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英HSBC欧州担当CEO グリーンボンドに減税インセンティブ付与を要請(RIEF)

2016-07-01 00:22:42

HSBC2キャプチャ

 

 英銀HSBCの英国、欧州大陸部門CEOのAntonio Simoes氏は、 企業のグリーンボンド発行を支援するため、減税等の政策支援を付与することを求める発言をした。

 

 Simoes氏は今週、ロンドンのシティで開いたビジネスと気候変動関連の会議で述べた。Simoes氏は「ベター・インセンティブ」と形容した。

 

 「企業にとって現在の状況では、通常の社債に比べて、グリーボンド発行などのグリーンファイナンスはコンプライアンスコストが高く、発行しづらい環境にある」

Antonio Simoes氏
Antonio Simoes氏

 「こうした環境下では、グリーンボンド発行は経済合理性を欠くことになる。少なくとも通常の債券発行と同じレベルになるような政策支援が必要」などと指摘した。

 

 グリーンボンド発行市場は急速に拡大している。今年も700億㌦~1000億㌦の発行が予想されている。しかし、Simoes氏は、同市場が「ニッチ市場からメインストリーム市場に転じるには、思い切った政策支援が必要。それもグローバルベースでの支援が望ましい」と強調した。

 

 欧州委員会は今週初め、グリーンボンド発行を促進するため、「グリーンボンド・ステークホルダー会議」をブリュッセルで開いた。パリ協定に合致した気候変動対策を加盟各国が実施する資金的裏付けとして、グリーンボンド市場を活用し、同市場を拡大する対策を検討するためだという。

 

 欧州委員会は、加盟国段階でのリスク比重型アセットモデルを活用して、グリーンボンド発行に対する減税インセンティブを共通政策として打ち出す検討を行っているという。Simoesの発言は、こうした政策的動きを後押しする狙いも込められているようだ。

 

 ただ、欧州委員会には、政策支援によってグリーンボンド市場がさらに拡大する期待がある一方で、公的機関の関与が大きすぎると、市場の成長を歪めかねないとの警戒感の指摘もあるという。税制メリットをいったん付与されると、他の金融商品とは異なるものと位置付けられ、常に政策支援を前提で取引されるリスクがあるからだ。

 

 そうなると年金等の機関投資家にとっては、むしろ投資商品としての魅力が減じられる。ただ、EU以外でも、たとえば中国では、一定の水準を超えたと評価されるラベル付きグリーンボンドに対して、減税メリットを付与し、投資家への販売促進を後押しする検討が進んでいるという。

 

 米国では地方自治体発行のレベニュー債が免税債として定着している。リーマン危機後に発行された「ビルド・アメリカ債(BAB)」は借入金利に対する一定の補助の提供などの特例措置を講じた例などがある。

 

 わが国でも、かつて金融債に減税メリットがあった。当時の金融債には、投資家や富裕層の資金が流れ込んでいた。超低金利で銀行に留め置かれている個人投資家の資金をグリーン投資に振り向けるには、「免税グリーンボンド」も検討対象かもしれない。金融庁あたりに検討してもらえないか。

 

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