経産省。再エネ電力の「固定価格買取制度(FIT)」でのバイオマス発電の対象から輸入燃料を除外方針。韓国の政策に追随。消費者が払う「再エネ賦課金」の「過払い金返却」も必要(RIEF)
2025-02-04 00:09:24

各紙の報道によると、経済産業省は再生可能エネルギー発電の固定価格買取制度(FIT)の対象であるバイオマス発電のうち、輸入木質チップ等による発電を、26年度から支援対象から除外する方針という。輸入木質ペレットについてはベトナムの事業者が、経産省の国内チェック体制の不備をつく形で、長期にわたって認証偽造製品を日本に供給し続けた問題が発覚している。今回の措置は不正輸入を避けるために、輸入木質ペレットをFITの対象から除外する形だ。すでに韓国でも1月にバイオマス発電に対する補助金の段階的打ち切り策を実施している。経産省も韓国に続き、ようやくバイオマス発電の「不明瞭部分」の部分的な是正に乗り出す形だ。
日本経済新聞が電子版で伝えた。日本のバイオマス発電の現状は、発電燃料の7割強が木質ペレット等の輸入燃料となっている。輸入価格の高騰と、将来的な発電コストも太陽光の4倍近くに高止まりする見通しであることから、同発電事業への新規参入は途絶えていると指摘。経産省は今後も同発電事業への参入は大きく増える見込みはないと判断し、26年度から主に輸入材を燃料に使うバイオマス発電を支援対象から外すとしている。
日経の報道では、輸入燃料のバイオマス発電でFIT制度の対象から除外するのは、発電量が1万kW以上で輸入木材を使う案件と、パーム油などの液体燃料を使う案件とし、国内の自治体が地元で出た廃材や生ごみなどを活用した案件は引き続き支援対象とする。輸入燃料については、円安進行や物価高騰で値上がりして採算が悪化し、輸入バイオマス燃料に依存するバイオマス発電事業のFITへの新規参入は22年度以降ゼロになっていると指摘している。
燃料価格の上昇等の市場要因をあげているが、実際には、すでに韓国政府が昨年12月中旬に輸入燃料の脱炭素効果の不透明さから、バイオマス発電への補助金停止を打ち出している。同政府は今年1月からは、アジアなどからの輸入燃料によるバイオマス燃料での既存の発電所への補助金も段階的削減対象としている。経産省の今回の対応は、韓国の政策に追随する格好だ。https://rief-jp.org/ct5/152888?ctid=

日本と韓国は、ベトナムなどからの木質ペレット等の輸入木材製品の最大の受け入れ市場となってきた。だが、両国の制度の監視・チェック体制が不十分である点を輸出先企業等に見抜かれ、燃料に不純物を混ぜたり、FSC認証を偽造した製品等が長年にわたって持ち込まれていた。その結果、日本のFITの場合、粗悪燃料を政府が高値で買い上げて、その「ツケ」の部分を、電力消費者が支払う再エネ賦課金に上乗せされる構造になっていた。
輸入木材等の粗悪性の問題は、すでに2020年前後に市場でも問題化していた。それを受け、2021年に国際的な森林管理協議会(FSC)が、ベトナムの対象企業のサプライチェーン等を調査した結果、対象になった企業の木質ペレットに付与されていたFSC認証が偽装であると発覚した。FSCは22年1月に、同社製品に対する一定期間の認証停止等の措置を実施し、公になった。https://rief-jp.org/ct10/121993?ctid=
これらの燃料製品の日本への輸出の場合、輸出元のベトナム企業等が、現地の小規模企業等から、伐採された地域の森林資源を材料とした木材を木質ペレット等に加工し、それを日本の商社が輸入する形をとる。商社は買い入れた燃料を、日本の大型バイオマス発電事業者に販売する。この際、日本国内で利用するFIT制度のバイオマス発電の電力買い上げ価格は、使用する燃料に応じて決められる仕組みとなっている。
現在のFITのバイオマス発電の燃料ごとの買い上げ価格は、輸入材や木質ペレット、パーム椰子殻などの場合は「一般木質バイオマス・農産物の収穫に伴って生じるバイオマス固体燃料」として1kWh当たり(24年度)24円、「一般廃棄物」等の場合は同17円、建設資材廃棄物は同13円と、差がついている。ベトナムの事業者等はこうした買い上げ価格の差を利用して、粗悪な原料を混ぜた製品に偽装認証を付与して高い分類にみせかけ、日本や韓国に輸出してきたわけだ。
経産省等は、FIT制度上では、発電電力の買い上げ対象となる製品の品質チェック等は直接は行わない。発電会社が提出する書類審査が主だ。このため輸入した商社も、それらを買い入れるバイオマス発電会社も、FITの燃料分類に合致しているかどうかの確認は十分に行わず、外部認証に頼る形となっている。そこを偽装されたわけだ。さらに、これら粗悪な燃料が原因となって、複数の国内でのバイオマス発電所で爆発・火災事故が頻発するなどの問題も引き起こしていた。https://rief-jp.org/ct4/107574?ctid=
今回、経産省が輸入燃料をFITの支援対象外とすることで、今後、既存のバイオマス発電の燃料確保が十分できるかどうかが焦点となる。多くのバイオマス発電は、燃料は海外からの輸入に依存することを前提とし、輸入に適した港湾部分に発電所を建設している。日本のバイオマス発電の輸入燃料先は、ベトナム等のアジア各国のほか、エンビバ等の米国産の森林資源が2大産地だ。だが、エンビバ社も経営破綻からの再建途上にある。このため、輸入バイオマス燃料をFIT対象から外すことで、既存の同発電所同士の間で燃料の奪い合いになる可能性もある。https://rief-jp.org/ct4/151185
本来は、国内森林産の木質ペレット等の増産体制を後押しする政策と連動するべきだろう。だが、国内産ペレットの増産政策は農林水産省の管轄で、バイオマス発電所の運営等は経産省が管轄するという役所間の「縄張り」の問題もあるようだ。そもそもバイオマス発電は火力発電でであり、真のCO2削減につながるのかという根本的な問いかけも続いている。
さらにこれまでの「不正」な輸入燃料の使用によって、日本の消費者は割高な再エネ賦課金を支払わせられてきた問題に、経産省がどう対応するのかも不透明だ。消費者は強制的に割高な同賦課金を支払わされてきた。割高分の計算は、FIT制度で買い上げたバイオマス電力量に占める不正と疑われる電力量を、過去の買い上げ実績に基づいて計算すれば、一定の目安はつくはずだ。https://rief-jp.org/ct4/150860?ctid=
石破政権が「消費者は気づいていない」として、割高賦課金の返済に手を付けない可能性もある。だが、消費者はそれほど無関心で、無頓着ではない。偽証認証によるバイオマス発電問題は、商社や発電事業者も「騙された」格好でもある。再エネ事業の国際取引への信頼性を確保するためにも、日本政府が主導権をとり、過去にさかのぼっての取引の是正と、消費者への過払い分の返済を粛々と実施するべきだろう。
(藤井良広)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA31A4W0R30C25A1000000/?type=my#AAAUAgAAMA