フィリピンでASEAN経済相会議。共同声明でエネルギー安全保障とレジリエンス強化を強調。「(化石燃料依存から)再生可能エネルギーへの移行・代替エネルギー開発加速」に言及(RIEF)
2026-03-14 01:04:23
(写真は、マニラで開いたASEAN経済相会議の終了後の記者会見の模様=フィリピン政府のサイトから引用)
東南アジア諸国連合(ASEAN)は13日、フィリピンのマニラでASEAN経済相会合を開いた。会合後に公表された共同声明では、中東における緊張に対し、深い懸念を表明するとともに、「紛争の激化は、特に世界エネルギー市場の変動性の高まりや主要な海上・サプライチェーンルートの混乱を通じて、地域を越えて広範な経済的影響をもたらしている」と述べ、ASEAN経済への危機感を示した。また最大の課題であるエネルギー問題では、ASEAN地域のエネルギー安全保障とレジリエンスを強化することの重要性を強調。化石燃料への依存から、再生可能エネルギーへの移行および代替エネルギーの開発を加速させる必要性を強調した。
中東の原油・ガス供給の不安定さから、すでに環境NGOなどからは、再エネへの移行を求める要請が高まっている。ASEAN諸国には太陽光のほか、水力発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電等、自然エネルギーを利用した潜在的電力源が膨大にある。このため、日本政府がアジアで推進する化石燃料発電所の水素・アンモニア混焼やCCS等を使ったコストの高い発電を展開するよりも、「再エネ移行」のメリットはコスト面での有利さに加え、安全保障上の有利さがあげられる。https://rief-jp.org/ct7/164913?ctid=64
現在、ASEAN諸国の多くは原油輸入を中東に依存している。このため、米国とイスラエルによるイラン攻撃とイラン側の報復措置を受けたホルムズ海峡の事実上の閉鎖の影響で、ガソリン・灯油などの石油製品の価格が高騰し、域内経済では混乱が広がっている。議長国のフィリピン貿易産業相のクリスティーナ・ロケ(Cristina Roque)氏は中東の激動について「遠い場所のニュースではなく、差し迫った経済的な衝撃だ」と危機感を示した。
共同声明では、中東問題についての危機感とともに、世界貿易における不確実性の高まりや、米国をはじめとする主要国が一方的な政策行動(ユニラテラリズム)をとることに対して、「懸念を持って注視している」と指摘、世界経済のサプライチェーンを構築するASEANとしての懸念を示した。
そのうえで、「われわれは、ASEANの『中心性(Centrality)』に対するコミットメントを再確認するとともに、困難な世界情勢の中で、継続的な地域協調、警戒、および政策上の備えが必要であることを認識した」と述べた。これは、ASEANが世界のサプライチェーンを形成することに加わえ、中東からの石油およびLNGの供給ルートとなっていることから、ASEAN経済全体が国際エネルギー市場の動きの影響を受け易いことを踏まえた発言といえる。
共同声明では、こうしたASEAN経済の「中心性」を踏まえて、地域のエネルギー安全保障とレジリエンスを強化することが重要と強調した。エネルギーの安全保障とレジリエンス強化の方策として、「エネルギー消費の管理、特にバイオ燃料や再エネを通じたエネルギー源および供給ルートの多様化、エネルギー備蓄に関する地域協力の強化、ASEAN対話パートナーを含む備蓄分野での協力、ならびに再エネへの移行および代替エネルギーの開発を加速させる必要性を強調した」とした。化石燃料の備蓄とともに、「再エネへの移行」と「代替エネルギーの開発」に力点を置いた。
再エネへの移行は、地域に豊富で開発コストが手頃な(アフォーダブルな)エネルギーとしての太陽光エネルギーや、地熱、水力等の自然エネルギーを、本格的に経済システムに組み込む視点だ。地域のエネルギーには、エネルギー安全保障を担保できる強みが備わっているとともに、地域の雇用にも貢献する。またバイオマス発電では、日本等にバイオマス燃料を輸出しているが、地域でバランスの取れた農業支援とエネルギー開発の連動化も求められる。
「代替エネルギーの開発」には、再エネに限らず、原子力や核融合等の未来エネルギーのほか、廃棄物発電や農業関連のバイオガス等の開発も含まれるとみられる。声明では、こうした地域内エネルギーの開発を域内全体で取り組むために「安定的かつ安全で、持続可能かつ強靭なエネルギー・コネクティビティと供給を確保する」と述べている。
そのうえで、現行の域内ですでに成立している複数の枠組みのうち、ASEAN石油安全保障枠組み協定(APSA)、ASEAN電力網(APG)強化覚書、およびASEAN横断ガスパイプライン(TAGP)を含めた既存のエネルギー協力枠組みを推進する継続的な協力を強化するとしている。
さらに、エネルギーおよび輸送コストの変動が農業・食料生産、肥料の供給、食料流通システムに影響を及ぼす可能性があることから、食料安全保障を確保する必要性も強調している。この点は、ASEAN同様に輸入石油・ガスに依存する日本では、もっぱらエネルギー安全保障の議論は起きているが、食料安全保障の視点にまでつながらないのとは対照的だ。日本とASEANの政策担当者の危機意識の差かもしれない。
(藤井良広)

































Research Institute for Environmental Finance