/business/thermal-power/list/pdf/hitachinaka.pdf