日本企業発行のESG債・同ローンをアジア投資家の投資対象に。「ゼロボード社」と香港の「クライメートファイナンスアジア(CFA)」が連携。政府のGX国債への投資奨励も視野(RIEF)
2025-03-07 15:12:54

(写真は、ゼロボードの渡慶次道隆氏㊨と、CFAの杜國倫氏氏㊧)
ESG関連データのクラウドソリューションビジネスを展開する「ゼロボード(Zeroboard)」は6日、香港拠点でアジア全域でのサステナブルファイナンス事業を展開する「クライメートファイナンスアジア(Climate Finance Asia : CFA)」と連携し、日本企業が発行するグリーンボンド等のESG債・同ローンをアジアの投資家等の投資対象とする活動を展開すると発表した。CFAが日本のESG債に外部評価を付与することで、アジアの投資家の投資ニーズに応えることを目指す。アジア系の機関が日本のESG債・同ローンに対して、国際的な外部評価を付与する事業に乗り出すのは初めて。
両社は戦略的パートナーシップ契約を結んだ。同パートナーシップでは、ESG債・同ローンへの国際基準に準拠した外部認証事業の展開のほか、サステナブルファイナンスやインパクトファイナンス分野でのアドバイザリーサービスの提供、同分野の調査活動の支援等を連携して行うとしている。
日本での環境関連投資による資金調達額は、2023年時点で7兆円を超える規模に成長している。ESG債の中心になるグリーンボンドの発行はそのうち約2.3兆円を占め、毎年、着実に成長している。最近は政府のGX戦略に合わせたトランジションボンド・同ローンの発行も増えている。
しかし、両社は、世界のESG債発行に比べると、日本市場での同ボンドの発行規模は小さく、潜在的な発行需要、投資需要に対応しきれていないとみている。現在の日本でのこれらの金融商品への日本の評価会社の外部評価は、国際資本市場協会(ICMA)等の原則・ガイドラインをベースにして日本政府が設定した「日本流」のガイドラインへの適合を主に評価する形となっている。
このため海外の投資家にとっては、海外の評価機関の外部認証を得ているメガバンク等の債券以外は、信頼性の観点から、投資しづらい状況になっている。そこで両社は今回のパートナーシップを通じ、CFAが日本企業発行のESG債・同ローンに対して、国際基準に基づいた外部認証サービスを提供することで、日本のESG金融商品へのアジアを中心とした海外投資家へのニーズに応えることを目指すとしている。
両社が提供する外部評価サービスは、日本の企業が発行するグリーン、サステナビリティ・リンク、トランジションボンドおよびローンを対象として、それらの金融商品の信頼性と透明性を確保するための「堅牢な検証サービス」を提供するとしている。準拠する海外基準は、Climate Bonds Initiative(CBI)、ICMA、国際ローン市場協会(LMA)、ベストプラクティスなどをあげている。
両社は、海外投資家のニーズ掘り起こしの対象として、企業や金融機関の発行体だけでなく、ESG債発行で資金調達を進める「政府・自治体」も含めている。日本政府が発行するESG債は現在、GX戦略に基づき、財務省が発行するGX経済移行債(GX国債)がある。同国債は、欧州各国のソブリンESG国債が、発行のたびに投資家から高い評価を受けることに比べると、国内投資家の評判は高くない。通常、ソブリンESG債発行時は投資家の応募が殺到し、グリーニアム(グリーン性のプレミアム)が発生するケースが多いが、GX国債はそうした状況にはない。
両社はサポート対象として「政府・自治体」としかしていないが、両社がGX国債を国際的基準での評価を付与したうえで、アジアの投資家につなぐ役割を果たせると、同国債に対する需要が高まる可能性もある。両社は「今回の提携は、サステナビリティ金融商品開発支援を通して、企業のポートフォリオ(スコープ3)のグリーン化をより具体的に後押しするほか、日本でのグリーンプロジェクトに対して海外からの資金調達を目指す日本企業や政府・自治体の支援も行うことができると考えている」としている。
ゼロボード代表の渡慶次道隆氏は「CFA社と提携して、日本でサステナブルファイナンスを推進できることを嬉しく思う。この提携により、われわれは日本の企業や金融機関、政府・自治体が国際基準を満たす非常に厳格な方法で脱炭素・サステナビリティ目標を達成するのに役立つ包括的なサービスを提供できる」と述べている。
CFAのグループCEO、杜國倫氏は「ゼロボード社との提携は、日本でサステナブルファイナンスを促進するための重要な一歩。われわれの専門知識を組み合わせることで、サステナブルファイナンス商品の信頼性と透明性を高め、最終的にはより持続可能な未来に貢献する革新的なソリューションを提供できる」と指摘している。