HOME |「ナッジ理論」を活用した30万世帯の家庭での省エネ行動実験、平均2%の省エネ効果を引き出す。日本オラクルと住環境計画研究所の共同事業(RIEF) |

「ナッジ理論」を活用した30万世帯の家庭での省エネ行動実験、平均2%の省エネ効果を引き出す。日本オラクルと住環境計画研究所の共同事業(RIEF)

2021-06-29 16:15:38

Oracleキャプチャ

 

 「行動経済学」の「ナッジ理論」を活用して全国30万世帯の家庭に省エネ行動を促す実験で、平均2%の省エネ効果を引き出し、CO2排出量4万7000㌧を削減する効果が得られた。日本オラクルと住環境計画研究所と、エネルギー5社による共同事業。ナッジ理論は「ヒジで軽く突くような小さなアプローチで、人の行動を変える戦略」とされる。

 

 実験は環境省の「低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)等による家庭等の自発的対策推進事業」の一環。オラクルが開発した家庭顧客向けエネルギー効率化ソリューション「Oracle Utilities Opower Energy Efficiency Cloud Service」を活用した。住環境計画研究所はプログラム・調査設計、効 果測定・検証を担当した。

 

 実験は2017年度から20年度までの4年間、北海道ガス、東北電力、北陸電力、関西電力、沖縄電力の5社の供給エリアの約30万世帯を対象に行った。各家庭には、パーソナライズされた行動科学の知見とデータ分析を活用した省エネレポート「Oracle Opower Home Energy Report (HER)」を提供、ナッジを使ったエネルギー使用情報やアドバイス等を発信し続けた。

 

 HERを受け取った世帯の認知は約80%、閲覧は約70%、興味は約40%、具体的行動は約30%と高い反応率を確認した。また受け取った世帯の約30%が、エネルギー事業者のイメージ変化について、「よくなった」と回答した。エネルギー事業者の顧客エンゲージメントの強化にも貢献したといえる。

 

 実験結果で、HERの提供を行った家庭と、行わなかった家庭を比較すると、各家庭で平均2%の省エネ効果が確認された。4年間の累積CO2削減量は4万7000㌧に上った。レポートの提供終了後も、家庭では省エネ効果の持続が確認され、今後の累積CO2削減量は11万1000㌧にまで及ぶと推計された。削減量は4万1000世帯の年間CO2排出量に相当するほか、約13万5000台の冷蔵庫の買替効果に匹敵する。

 

 プログラムの成果が明確に出たことで、環境省の委託事業が 2021 年 3 月に終了後も、北海道ガスと沖縄電力は、顧客満足度を高めるコミュニケーション施策として「Oracle Utilities Opower」を活用しているという。

 

 ナッジ理論は、2017 年ノーベル経済学賞を受賞した米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授らが公共政策への活用を提唱したことで知られる。必要な情報を、必要な人に、いかに的確に伝えるかが人の行動に影響を及ぼすことが、今回の実験でも立証できたことになる。新型コロナウイルス感染対策等にも応用できそうだ。

http://www.jyuri.co.jp/3667/

http://www.jyuri.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/06/JPN_NR_MOE_PJ_0628_FINAL.pdf