HOME |東証のプライム上場等の主要企業400社、Scope3開示はほぼ半数が実施。時価総額1兆円以上企業の開示率68%。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の開示案への対応進む(RIEF) |

東証のプライム上場等の主要企業400社、Scope3開示はほぼ半数が実施。時価総額1兆円以上企業の開示率68%。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の開示案への対応進む(RIEF)

2023-01-23 21:08:21

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  東京証券取引所のプライム市場上場企業等の気候情報開示において、温室効果ガス(GHG)のうちScope3排出量を開示する企業割合が前年より10ポイント増えて48%(191社)と過半に近くなっていることがわかった。時価総額1兆円以上の大企業の場合、68%と7割近くに上る。業種別では、化学、電気機器、銀行等で過半を上回っている。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の気候情報開示においてScope3開示の盛り込みが焦点の一つだが、日本の主要企業は開示への対応を進めているといえる。

 調査は日本取引所グループ(JPX)による「TCFD提言に沿った情報開示の実態調査」。JPXは2021年11月に、TCFD賛同上場会社259社(2021年3月末時点)を対象に調査を行ったが、今回は対象企業を「JPX日経インデックス400」の構成銘柄に拡大し、各社の気候情報開示状況を調べた。今回調査対象とした400社の合計時価総額は東証全上場会社の合計時価総額の76%を占める。

 調査によると対象企業のうち、314社が統合報告書/アニュアルレポート、141社がESG/CSR/環境/サステナビリティレポート、42社がTCFDレポートを発行している。各社がTCFD提言が求める「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4分野11項目の開示状況を比較した。

 その結果、400社のうちで、最も開示率が高かったのは、「戦略」分野の「リスクと機会」で68%、次いで「ガバナンス」分野での「取締役会による監視体制」の66%。「指標と目標」分野でのGHG排出量開示では「Scope1~2」が65%、「Scope3」は50%をわずかに切る48%だった。

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 前回と今回の両方の調査の対象となった165社を比較すると、11項目すべてにおいて改善が進んでいる。たとえば、「取締役会の監視体制」は、21年の71%から22年は89%に、「経営者の役割」は64%から90%に。GHG開示も「Scope1、2、当てはまる場合は3の排出量」との問いに対し、70 %から87%に改善している。

 時価総額別でみると、1兆円以上企業(129社)では「Scope1~2」の開示率は81%と高く、「Scope3」も68%と7割に近い。時価総額3000億円~1兆円未満の企業では、「Scope1~2」は69%、「Scope3」は50%、時価総額3000億円未満企業では、「Scope1~2」45%、「Scope3」は24%と大きく下がる。

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 業種別でみると、Scope3開示が50%を超えているのは、化学(60%)、電気機器(59%)、銀行(58%)、食料品(同)、機械(57%)、医薬品(53%)、建設業(52%)の各業種。開示割合が低いのは、その他金融業(20%)、サービス業(22%)、小売業(29%)。これらはそもそもScope3の排出量自体が少ない業種とみられる。

 気候情報開示の軸になるGHG排出量の開示については、ISSBの開示原案に対して経団連が「Scope3開示は任意に留める」ことを求める要望書を出している。金融庁の有価証券報告書改正案「企業内容等の開示に関する内閣府令改正」では、有価証券報告書等の中に新たに「サステナビリティに関する考え方及び取り組み」とする記載欄を設け、気候情報との開示を盛り込むとしている。

 ただ、その開示対象はGHGでは、Scope1~2の任意開示とし、Scope3は含めない方針という。今回明らかになった主要な日本企業の準備実態とは、かけ離れた政策方針で、中小企業向けの政策ということになりそうだ。中小企業対応はEU等でも別途、緩和措置を盛り込む方向で重視している。

https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0090/20230120-01.html

https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0090/co3pgt0000006bsk-att/tcfd2022jp.pdf