HOME10.電力・エネルギー |英国、既存の石炭火力発電所も2024年までに全廃へ。これまでの目標を1年前倒し。200年前の「産業革命」の象徴を排し、再生可能エネルギー発電で「グリーン産業革命」目指す(RIEF) |

英国、既存の石炭火力発電所も2024年までに全廃へ。これまでの目標を1年前倒し。200年前の「産業革命」の象徴を排し、再生可能エネルギー発電で「グリーン産業革命」目指す(RIEF)

2021-06-30 13:58:13

UKCoalキャプチャ

 英国は、温室効果ガスの排出を抑える対策がとられていない石炭火力発電所の廃止目標を、これまでの2025年から1年前倒しして、2024年とすると公式に発表した。英国が主催する11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に向けて、自らのリーダーシップを示す狙いのようだ。

   (写真は、英国 北ヨークシャー地方のドラックス石炭火力発電所、2基の発電機は年内に閉鎖の予定)

 2024年9月30日に最後の石炭火力発電所を閉鎖する予定。「2050年ネットゼロ」目標達成の一環と位置付けている。英政府の方針は、気候変動政策を監視する独立委員会のClimate Change Committee(CCC)が最新報告書を議会に提出したことを受けて公表された。

 英政府は新型コロナウイルス感染拡大の前にも、目標の1年前倒しを検討したが、コロナ禍でCOP26の開催が1年延期されたことから、目標の扱いも宙に浮いていた。今回、CCCの報告等を踏まえ、COP26の開催前に公式宣言をした。

ジョンソン英首相
ジョンソン英首相

 英国では2012年には、石炭火力が電力発電量の40%を占めていた。だが、2020年には1.8%にまで縮小している。洋上風力発電等の再生可能エネルギー発電が全体の40%を超えるまでになっているほか、天然ガスの活用も増えている。2020年中には石炭火力発電の電力を使わない時間が5000時間を超えた。ただ、鉄鋼生産用の石炭使用や重化学産業用の石炭採掘は継続される。

 エネルギー・気候変動大臣のアンネマリー・トレビアン氏は「石炭は200年前の産業革命を推進した。しかし、今や、この『ダーティ燃料』を我々のエネルギーシステムから完全に除去する時がやってきた」と、「エネルギー転換」を強調した。

 さらに「今日、英国は石炭火力発電を歴史の教科書に委ね、我々のエネルギーシステムを脱炭素化することで、野心的で世界をリードする気候目標に合致できることを、世界中に明確なシグナルとして送ることにした」と述べた。

「エネルギー転換」は、日本も目下、エネルギー基本計画の改定作業が佳境に入っている。だが、既存石炭火力発電の完全停止を計画に盛り込めるかどうかは不明。しかし、「2050年ネットゼロ」を実現するには、最大のCO2排出減である石炭火力発電をいつまでに、どのように、縮小・除外するか、どのエネルギーで代替するか等を明確に示さないと、国の「エネルギー基本計画」にならない。英国を見倣う必要があるようだ。

 トレビアン氏は「英国はネットゼロを再エネ発電で実現する。再エネによる『グリーン産業革命』を促進する技術は、英国中に新たな雇用を作り出す」と付け加えた。石炭火力等の雇用を再エネ事業関連にシフトさせる雇用政策も並行して進める考えだ。

https://www.edie.net/news/11/UK-s-coal-fired-electricity-ban-officially-brought-forward-to-2024/