米、カナダ、メキシコの3か国 「北米気候変動・クリーエネルギー・環境パートナーシップ」締結。2025年のクリーンエネ比率50％超に。パリ協定の年内批准でも合意（RIEF）
2016-07-01 22:51:32
米国とカナダ、メキシコの北米3国は、「北米気候・クリーンエネルギー・環境パートナーシップ」の締結で合意した。パリ協定の促進と、2025年までに3か国の電力に占めるクリーンエネルギー比率を50％に引き上げる共通目標を掲げる。パリ協定の年内批准でも合意した。
オバマ大統領とトリュドー・カナダ首相、エンリケ・ペーニャ・ニエト・メキシコ大統領が今週、オタワで会談し、合意した。バマ大統領は今秋の大統領選挙後に退任するが、北米3か国で共通目標を掲げることで、自らが掲げるクリーン・パワー・プラン（CPP）を「国際合意」として位置づけた形だ。
3か国合意の対象となるクリーンエネルギーには、太陽光、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギー発電のほか、原子力、CCSを前提とした石炭火力等を含めている。原子力は国際エネルギー機関（IEA）もクリーンエネルギーとして位置づけている。
このため米国は原発新規建設を認める姿勢に切り替えているが、東京電力福島発電所事故以来、安全対策コストが上昇、今後の原発比率の上昇は見込めていない。このためクリーン電力50％目標達成の主要な柱は再生可能エネルギー発電となる見込み。
3か国首脳会議のホスト役を務めたカナダのトリュドー首相は「パートナーシップ（North American Climate, Clean Energy, and Environment Partnership） は、北米での共通目標達成に向けて3か国が協調を深め、3か国に共通する北米の環境を次世代のために共有し、クリーン成長を促進、競争力を強化することにつながる」と述べた。
オバマ大統領は、3か国がパリ協定を年内に批准することで一致したことを評価するとともに、クリーンエネルギー発電の共通目標を掲げたことを「大胆なゴールであるが、達成可能なゴールである」と強調した。
3首脳はこのほか、石油・ガス産業からのメタン排出量についても2025年に40～45％削減することでも合意した。さらに、ブラックカーボン、代替オゾン物質等の削減、クリーン輸送機関の普及推進、クリーンエネルギー関連雇用の増大、省エネ普及などでの協力もうたっている。
現在、3か国平均のクリーンエネルギー比率は37%。このうちカナダはすでに水力や太陽光、風力、原子力などで81%をカバーしているという。このため、比率が30％強の米国と20％のメキシコの両国の対応が焦点となる。
米国の場合、電力の11%が再エネ発電で、原子力は19％の比率。再エネ発電の増加が目標達成のカギを握る。メキシコは電力産業の自由化を促進、民間資本の投資を認めており、今後、クリーンエネ比率は2024年には35%前後になるとみられる。
メキシコの不足分、さらに米国の不足分についても、3か国の国境を超えたクリーン電力取引を認めて、カバーする方向という。すでに超過達成しているカナダが電力の売り手で、米、メキシコが買い手になる北米自由貿易市場（NAFTA）版の電力融通市場が成立することになる。
オバマ政権が打ち出しているCO2削減のために石炭火力発電を抑制するCPP規制は、規制に反対するウエスト・バージニア州など27州が規制の差し止めを最高裁に求め、最高裁は控訴審に調整を指示。控訴審の結論は9月に予定されている。
最高裁が差し止め要請に対して控訴審に調整を指示した際、5対4の決定だったが、その後、賛成派の判事が病気でリタイアし、現在は4対4の賛否に変わっている。行政府の法規制をめぐる最高裁の賛否が同率の場合、法律は有効と判断される見通しで、CPPは稼働するとみられている。
ただ、11月に決まる新米大統領が、環境政策ではオバマ政権と歩調が同じとされるヒラリー・クリントン氏になるか、パリ協定の見直しも主張しているドナルド・トランプ氏になるかで、新政権下でCPPが生き残るかどうかの評価は分かれる。
今回の北米3カ国首脳の合意は、CPPを国際合意の柱に位置付けることで、新大統領の選出後も、容易に変更できないようにしようというオバマ政権の「レガシー政策」の一つともいえる。
Research Institute for Environmental Finance