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環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)、「2020年改訂版:石炭火力2030フェーズアウトの道筋」を公表。2030年までに石炭火力発電全廃計画の策定を政府に要請 (RIEF)

2020-11-18 21:02:27

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 環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)は17日、先に菅義偉首相が、日本の温室効果ガス排出を2050年までに実質ゼロにする方針を表明したことを受け、「石炭火力フェーズアウトの道筋」を示した。運転開始年が古く、発電効率の低い発電所から段階的に、2030年までに全て廃止するスケジュールを示すほか、計画中・建設中の石炭火力も廃止を求めている。

 

 KIKOは2018年11月に「石炭火力2030フェーズアウトの道筋」と題したレポートを公表している。今回、これを改定した。それによると、国内の石炭火力発電設備は1970年代以降増加し続け、現在、発電量の約3割に達する。稼働中は162 基、発電量合計4928.9 万 kW(49289MW:2020 年 11 月時点)。これらの石炭火力からのCO2 排出量は、日本の温室効果ガス排出総量の約2割を占め、最大の排出源になっている。

 

増大の一途を辿ってきた日本の石炭火力発電設備
増大の一途を辿ってきた日本の石炭火力発電設備

 

 これらに加えて、2012 年以降に計画された50基の新規石炭火力発電事業のうち13基は、地元住民の反対や経営環境の変化を踏まえた事業者の判断で、計画段階で中止されたが、それ以外の30基強は建設・運転され、うち17基(425.7万kW)はすでに稼働している。さらに17基(993.0万kW)の石炭火力が建設・計画中(大規模14、小規模3)。いずれも2020 〜2026年の間にそれぞれ運転開始を目指しているという。

 

 ただ、KIKOは、パリ協定の「1.5℃目標」、「2℃目標」を達成するには、先進国としては2030年に石炭火力廃止が不可欠になると指摘。菅首相が宣言した「2050 年実質ゼロ」目標は、パリ協定と整合するものであり、これに沿って2030年までに石炭火力フェーズアウトの実施が日本も必要である、と強調している。

 

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 2030年までに石炭火力をフェーズアウトする場合、現在建設中・計画中の16基 (981.2 万 kW) を稼働させると、現行の約5000万kWの設備の削減に加えて、982.1万kW分も追加削減しなければならなくなる。そうなると、急激なフェーズアウトになると警告している。

 

 新規稼働を認めると、合計6000万kWの設備をゼロに導く必要がある。だが、KIKOは①電力需要は2030年の電源構成を定めた2015年時点より1割以上低い②移行時の代替電源として、LNGガス火力が十分利用可能③再生可能エネルギー発電量は2030年の発電見通し(22〜24%)だが、現時点ですでに20%近くであり、目標は大幅に超過達成の見込み④デマンドレスポンスの活用により、需要ピークのシフトが可能――等を指摘。石炭火力フェーズアウトは可能、としている。

 

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 そこで、菅宣言に沿う形で、2030年石炭火力フェーズアウトを実現するには、「2050年温室効果ガス排出実質ゼロ」を法律で明記したうえで、 2050年目標と パリ協定の「1.5℃目標」とに整合するよう、2030 年の排出削減は 少なくとも 50% 削減以上(1990 年比)に引き上げる必要があると求めている。

 

 そのうえで、現行の第5次エネルギー基本計画では石炭火力と 原発を「重要なベースロード電源」と位置付けているが、来年に予定される第6次エネルギー基本計画では、こうした位置づけを根本から改めるべきとしている。2030年に脱石炭・脱原発の実現を方針として明確化し、電源構成は、再エネ50%以上、 LNG50%未満とする目標に切り替えるよう要請している。

 

 経産省は、「石炭火力フェーズアウト」について、非効率石炭火力に限定する方針を示している。だが、KIKOは、それをさらに進めて、「すべての石炭火力を対象とする」べきとしている。また、これまでの政府の発電所対策は、省エネ法によるベンチマーク制度で、発電効率基準を定めて対応してきたが、省エネ法の目的はエネルギー効率の向上にあり、気候変動の観点から石炭火力発電を見直すことにはそぐわないと指摘。

 

 フェーズアウト計画は、省エネ法ではなく、エネルギー基本計画と地球温暖化対策推進計画の両方に 2030年石炭火力廃止の方針を明記し、国としてフェーズアウト計画を策定、事業者にも計画策定を求めることが望ましい、と提案している。着実な実施を担保するために、 毎年の廃止スケジュールを定めた新法の制定が必要としている。

 

 また経産省が制定した容量市場制度は、石炭火力延命策であり、他国では例を見ない問題含みの仕組み、と批判。本来、気候変動対策上、全廃すべき石炭火力の温存を目指す危険性が極めて高いとし、同制度の全面見直しを求めている。代わりに、需給の両面で、石炭火力の利用を速やかに削減するためのインセンティブ付与として、 カーボンプライシングの導入をあげている。

 

 再エネを電源の主軸化するため、現行の再エネ導入促進策を整備見直しを求めている。再エネの優先給電の確保、メリットオーダーの導入、柔軟な電力融通、系統連系の強化等によって、再エネの大量導入を促進すべきとしている。

https://www.kikonet.org/press-release/2020-11-17/coal-phase-out-2030