一般社団法人環境金融研究機構 | Research Institute for Environmental Finance: RIEF

（写真は、右腕をあげる「ファシスト式敬礼」をみせるマスク氏＝AP通信から）

　テスラの共同創業者であるイーロン・マスク（Elon Musk）氏がトランプ政権入りし、「政府効率化省（DOGE）」担当として注目を集める中で、テスラの各国での売り上げが急落し、株価も下落に転じている。「地球に優しい車」のイメージで、売り上げを伸ばしてきたテスラ車だが、トランプ大統領の就任式で、マスク氏がファシスト式の敬礼をしたほか、DOGE政策で、連邦職員の大量解雇を推進。「人に優しくないテスラ」のイメージが世界中に広がった格好だ。テスラに乗るオーナーたちの間では「テスラに乗るのは恥ずかしい」とのムードも広がっているという。

　「ゼロエミッション車」の代表車種として、世界中で電動車の先頭に立ってきたテスラ。CEOのマスク氏が、トランプ政権の「DOGE」担当として「入閣」当初は、株価も急上昇し、一時は昨年11月比で倍以上となった。ところが、マスク氏がトランプ大統領の就任式で、ファシスト式の敬礼をしたことで、暗転した。

　マスク氏の敬礼の姿に驚いたのが、多くのテスラオーナーたちだった。テスラを運転すると、自分も「ファシスト・極右」とみなされるとの戸惑いが広がった。さらに新車購入を考えていた人たちの間でも、「地球に優しい車」なのに「人には優しくない」とみなされることを嫌ってか、2月の米国内での新車販売では前年同月比で約72％減と大きく落ち込んだ。特に、テスラ車のエントリーレベルモデルである人気車種のモデル3の販売台数は81%減少した。

　海外でも苦戦している。英国ではテスラ車の販売台数は伸びているものの、欧州市場全体では、前年同月比ほぼ半減の状態という。ファシスト式敬礼への反発は少なくない。

　テスラ車を所有しているオーナーたちは、急に転売するわけにもいかず、マスク氏との距離を置くために「この車はイーロンが『狂う』前に買った」等と、「言い訳」を書いたバンパーステッカーを貼るのがブームになっている。同ステッカーをオンライン販売するハワイのステッカーショップ「Mad Puffer Stickers」は「注文は1日500件以上ある。大半は米国内からだが、5分の1は海外から。昨日は700件の注文に増えた」等と述べている。思わぬ「テスラ効果」で売り上げ上昇中だ。

　テスラ車が普及しているカリフォルニア州等では、不買運動も広がっている。旧本社があったパロアルト市内の販売店前では2月、マスク氏に対する抗議運動も行われた。テスラオーナーたちは、抗議運動が激化して、テスラ車が襲われることを避けるため、「テスラに乗っているけど、マスクの姿勢には反対」との意思を表示する「STOP ELON」のステッカーも人気という。

　テスラ車への不買運動は米国内だけでなく、欧州、オーストラリアなどにも広がっている。さすがに前年比7～8割減という販売不振と、株価の暴落に、強気のマスク氏も困惑したのか、トランプ大統領は11日、テスラを自ら支援するため「新車のテスラを1台購入する」と表明した。トランプ氏は、ホワイトハウスの建物前にテスラ車を並べ、報道陣の前でマスク氏と、テスラの高級セダン「モデルS」に乗り込むパフォーマンスを見せた。赤いセダンを指さし「小切手で支払う」と述べた。

　トランプ氏は、各地で広がるテスラ不買運動について「極左の狂信者が違法にテスラをボイコットしている」と非難した。トランプ氏のサポートに応える形で、マスク氏は「米国（の将来）への信頼を示すためテスラは今後2年で米国での車両生産を倍増させる」と述べるなど、少し元気を取り戻したようだ。ただ、マスク氏はDOGEを率いるものの、テスラの経営者でもある。トランプ氏がテスラへの支援を強めれば、マスク氏への「利益誘導」とみられる可能性も指摘されている。

　テスラ車の人気低迷は、マスク氏の「ファシスト式敬礼」の影響だけでもなさそうだ。トランプ政権はバイデン前政権が推進した電気自動車シフトをやめる方針だ。ガソリン車でもOKにする。そうなると、コストの高いEVの販売は鈍らざるを得ない。またEV車の間でも、より安価な中国製ライバル車等のシェアが高まっている。また若者層は、日本と同じく、自動車そのものへの関心が低下しているとされる。

https://www.theguardian.com/technology/2025/mar/06/australian-tesla-sales-plummet-elon-musk

https://apnews.com/article/trump-musk-tesla-9a43c57a0591a4c7ed8d3f1b2c7ef8d9