世界の自動車メーカーの大半が各国で気候政策強化を阻止するロビー活動。主要15社中、テスラを除く全社が展開。日本勢では、トヨタ等3社が「最下位」の評価。英シンクタンク分析(RIEF)
2024-05-21 02:22:32
気候・サステナビリティ分野の英非営利シンクタンク「InfluenceMap」は、世界の自動車メーカーが電気自動車(EV)導入による運輸分野での温室効果ガス(GHG)排出量を削減する政策と逆行するよう、各国政策当局等に働きかける関与戦略(ロビー活動)を展開し、「1.5℃目標」の達成を危うくしているとする分析結果を公表した。対象となった大手自動車メーカー15社中、10社はEV推進の政策に反対し、そのうち、もっとも活発でEVに否定的な活動を展開してきたとして、日本のトヨタ自動車等3社を名指しした。トヨタは日本政府に対してだけでなく、米、英、オーストラリアなどでも活発なロビー活動をとってきたとしている。
同シンクタンクは2022年5月にも同様の自動車業界の調査を行っている。各自動車メーカーの行動は基本的に変わっておらず、EV専業の米テスラが自動車からの排出削減を進めるEV転換を推進しているのに対して、同社を除く14社はいずれも、各国でEV車を推進する政策の少なくとも1つの政策に「活発に反対してきた」と指摘している。
今回の分析は、今年2月に公表された「S&P Global Mobility」による2030年までの乗用車生産予測データと、InfluenceMapが開発した自動車メーカーの気候政策への関与分析の評価ツール「Automotive Climate Tool」を組み合わせて、前回調査をアップデートした。

運輸部門はエネルギー部門、産業部門に続いて世界で3番目にGHG排出量が多い。特に運輸部門からの排出量の太宗は自動車による道路輸送からの排出で、2010年から2019年にかけて15%の排出増と増え続けている。さらに新型コロナ感染症の影響で2020-21年の世界の排出量が減少する中で、道路輸送からの排出量は22年にはコロナ前の排出量のピーク近くに増加、自動車とバンからの排出量だけでも、エネルギー関連排出量全体の10%を占める規模になっている。
分析では、運輸部門、特に自動車部門での排出増、同削減の遅れを踏まえ、乗用車分野での迅速な排出削減の実施が、パリ協定の目標達成のために不可欠と強調している。自動車部門の急速な脱炭素化を進めるために、各国政府はこれまでも、低燃費車とゼロエミッション車を促進する大規模な規制政策に取り組んでいる。
その結果、バッテリー電気自動車(BEV)の世界販売台数は、2020年の3%から2023年には11%に増加した。対照的に、ガソリン車などの内燃機関(ICE)車の世界販売台数は2017年をピークに年々減少している。さらに道路輸送用の石油需要も2020年代後半にはピークに達すると予測されている。
しかし、同分析は「1.5℃目標」の達成と整合する運輸部門での排出削減を進めるには、EVなどの電動車の世界市場シェアをもっと急速に拡大しなければならないと強調。国際エネルギー機関(IEA)の「2050年までのネット・ゼロ・エミッション」シナリオに沿うには、2030年までに世界の小型車新車販売台数の3分の2(66%)を電動車(BEV、FCEV、PHEV)にする必要があるとしている。

しかし、現状、世界の自動車メーカーで、IEA報告と適合する電動車の販売台数66%を2030年までに達成できるのは、テスラ、メルセデス・ベンツ・グループ、BMWグループの3社だけとされる。このままでは2030年の世界で生産される電動車割合は53%にとどまる見通しという。こうした背景分析に絡んで、各国政府の電動車促進策への関与度合い(この場合、政策後押し活動)が最も低いのは、トヨタ、マツダ、スズキの日本メーカー3社としている。
分析では、トヨタなどの日本メーカーが得意とするハイブリッド車は電動車分類ではなく、ICEに分類される。その結果、2030年での電動車生産台数の予測で、もっと電動車割合(総販売台数に占めるEV等の比率)が低いのは、スズキ10%、ホンダ24%、トヨタ29%、マツダ30%と、すべて日本メーカーで占められる。電動車促進政策への関与度の低さと、電動車生産台数の低さが連動する格好だ。
分析対象となった大手15社のうち、テスラを除く14社は、EV 車を推進する何らかの政策に、少なくとも一つは活発に反対する施策関与の行動をとってきたとされる。うち10社は特に否定的かつ活動的な政策関与(ロビー活動)をしてきた。InfluenceMap独自の格付分析では、日本勢はすべて、政策関与のパフォーマンス評価で最下位分類となるDまたはD+の扱い。一方、最も評価が高いのはEV専業のテスラ(B)。次いで、フォード、GMの米メーカーがC評価、フォルクスワーゲン・グループとメルセデスGがC-でそれぞれ並んでいる。

トヨタは、日本車メーカーの中でも、最も低いスコアを付与された。パフォーマンス評価が最下位のDであるほか、企業を評価する「Organaization Score」でスズキに次ぐ下から2番目、「Relationship Score」でも、最下位のマツダに次ぐ下から2番目の評価だ。トヨタが日本車の象徴的存在であり、EV戦略に消極的とみられていることから、「狙い撃ち」されている懸念もあるが、逆にその政治的影響力の大きさによる懸念も、評価に反映した可能性もある。
同分析では、自動車メーカーが業界団体を通して、世界規模で政府が推進する電動車化推進の気候変動対策に対して積極的に反発してきた事例として、2024 年3月に発表されたオーストラリアの新自動車燃費基準案(New Vehicle Efficiency Standards)が、同国の自動車産業連邦協議会(Federal Chamber of Automotive Industry)の活発なロビー活動によって大幅に緩和されたことをあげている。同規制では、当初提案さ れていた2029年までに 自動車からの排出削減率60%が、50%削減に修正された。
また米国では、米自動車イノベーション協会(Alliance for Automotive Innovation)が、自動車からのGHG排出基準案の引き下げ要求で成功したとしている。テスラを除く15の自動車メーカーは、これらの国ごとの業界団体に少なくとも2つ以上所属し、平均的には大半が世界全体で少なくとも5つの業界団体に属しているという。つまり各メーカーは自国の政府以外の政府・当局に対しても、各国の業界団体での共同活動を通じて、自動車からの排出削減策を緩和させるためのロビー活動を展開していることになる。
https://influencemap.org/site//data/000/028/InfluenceMap_Autos_Press_Release_Japanese_202405.pdf
https://influencemap.org/site//data/000/028/InfluenceMap_Autos_Exec_Summary_Japanese_202405.pdf
https://influencemap.org/report/Automakers-and-Climate-Policy-Advocacy-A-Global-Analysis-27906

































Research Institute for Environmental Finance