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世界銀行、国別のESGデータ・プラットフォーム開設。SDGsに連動する17の評価項目を選別。国ごとの比較も可能。投資家による国債投資の際に、ESG評価を統合促進(RIEF)

2019-10-31 00:18:42

worldbanl8キャプチャ

  世界銀行は、国単位のESGデータを無料で提供するプラットフォームを開設した。「The Sovereign ESG Data Portal」で、投資家が各国の国債のESG分析をする際に活用できる情報を整備した。国別ESGパフォーマンス等を容易に比較できることから、口先だけでESGやサステナビリリティを唱えながら、実際の政策展開を後回しにしている国がどこか、一目瞭然になる。

 

  開示される国別のESGデータは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の17目標に沿った形で、17のESG項目を網羅している。

 

対象となる17のESG項目
対象となる17のESG項目

 

 分野別では、環境は①排出量と汚染物質②自然資本とマネジメント③エネルギーの使用と安全保障④環境/気候リスクとレジリエンス(強靭性)⑤食料の安全保障の5項目。社会は、教育・熟練など6項目、ガバナンスは人権など6項目。

 

  各国の政策実績や国の状況についての全体的な動向がわかるように選別された項目という。いずれも現在の市場と、世銀が活用しているものに基づいた指標に基づいている。

 

 数値化が難しい項目についても、Indexを活用して各国比較や、平均との比較等が容易にできる。たとえば、法的権利の強さ(Strength of legal rights Index)では0~12段階で示される。2018年のデータでは、米国が最強に近い11.0、香港8.0、日本5.0、中国4.0、東アジア・太平洋7.3など。世界平均5.6。日本は中国よりは強いが、世界平均を下回るなど、芳しくないことがわかる。

 

日本の再生可能エネルギー発電量の推移の比較
日本の再生可能エネルギー発電量の推移の比較

 

 化石燃料消費量は全消費量に対する比率で示されている。現在のデータは2015年の数値だが、世界平均が79.7%、米国82.4%、デンマーク64.9%、日本は93.0%で、中東・アフリカ地域の97.4%より低いが、先進国では一段と高い比率であることが示されている。

 

 開設されたESGポータルは、世銀加盟の189カ国で利用できる。各国比較が容易なことに加え、指標による評価を含め、データの信頼性は、民間のESGデータ供給者よりも高いことから、機関投資家等の利用に役立ちそうだ。機関投資家等は、こうした国別ESG評価を土台に国債投資をする一方、個別企業のESG評価を重ねて、上場株や債券投資にも活用することが見込まれる。

 

日本のCO2排出量の比較
日本のCO2排出量の比較

 

 今回の世銀の「国別ESG データ開示」プロジェクトには、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もパートナーとして協力した。GPIF・CIOの水野弘道氏は「投資家は長い間、ESG情報の重要性に気付いてはきた。しかし経験とデータ不足で容易に判断材料にまで、できなかった。今回のデータポータルは、公共で利用できるESGデータの質、スコープ、透明性等を改善してくれるだろう」と期待を示している。

 

 世銀のデータ開発グループの Haishan Fu氏は「今回のポータルは、より良いデータがいかに適切な投資情報を伝え、開発の成果を高めることができるのかという素晴らしい例だ。SDGsに適合する投資判断をするうえで、品質の高いデータは投資家にとって極めて重要だ」と述べている。

 

https://blogs.worldbank.org/opendata/new-resources-sovereign-esg-data-and-investors

https://databank.worldbank.org/reports.aspx?source=3711&series=EG.USE.COMM.FO.ZS&country=EAS,SAS,MEA,SSF,LCN,ECS,NAC